豪雨でJRも私鉄も止まった千葉で、モノレールだけ深夜まで走った。「懸垂式」が強かった理由
8月13日の午後から14日の未明にかけて、千葉県に線状降水帯がかかりました。気象庁はこの大雨を「令和8年8月千葉豪雨」と命名しています。気象庁が豪雨に名前を付けるのは、熊本の球磨川が氾濫した2020年7月豪雨以来です。
JR東日本の房総各線も、京成電鉄も、次々に運休しました。そのなかで走り続けた路線がひとつあります。千葉都市モノレールです。
公式アカウントが13日21時50分時点で出したのがこの告知です。臨時列車を出しているが千葉駅では入場規制がかかっていて、乗るまでに時間がかかる、という内容。振り替え輸送の受け皿になって人が殺到していた時間帯の実況になっています。
線路が地面にないから、冠水と関係がない
千葉都市モノレールは懸垂式、正式にはサフェージュ式と呼ばれる方式です。レールの上に車両が乗るのではなく、頭上の軌道桁に車両がぶら下がっています。
強かった理由はここにあります。箱型の軌道桁の内側に、車輪も走行路も丸ごと収まっている構造なので、雨や雪が走行部分に直接当たりません。しかも走っているのは地上から最高20メートルほどの高さ。道路がどれだけ冠水しても、そもそも足元に何もないので関係がない、というわけです。
1957年にフランスで開発された方式で、日本で今も営業している懸垂式は千葉都市モノレールと湘南モノレールの2つだけ。普段は「駅の上り下りが面倒」と言われがちな高さが、この日は効きました。
最終列車は午前0時40分、行き先は避難所だった
千葉日報の報道によると、最終列車が千葉みなと行きの臨時列車として出発したのは午前0時40分ごろ。乗っていたのは約70人で、そのほとんどが市役所前駅で降りたそうです。多くは避難所に向かった人たちでした。
同社の担当者は「安全・安定輸送が会社の根幹」としたうえで、今回運行できたことで懸垂式の良いところを理解してもらえたのはありがたい、という趣旨のコメントを出しています。
「地味だと思ってた」が一晩でひっくり返った
SNSでは「2時台まで走らせてくれた」「今回はあの京成が真っ先に力尽きた」といった声が並びました。
面白かったのは反応の質で、褒めているのがモノレールの運行そのものというより方式だったことです。「懸垂式モノレール信者」を名乗る人が出てきたり、「新しい路線を作るなら懸垂式にしてほしい」「那覇や札幌にも合いそう」と勝手に構想を語り出す人がいたり。高いところを走るせいで乗り降りが面倒だと思っていた、という前置きから称賛に入る投稿もいくつも見かけました。
千葉都市モノレールは経営再建を経てきた路線で、話題になるときは大抵が赤字や存廃の文脈でした。世の中で何がいつ評価されるかはわからない、という感想が出るのもわかります。
もし千葉に行く機会があれば、あの箱型の軌道桁を下から見上げてみてください。線路が地面にないというだけのことが、あの夜はかなり大きな差になっていました。