← ミーム辞典トップへ ネットミーム

「テクノバイキング」とは?元ネタ・正体・原曲、そして原本が消えた理由を解説

テクノバイキング(Techno Viking)(てくのばいきんぐ) ・ 2026年8月24日 公開

上半身裸、金髪の三つ編み、あごひげ、胸には雷神トールのハンマー。2000年の夏にベルリンの路上で撮られた4分の映像に映っていたこの大男が、それから数年かけて世界中のネットで 「テクノバイキング(Techno Viking)」 と呼ばれるようになりました。フォートナイトで踊ったことがある人なら、たぶん知らないうちに真似しています。

「テクノバイキング」とは?

テクノバイキングは、ベルリンのストリートテクノのパレードで踊っていた大男に付けられたあだ名です。北欧の戦士みたいな見た目のままテクノで踊っているから「テクノ」+「バイキング」。名前を付けたのはネットの側で、本人が名乗ったわけではありません。

そこから転じて、その4分の映像そのものと、そこから派生した膨大なリミックス動画の総称としても使われます。日本語圏では「あの踊ってる筋肉のおじさん」で通じることも多いです。

元ネタ・由来(2000年、ベルリンの路上)

撮影したのはドイツの映像作家マティアス・フリッチュ(Matthias Fritsch)。2000年7月8日、ベルリンで開かれたストリートテクノのパレード「Fuckparade」で、膝に付けたカメラを回して撮ったのがこの映像です。原題は 「Kneecam No.1」、4分のカラー映像。作品としての狙いは、見た人に「この場面は本物なのか、仕込みなのか」を問うことでした。

映像の流れはこうです。酔った男が女性にぶつかる。それを見た大男が男の腕をつかんで押し戻し、顔の前に指を突きつけて何か言う。そのあと観客のひとりが差し出した水を逆さのまま飲み、そのまま Rosenthaler Straße を踊りながら進んでいく。

ネットではこの導入が「見知らぬ酔っぱらいを制裁した正義の男」として盛り上がりましたが、タネはもっと平和でした。この2人はもともと友人同士で、大男は「泥酔者用のトラックに戻れ」と促していただけだと後に明かされています。

フリッチュが自分のサイトに映像を上げたのが2001年。2006年に YouTube へ再アップされ、2007年に一気に広がりました。最初の火種は中米のアダルトサイトへの転載だったとフリッチュ本人が述べています。break.com に転載されたあと、2007年9月28日にピークが来て1日100万再生を超え、続く半年で1000万人が見て、700本を超えるリミックスやレスポンス動画が生まれたとされます(このあたりの数字はフリッチュ側の自己申告です)。2010年半ばには YouTube だけで2000万再生を超え、2013年1月時点でも原本が1600万再生を超えていました。

現場でかかっていた原曲

「あの曲は何なのか」は長いあいだ分からず、ファンが何年もかけて特定しました。フリッチュの公式サイトによると、現場で DJ がかけていたのは2曲です。

  • Track 1 Can-D-Music「Navigator」(Low Spirit Recordings・1999年)
  • Track 2 Winstan vs. Noia「Save Changes And Exit」(Auto Detect EP / 4sale Recordings)

映像を見ながら曲名を割り出していった人たちの執念のほうが、正直ちょっとミームっぽいです。

正体は今も公表されていない

踊っていた本人が誰なのかは、25年以上たった今も明らかになっていません。フリッチュは撮影した時点で名前を知らず、その後も本人への敬意から明かさないという立場を取っています。本人の代理人は「依頼人は一度も公人になったことはなく、なるつもりもない」と主張しました。

ネット上では有名人や別人と結びつける説がいくつも出回りましたが、いずれも撮影者や本人の代理人に否定されています。Know Your Meme も、広まっている名前は誤りだとはっきり書いています。世界で何千万人に見られた人物の名前が、いまだにネットで確定していないというのは、それ自体けっこう珍しいことです。

原本が見られなくなるまで

2009年、本人からフリッチュに対して配布をやめるよう求める法的な通知が届きます。これを受けてフリッチュは、動画の広告収益をはじめミームに関わる商業的な活動をやめています。

その後、2013年1月17日にベルリンで人格権をめぐる審理が始まり、同年6月に本人側の主張が認められます。フリッチュは、動画広告とグッズで得たほぼ全額にあたる1万3000ユーロと、1万ユーロの費用の支払い、そして本人が映った映像の公開停止を命じられました。フリッチュの公式サイトにも今、この一件の結果として原本の映像もアーカイブ全体も一般公開できなくなった、という説明が置かれています。ミームの本体が、ミームの主役の申し立てによって消えたわけです。

この一連の経緯そのものを作品にしたのが、フリッチュ自身が作ったドキュメンタリー『The Story of Technoviking』。90分の完全版とは別に、2015年に50分の短縮版がオンラインで無料公開されました。命令に従うため、作中では本人の姿が黒く塗りつぶされています。下は、そのドキュメンタリーの制作資金を集めるためにフリッチュ本人のチャンネルで公開されたクラウドファンディング用の映像です。

もっと詳しい経緯は、撮影者本人が運営する technoviking.tvKnow Your Meme の項目英語版 Wikipedia で追えます。

フォートナイトのエモート「インテンシティ」

日本の若い世代がテクノバイキングの動きを一番見ているのは、たぶん『フォートナイト』です。エモートの 「Intensity(インテンシティ)」 は、指を突きつける入りからその後のステップまで、テクノバイキングの動きをほぼそのままなぞっています。

2018年8月にアイテムショップへ実装され、レアリティはエピック、価格は800 V-Bucks。リークの段階では重いギターリフの曲が付いていましたが、実装時にはテクノ寄りの曲に差し替わりました。実在のダンスがフォートナイトのエモートになるのは Griddy と同じ流れで、元ネタを知らないまま踊っている人のほうが多い、というところまで同じです。

その他の広がり

  • 水を差し出した人物にも 「Water Boy」 というあだ名が付いています。2023年にはイギリスの Joe Shark Sandwich Toys が、テクノバイキング(£40)と Water Boy(£20・未塗装)のフィギュアを発売しました。
  • 2009年にはドイツ・カールスルーエで、集まったリミックス群を展示する「Technoviking Archive」が開かれています。
  • Weezer は「Pork and Beans」のMVに当時のミーム有名人を総出演させましたが、テクノバイキングの出演は実現しませんでした。

使い方・例文

  • 「フォートナイトのインテンシティ、元ネタはテクノバイキングらしいよ」
  • 「クラブでノリが良すぎる人いた、完全にテクノバイキング」
  • 「テクノバイキングの原曲、ファンが何年もかけて特定したの執念すごい」

関連する言葉

実在のダンスがフォートナイトのエモートとして輸入された例としては Griddy が近い立ち位置です。海外の1本の映像から無数の派生動画が生まれた点では Harlem Shakeエピックサックスガイ、曲そのものがネタとして一人歩きした サンドストーム と同じ系譜。日本の 音MAD 文化でも素材として何度も使われてきました。

こうした古いネットミームがどれくらい通じるかを試したいなら、「ミームかるた」の記事で試せます。