「平成ゴスロリ」の厚底ブーツがクローゼットで粉々、ソールの加水分解が理由
9月13日の朝に出た「クローゼットの奥から、平成時代のゴスロリを象徴する、貴重な靴が発掘されました。」という投稿が、1,000万回以上見られています。いいねは11万6千、リポストは1万を超えています。
投稿したのは@orangehoppeさん(RUSANJIN ROOM)。プロフィールには茨城で一点物のロリィタ服を作っていると書かれている人です。その人が「発掘」と言っているあたりで、だいたい察しがつきます。写真の靴はもう、履ける状態ではありません。
厚底の表面が粉を吹いて、かかとが破片になっている
1枚目は、白い薄紙を敷いた床に黒い厚底ブーツが左右そろえて置かれた写真です。
まず底の厚みがすごい。つま先から土踏まずまでが分厚いプラットフォームで、その上に短い筒がちょこんと乗っている構造です。ところがその分厚い部分の表面は灰色に粉を吹いていて、甲のあたりは塗装ごと鱗みたいにめくれています。かかとは左右とも割れ落ちていて、右側に黒い破片が十数個も散らばっている。下の片方に金属のジッパーが残っているおかげで、かろうじて元はショート丈のブーツだったと分かる、という状態です。
薄紙に包まれたまま出てきたことからしても、この靴はずっと箱の中で眠っていたのだと思います。そして眠っている間に、勝手にこうなっていました。
一緒に写っていた雑誌のページが、値段まで平成
2枚目は当時の雑誌のページです。ピンクの地に唐草模様が敷かれた、いかにもなレイアウトの靴カタログで、キャプションがそのまま時代の記録になっています。
中央の大きな1足には「足首のベルトに光るブルーのロゴがカッコイイ。アンクルブーツ(レディース)29,000円/Moi-même-Moitié」。左の縦書きには「足首のレースアップがおしゃれ。ヒールの高さは16cm。レースアップパンプス27,000円/Mo」とあって、ブランド名は誌面の切れ目で「Mo」までしか読めません。下のほうには「リボンを好きな位置に移動させてはける。ストラップシューズ各14,〇00円/Angelic Pretty」も載っています。
ヒール16cm。スニーカーに慣れた身からすると、履くというより乗る感覚に近そうです。
念のため書いておくと、崩れているブーツ自体がどのブランドのものかは、投稿者が書いていないので分かりません。読み取れるのは、隣に写っている誌面の世界では靴が2万円台から3万円という値段だった、というところまでです。高校生や大学生がバイト代を突っ込んで買う一足として考えると、なかなかの金額になります。
壊したのは履いた回数ではなく、しまっていた時間
この崩れ方には名前が付いていて、加水分解といいます。
靴底のクッション材によく使われるポリウレタンが、空気中の水分と反応して分子の結合がもろくなる現象です。やっかいなのは、履いてすり減らすより、湿気のこもる場所にしまいっぱなしにするほうが進みやすいところ。ざわっとニュースでは就活の面接に向かう途中で革靴の底が丸ごと外れた話も書きましたが、あれと同じ理屈です。大事にとっておいた靴ほど、次に出した日が最後になります。
厚底の場合はそこに物量が乗ります。革靴なら剥がれるのは底の一枚ですが、この靴は底そのものが大きな塊なので、崩れた分がそのまま破片の山になる。写真の右側に散らばっている黒い欠片の数が、そのまま厚底だったことの証拠になっているのが、なんとも言えません。
Moi-même-Moitié のほうは、今も動いている
誌面に名前が出ている Moi-même-Moitié は、今も現役のブランドです。
公式サイトの25周年ページには「1999年の創設以来、私たちの旅路は続いてまいりました」と書かれていて、2024年に25周年の記念展示やイベントをやっています。立ち上げたのは、ヴィジュアル系バンドMALICE MIZERのギタリストとして知られるMana様。公式サイトでも「ブランドの象徴であるMana様」という書かれ方をしています。同じページの前書きは「未来がどのような時代に変わろうとも、Elegant Gothic Lolita は永遠です」で締められていて、このテンションが1999年から地続きなのが強い。
公式サイトのトップには2026年9月付けのお知らせも並んでいます。靴のほうは25年ぶんの水分に負けましたが、ブランドのほうは負けていません。
保存した人が5,500人
反応で目を引くのは、ブックマークが5,549件付いていることです。写真2枚のポストとしては多いほうで、リプライも350件付いています。
この手の投稿が伸びるときは、だいたい読んだ側が自分の家の心当たりを思い出しています。成人式で一度だけ履いたパンプス、部活を引退してから触っていないスパイク、上京するときに持ってきた通勤用の靴。どれも「まだ履ける」と思って箱に入れたまま、何年も開けていないやつです。
SWIMMERとペコちゃんのコラボみたいに、平成のものは懐かしさで盛り上がれるうちが華です。クローゼットの奥に「いつか履く」で置いてある靴があるなら、次の出番の前に一度出して、底を指で押してみてください。ぼろっといったら、それはもう靴ではなく資料です。