「ざっくばらん」は“ざっくり大まかに”じゃなかった ふくらPの勘違い告白でトレンド入り、語源は「ざっくばらり」
8月15日、QuizKnockのふくらPさんが「ざっくばらん」の意味をずっと勘違いしていた、とXに書きました。思っていた意味は「ざっくりとおおまかに」。この一言に4万7000件を超えるいいねが付いて、「ざっくばらん」がトレンドに入っています。
自分は合っていたと胸を張る人と、書き込みを読んで真顔になった人で、タイムラインがきれいに割れました。
辞書に載っているのは「腹を割って話す」ほうの意味
デジタル大辞泉の語釈は「遠慮がなく率直なさま。もったいぶったところがなく、素直に心情を表すさま」です。用例も「ざっくばらんに言わせてもらう」「ざっくばらんな人柄」で、量や粒度の話はどこにも出てきません。
つまり「ざっくばらんに説明すると」は、本来なら「かいつまんで言うと」ではなく「隠さずに言うと」に近い意味になります。会議で「ざっくばらんにお願いします」と言われて要点だけ手短にまとめた人は、相手が求めていたのは短さではなく本音だった、ということになります。
Weblioに収録されている隠語大辞典を見ると、「雑苦葉乱」という当て字まで載っていました。言いにくいことでも葉を散らすように言い明かす、という説明が添えられています。当て字なので漢字表記が正式にあるわけではないのですが、字面の勢いは意味とよく合っています。
語源は「ざっくり」と「ばらり」の合体
語源由来辞典によると、語源は「心をざっくり割って、ばらりと明かす」。「ざっくり」「ざっく」「ばらり」「ぱらり」といった擬態語からできた言葉だとされています。
ここが今回のややこしさの正体です。誤解のもとになった「ざっくり」は、実は語源としては本当に入っている。ただし「ざっくり大まかに」の「ざっくり」ではなく、包丁でざっくり割る、のほうの「ざっくり」だという話になります。
さらにさかのぼると、江戸時代から明治時代には「ざっくばらり」という形が多く使われていて、「ざっくばら」「ざっくばれん」といった変種もありました。今の「ざっくばらん」はその流れの一つが残ったものです。響きがいかにも最近の若者言葉っぽいのに、江戸から生き延びている単語だと知ると、ちょっと見る目が変わります。
なお「四角張らぬ(四角張らん)」が変化して「ざっくばらん」になったという説も知られていますが、語源由来辞典は、それだと古い形の「ざっくばらり」が説明できないとして否定的に扱っています。
なぜ気づかないまま大人になってしまうのか
この単語がやっかいなのは、意味を取り違えたままでも会話がほぼ成立してしまうところです。
いちばん出会う機会が多いのは、たぶんビジネスの場面でしょう。「今日はざっくばらんに意見を出し合いましょう」と言われたとき、率直にどうぞという意味で受け取っても、細かいことは抜きでどうぞという意味で受け取っても、その場の振る舞いはあまり変わりません。転職のカジュアル面談の案内文にある「選考ではないのでざっくばらんにお話しできれば」も、研究室でよく飛び交うという「ざっくばらんに意見交換しましょう」も同じで、聞き手はどちらの解釈でもだいたい正解の行動をしてしまいます。
答え合わせのタイミングが来ないまま何十年も使える言葉なので、ふとした瞬間に辞書を引くまで気づかない。今回、リプ欄で「1on1で言われたときに、これはおおまかにって意味じゃないなと気づいた」と書いている人がいて、答え合わせが起きる場面はやっぱりそこなのか、と妙に納得しました。
「今までの会話を思い返してゾッとしてる」
反応は大きく3つに分かれています。
まず、同じ勘違いをしていた側。今までの会話を思い返してゾッとしている、なんとなく雰囲気で使っていた言葉が調べた瞬間に全然違ったのが怖い、といった投稿が並びました。適当・だいたい・なんとなく、くらいの感覚で捉えていたという人もいます。
次に、合っていた側。ふくらPさんが間違えていて自分が合っている知識がこの世に存在した、という書き込みが出てきて、こういうときのXは元気です。研究職や発表の多い仕事の人からは、定型文で毎日のように聞くからすぐわかる、という声も出ていました。
3つ目が、そもそも間違えようがなかった派。「ざっくばらんに」ではなく「ざっくばらんな人」の形で覚えていたから、大まかにという意味にはならなかった、という指摘です。たしかに「ざっくばらんな人柄」を「大雑把な人柄」と読むと、褒め言葉が一瞬で悪口に変わります。この覚え方をしていた人は、運がよかったというより単に安全な入口から入っていたことになります。
ちなみにふくらPさん本人の投稿は、間違いを認めたうえで軽く笑い飛ばすトーンでした。クイズの人でも普通に間違えるんだな、という安心感で伸びた面もあると思います。
言葉の意味を勘違いしたまま使っている自覚がある人は、この機会に「気の置けない」あたりも一緒に引いておくと、後で同じ思いをしなくて済みます。