同人誌は国会図書館に納本できる。1部で東京本館、2部送ると関西館にも残る
コミケ108が終わって、段ボールごと在庫を持ち帰った人がXにたくさんいる。そこへ「みんなー いっぱい印刷した同人誌は、2冊くらいを、国会図書館に送ろうね!」という投稿が流れてきて、4万7000いいねまで伸びた。
添えられていた写真がレターパックライトの宛名面で、届け先は〒100-8924 東京都千代田区永田町1-10-1、国立国会図書館 収集書誌部 国内資料課。品名の欄には手書きで「納本」とだけ書いてある。冗談ではなく、その住所に本当に送れる。
「送ってもいい」ではなく、法律で送ることになっている
納本制度は国立国会図書館法にもとづくもので、国内で発行された出版物は発行者に納入の義務がある。出版社が出した本だけの話ではなく、企業や団体、個人が出したものも含まれる。国立国会図書館の案内には、社史や個人の自費出版物でも「相当の部数を作成し頒布されているもの」は対象だと書かれている。同人誌はここに素直に当てはまる。
期限は発行の日から30日以内。とはいえ過ぎたぶんも受け付けているので、去年の夏コミの在庫が今出てきた人も送っていい。
法律には罰則の条文もあって、正当な理由なく納入しなかった発行者は、その出版物の小売価額の5倍に相当する金額以下の過料に処する、となっている(国立国会図書館法第25条の2)。同人誌でこれが適用された話は聞かないが、条文としては存在する。
「2冊くらい」には理由がある
義務があるのは1部だ。それなのに投稿が「2冊くらい」と言っているのには根拠があって、国立国会図書館の説明では、2部目を納入すると1部は東京本館、2部目は関西館に所蔵される。つまり2冊送った本は、東京と京都の2か所に分かれて残る。
同人作家からも「ちゃんと関西館にも回るように2冊」と書いている人がいて、この使い分けは界隈でそれなりに知られているらしい。片方が失われても、もう片方が残る。国立国会図書館の資料は、著者本人から申し出があっても除籍しない運用だとされている。刷った本人が後年に赤面しても、もう自分の手では引っ込められない。
お金が出る場合もある
納本には無償と有償の2通りがある。有償を選ぶと納入出版物代償金が支払われて、金額は小売価格の5割と、郵送における最低の料金に相当する額。1000円の本を1部納めれば500円ちょっとが振り込まれる計算になる。
ただし代償金には基準があって、書店で頒布される出版物や通常の自費出版物は100部以上刊行されていることが目安とされている。オンデマンド出版の場合は15部が実際に頒布されたこと、という別基準がある。有償で納めるときは、本を送る前に電話で問い合わせて所定の手続きを踏む必要がある。無償でいいなら事前の連絡はいらず、そのまま送ればいい。送料は着払いにできないので、そこだけ注意がいる。
コピー本は対象外になる
見落とされがちなのが、ホチキス留めなど簡易綴じのものは納本の対象にならないという線引きだ。イベント前夜にコンビニで刷ってホチキスで留めたコピー本は、ここで外れる可能性が高い。印刷所に出した無線綴じや中綴じの本を送るのが順当ということになる。
「知らなかった」がいちばん多い
反応で目立ったのは、制度そのものを知らなかったという声だった。「へぇーーー同人誌も納本OKなんだ!?」「もし同人誌を出したら自分で国会図書館に納本できるの激アツ」。自分の本が国立国会図書館サーチに載り、蔵書として検索できるようになるという事実が、単純にうれしいらしい。
一方で、ネタとして「記念に置いてもらおう」と言うのは違うのではないか、日本の出版文化の一部としてちゃんと残そうという話だろう、という指摘も出ていた。同人イベントのカタログを網羅的に所蔵しているのはコミケとコミティアくらいで、カタログこそ同人の歴史を調べる基礎資料だから運営側にも納本してほしい、と書いている人もいた。
「国会図書館がコミケに企業出展して、その場で納本を受け付けたら納本率が上がるのでは」というアイデアもあった。列に並んで自分の本を国に手渡すの、字面としてはかなり強い。
在庫が余っているなら、2冊だけレターパックに入れて永田町に送る。100年後に誰かがそれを読む可能性が、その瞬間に発生する。
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