「レターパックで現金送れ」とは?「はすべて詐欺です」構文の元ネタとMisskey発のミーム化
郵便局の窓口や交番の掲示で、たぶん誰もが一度は目にしている一行があります。「レターパックで現金送れ」は全て詐欺。もとは特殊詐欺への注意喚起として作られた真面目な標語なのですが、ネットではこれが改変大喜利の型として定着しました。別名として 「○○はすべて詐欺です」構文 とも呼ばれます。
「レターパックで現金送れ」とは?
使われ方は2つあります。ひとつは本来の意味で、「現金をレターパックで送れと指示してきたら、それは詐欺です」という注意喚起の文言。もうひとつがネット上の用法で、前半の名詞を別のものに差し替えて、後半のオチも合わせて変えるという遊びです。ニコニコ大百科ではこちらの用法が「○○はすべて詐欺です」という見出しで立てられています。
型として優秀なのは、差し替えポイントが2箇所ある点です。「レターパックで◯◯送れ」は全て△△、という具合に、送るものと正体の両方をいじれる。しかも原文が断定形で強いので、まったく無関係な単語を入れても妙に説得力のある文面に見えます。ネタが尽きにくいうえに、元の文を知らない人はほぼいないという条件が揃っていて、大喜利のお題としてはかなり恵まれた素材です。
元ネタ・由来
出どころははっきりしていて、レターパックを使った現金だまし取りが相次いだことへの対策です。2013年9月12日、日本弁護士連合会が日本郵便などに対し、封筒への警告表示の強化を求める要請書を出しました。これを受けて日本郵便が2014年7月3日に出したのが、「ご注意ください!レターパックを使った詐欺犯罪が増えています」というプレスリリースです。このリリースの正式タイトルには 【※「レターパックで現金を送れ」は全て詐欺です。】 という角括弧がくっついていて、ここが定型文の原型にあたります。中身は郵便局窓口のディスプレイ広告とレシートへの注意喚起文(どちらも2014年7月1日から実施)、窓口での声かけ、チラシ配布という対策でした。総務省も同時期に注意喚起を出しています。
つまりこの一行は、ネット上で生まれたコピペではありません。郵便局の窓口や警察・自治体の掲示に載って、10年以上かけて全国に配られ続けた文字列です。公式の表記は「現金を送れ」ですが、ネットで打たれるのは「を」の抜けた「レターパックで現金送れ」のほうで、見出し語としてもそちらが定着しました。そもそも現金を郵便物として差し出すときは書留(現金書留)によらなければならないと郵便法第17条で決まっていて、レターパックを指定してくる時点で外れている、という手口の急所を突いた標語でもあります。このあたりの仕組みは「レターパックでどんぐり送れ」の大喜利がバズった記事のほうで詳しく書きました。
ネットミームとして広まった経路として知られているのが、分散型SNSの Misskey です。Misskey.io にカスタム絵文字「レターパックで現金送れ」と「は全て詐欺です」が2022年5月9日に追加されたとされ、絵文字リアクションを2つ並べて押すと一文になる、という使い方をされました。ここから改変版の絵文字が量産されていきます。運営側も乗っかっていて、Misskey.io のヘルプには「レターパックで現金送れと言われました」というサポート記事が立っています。
これが一気に外へ出たのが2023年3月です。ITmediaの記事によると、Misskey.io は2月18日に登録上限を3万人としていたのが3月3日には8万人まで拡大しており、ユーザーが急増していました。この記事の中でも、Misskey.io で流行しているものとして「与謝野晶子」と並べてこの文言が名指しされています。ちなみに与謝野晶子の絵文字はこれより古く、2021年10月には既にあったとされます。
そして X に流出してからは、絵文字を離れて純粋なテキストの大喜利として使われるようになりました。2026年8月には、送るものを「どんぐり」に変えただけのポストが2万5千を超えるいいねを集めています。
使い方・例文
- 「レターパックでどんぐり送れ」は全てリス
- 「レターパックで生ハム送れ」は全て詐欺(ハムはレターパックで送れます)
- 「レターパックできみ送りたまへ」は全て与謝野晶子
基本形は「『レターパックで◯◯送れ』は全て△△」。◯◯と△△に連想でつながる関係があるほど決まりやすく、無関係すぎると滑ります。後半を原文どおり「詐欺」のまま残して、前半だけ変な単語にするパターンもあります。
ちなみに本物のほうは冗談ではないので、現金を送れと言われたら送らずに警察相談専用電話 #9110 へ、というのは押さえておいてください。
関連する言葉
決まった型の一部だけを差し替えて遊ぶ形式としては、タゴサク構文やチャッピー構文、ヒス構文が近い仲間です。文面がそのまま共有財産になって改変され続けるという点では、吉野家コピペがネットのコピペ文化の代表格でしょう。
お題に対して面白い答えをひねり出す遊びそのものは大喜利と呼ばれ、SNSでは定番のフォーマットです。名前に「詐欺」が入っているのに実際には詐欺ではない言葉としては、ニコニコ動画発の振り込めない詐欺もあります。