東京五輪マスコットの名前が出てこない問題、小学生が投票で選んだのはデザインのほうで名前は別ルートだった
青と白の市松模様のやつと、ピンクの桜のやつ。東京2020オリンピック・パラリンピックの公式マスコットの画像を貼って「こいつらの名前覚えてるやつ、流石にもういない」と書いた投稿が、Xで1万7000いいねを超えた。
言われて名前が出てくる人と、出てこない人がきれいに分かれた。正解は青がミライトワ、ピンクがソメイティ。ここまでは検索すればすぐ出る。面白いのはその先で、この投稿に付いた引用が10万いいねまで伸びている。
「投票なんて来てなかった」がいちばん伸びた
引用したのは、当時田舎で小学生をしていたという人。自分のところに投票なんて回ってこなかったのに「全国の小学生の投票により決定しました」と言われて、都会の心無さを知った、という書き方だった。同じ記憶を持っている人が集まって、本体より伸びた。
ただ、これは半分だけ正しい。小学生の投票は本当にあったが、投票で決まったのは名前ではなくデザインのほうだ。そして票の単位が「ひとり1票」ではなかった。
1学級で1票、参加は205,755学級
デザインは2017年8月に18歳以上の日本在住者から公募され、2,042件が集まった。そこから3案に絞られ、最終決定を全国の小学校に投げたのがこの投票だった。
学級で話し合って1票を出す方式なので、児童ひとりひとりに投票用紙が配られるものではない。クラスで多数決を取って終わり、という学校もあれば、そもそも参加しなかった学校もある。「投票が来なかった」という記憶は、都会と田舎の差というより、この仕組みの差だったことになる。
組織委員会は結果発表の振り返り映像も公式チャンネルに残していて、教室に投票用紙が届く様子から開票までが入っている。
採用されたア案を描いたのは、福岡県在住のデザイナー谷口亮さん。2,042件の中から選ばれて、最終3案の投票でも過半数近い109,041票を集めた。
名前を作ったのは長野五輪と同じ会社
そして名前のほうは、投票とは別のラインで進んでいる。組織委員会はネーミングをZYXYZ(ジザイズ)という命名の専門会社に委託した。1998年の長野オリンピックでマスコットの名前を担当したのと同じところだ。
作業の起点になったのは、マスコット投票のときに小学生から集めた約7,000件のアンケートで、「未来を感じる」「桜」「ヒーロー」といったキーワードが並んだという。そこから約30案を作り、大会マスコット審査会の投票でオリンピック・パラリンピック各10案まで絞り、商標調査を通して最後の2つが残った。発表は2018年7月22日。デザイン決定から5か月近く経っている。
由来は分かってしまえば素直だ。ミライトワは「未来」と「永遠(とわ)」をくっつけた造語で、素晴らしい未来を永遠に、という意味。ソメイティは桜の「ソメイヨシノ」と、英語の so mighty(とても力強い)をかけている。声に出すと確かにソメイヨシノに聞こえるし、ローマ字で SOMEITY と書くと mighty が見える。
設定はけっこう盛られている
ついでに公式プロフィールを見に行くと、この2体はかなり尖った能力を持っている。ミライトワは正義感が強くて運動神経抜群、特技はどんな場所にも瞬間移動できること。ソメイティはクールな性格で、超能力を使って石や風と話せて、念力も使える。
念力である。マスコットの設定として書かれた文章を真顔で読むと、けっこうな戦力だ。
名前を忘れられがちなのは、2021年の大会そのものが特殊な形だったせいもあると思う。それでも、20万を超える学級が1票ずつ入れてデザインが決まり、7,000件の小学生アンケートから名前の種が拾われたところまでは、ちゃんと記録に残っている。次に「あの青いやつ何だっけ」となったときのために、ミライトワとソメイティで覚えておくと少しだけ得をする。