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客室まで5分45秒、ホテル浦島の「スペースウォーカー」は高低差77mで日本一のエスカレーター

2026年8月24日 ・ トレンド「ホテル浦島 スペースウォーカー エスカレーター 高低差 日本一 那智勝浦 154m 428段 5分45秒」より

「軽い気持ちでエスカレーター乗ったら一生頂上に着かなくて遭難するかと思った」。そんな投稿が3万件を超えるいいねを集めています。添えられた写真には、天井の照明が遠近法で消えていくほど先の見えないエスカレーターと、館内に飾られたホテルの模型が写っていました。

模型に添えられたプレートの数字がなかなかのもので、全長154メートル、傾斜角度30度、高低差77メートル、階段数428段、所要時間5分45秒。分速30メートルでのぼり続けて、ようやく着きます。

場所は和歌山、ホテル浦島の「スペースウォーカー」

この設備がある宿は、和歌山県那智勝浦町の南紀勝浦温泉にあるホテル浦島です。名前は「スペースウォーカー」といって、海沿いに建つ本館と、山の上にある山上館をつないでいます。

山上館は海抜80メートルの位置にあるので、宿の中を移動するだけで20階建てのビルに相当する高さを稼ぐことになります。エレベーターを縦に通そうにも山の斜面なので、斜めに刻んでいくしかありません。実際には1本の長いエスカレーターではなく、複数基を乗り継ぐ構成になっています。

投稿主が「もはやホテルじゃなくて要塞なんよ」と書いたのも無理はなくて、乗っている5分45秒のあいだは基本的に降りられません。途中の窓からは熊野灘が見えるので、退屈するというより「まだ着かないのか」と笑ってしまう時間になります。

日本一なのは「長さ」ではなく「高低差」

数字だけ見ると日本一長いエスカレーターに思えますが、そこは少しややこしいことになっています。

日本記録認定協会がスペースウォーカーに認定しているのは「日本で最も高低差があるエスカレーター」という記録で、対象は77メートルという高低差のほうです。同協会の記載では4基を乗り継ぐ構成とされていて、全長154メートルはその合計。1基あたりの長さを競う土俵には乗りません。

では1基で日本一長いのはどこかというと、同協会が「日本最長のエスカレーター」として挙げているのは香川県丸亀市のNEWレオマワールドにある「マジックストロー」です。全長96メートル、高低差42メートル、乗車時間はおよそ3分14秒。1991年の開園当初から動いていて、こちらは途中で乗り継がずに1本でのぼり切ります。

つまり「1本の長さならレオマワールド、のぼる高さならホテル浦島」という住み分けです。どちらも数字を聞くとぎょっとしますが、体感としては乗り継ぎがあるぶん浦島のほうが長い旅になります。

そもそも、なぜ宿がこうなったのか

ホテル浦島は4つの館(本館・日昇館・なぎさ館・山上館)で構成されていて、そのうち山上館だけが海抜80メートルの山頂に建っています。太平洋に突き出した岬に館を分散して置いた形なので、館と館の高低差が住宅街の坂どころではない値になりました。移動手段を通さないと同じ宿として成り立たない、という事情がスペースウォーカーの正体です。

宿そのものへのアクセスも独特で、JR紀伊勝浦駅から歩いて5分ほどの観光桟橋まで行き、そこから亀の形をした送迎船に乗って約5分で到着します(時間帯や天候によっては送迎車になります)。船で着いて、館内でエスカレーターに5分45秒乗る。移動が2回とも観光になっている宿はそう多くありません。

公式サイトによると、紀州徳川家の徳川頼倫が「帰るのを忘れさせるほど」と評したことから名付けられた洞窟風呂「忘帰洞」も、この宿の名物です。名物が多すぎて、エスカレーターがその一角を占めているあたりに規模感が出ています。

泊まった人の言い分

スペースウォーカーは今回バズったから知られたわけではなく、以前から宿泊者のあいだで語られてきた設備です。実際に泊まった人の投稿にも、こんな評があります。

「寂しさとゴージャスのないまぜ気分」というのは、写真を見たあとだと妙に腑に落ちる言い方だと思います。同じ投稿の「ホテル全景のミニチュアが飾ってある施設は、あたりのとこ多い」も、宿の見立てとしてなかなか鋭い。今回話題になった投稿でも、ちょうどそのミニチュアが写り込んでいました。

那智勝浦は熊野那智大社や那智の滝の玄関口でもあります。世界遺産を見に行った帰りに、宿の中でもう一回のぼる。行く予定がある人は、5分45秒ぶんの覚悟だけ持っていってください。