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夫が焼いてくれたDVDのタイトルが「ラプンシェル」、4万いいねの惜しい書き間違い。ついでに調べたら本名も食べ物だった

2026年8月13日 ・ トレンド「ラプンシェル ラプンツェル 名前 由来 野菜 ノヂシャ グリム童話」より

長距離のドライブで子どもが飽きないように、家にある映画を車で見られるDVDに焼いておく。よくある家庭の風景だ。焼いてくれた夫が、油性ペンで盤面にタイトルを書いた。

ラプンシェル。

投稿は4万いいねを超えた。字はきれいだし、書く気はしっかりある。それだけに、真ん中の一文字だけが違うという状態の据わりの悪さが際立つ。ラプンツェルを知らないわけではなく、ぼんやり知っているからこそ生まれる間違い方でもある。

「ツェ」は日本語の生活圏にほとんどいない

この手の書き間違いが起きるのは、カタカナ語のなかでも「ツェ」がかなり珍しい音だからだと思う。日常で使う言葉に「ツェ」はほぼ出てこない。ツェッペリン、コンツェルン、あとはラプンツェルくらいで、書く機会がないぶん脳内の変換候補に定着していない。

そこへ、耳なじみのある「シェ」が滑り込んでくる。シェフ、シェア、パティシエ、シェイク。「シェ」は日本語のなかで完全に市民権を得ている音なので、うろ覚えのまま書くと強いほうに引っ張られる。ラプンシェルは、その力学の犠牲になった書き間違いといえる。

そもそもラプンツェルは野菜の名前だった

ここまで書いて気になったので、正しい「ラプンツェル」の由来も調べてみた。すると、あちらも人名ではなかった。

ラプンツェルはドイツ語で植物の名前を指す。日本ではノヂシャと呼ばれる、サラダに使う小さな葉物だ。訳によってはキキョウ科のラプンツェルソウ(ランピオン)とされることもあるが、いずれにしても食べる草である。語源をたどると、ラテン語で根菜を意味する rapum に、ドイツ語の小さいものを表す語尾がついた形になる。

つまり、あの長い金髪の主人公の名前は「野菜」であり、しかも母親の食欲に由来している。ラプンシェルと書かれたことに憤慨するには、本人の名前の出自がのどかすぎる。

ディズニー版のタイトルには、そもそも名前が入っていない

ややこしいことに、ディズニー映画(本国公開2010年、日本公開は2011年3月12日)の原題は Tangled で、絡まった髪を指す言葉だ。ラプンツェルという名前は原題に入っていない。日本語版で『塔の上のラプンツェル』と名前を前に出したのは配給側の判断で、日本の観客にはグリム童話の名前を出したほうが伝わると考えたのだろう。

結果として日本ではあの映画は完全に「ラプンツェル」の名で定着し、その分だけ書き間違いも起きやすくなった。夫氏の一文字は、そういう長い経緯の末に生まれたものである。

盤面のタイトルとしての用は足りているし、家族のあいだでは今後もこのDVDは「ラプンシェル」と呼ばれるのだと思う。書き間違いにしては愛嬌の勝ち幅が大きい。