ちいかわ「屋台の歌」の縦読みは「おわびじゃ、たすけて」 島のうた歌詞の全文
『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』を観た人のあいだで、劇中で流れる明るい歌の歌詞がやたらと怖い、という話が広がっています。歌の名前は「島のうた」。ただ、劇場を出たあとに検索する人の多くは曲名ではなく「屋台の歌」で探しています。歌い出しが「おいしい屋台がてんこもり」で、あとはひたすら屋台のごちそうが並ぶ一曲なので、そう覚えているほうが自然なわけです。その食べ物の頭文字を順番に拾っていくと、まったく別の言葉が浮かび上がります。
「屋台の歌」の縦読み、全文はこうなる
先に答えから書きます。歌い出しの「おいしい屋台がてんこもり」から順に、行の頭の1文字(1音)を拾っていくと8つ並びます。
- おいしい屋台がてんこもり
- わたあめ
- ビールに
- じゃがバター
- たこやき
- すきやき
- ケバブに
- てりてりソースの焼きそば
つなげると「おわびじゃ、たすけて」。歌っているのは島の住民たちで、曲調はどこまでも陽気です。歌詞はUtaTenなどで確認できます。
頭文字を拾う行は8行、うち食べ物と飲み物の名前は7つです。歌詞の表記はひらがなで「たこやき」「すきやき」ですが、劇場を出たあとに思い出して検索するときは「たこ焼き すき焼き ケバブに てりてり」と漢字で打つ人もいます。表記が違っても拾える頭文字は同じで、意味も「たこ焼きが好き」という話ではなく、た・す・ケ・てを並べるための4行です。耳に残っているのがメニューの並びだけなので、どこで行が切れるかも曖昧になりがちです。並びはわたあめ→ビール→じゃがバター→たこやき→すきやき→ケバブ→てりてりソースの焼きそばで固定で、この順番でないと「おわびじゃ、たすけて」になりません。
気づいた人の反応はだいたい「ひぇっ」で共通しています。「一気にご馳走が胃にもたれそう」という感想もありました。屋台の食べ物のチョイスが微妙にちぐはぐで、すき焼きだけ屋台らしくないのも、頭文字ありきで選ばれたと考えると腑に落ちてしまう。
「おわびに」で覚えている人が多い理由
この縦読み、ネット上では「おわびにたすけて」という表記もよく見かけます。漢字を混ぜた「お詫びにたすけて」「お詫びじゃ助けて」、全部カタカナの「オワビニタスケテ」で書く人もいて、知恵袋の質問も表記がばらけたまま立っています。耳で聞いた記憶だと「に」のほうになりやすい。「ビールに」の「に」が耳に残るのと、「おわびに(お詫びに)」のほうが日本語として据わりがいいせいでしょう。
ただ歌詞の並びどおりに頭を拾うと、3行目は「ビール」のビ、4行目は「じゃがバター」のじゃなので、出てくるのは「おわびじゃ」のほうです。島の言葉づかいで「お詫びだ」と言っている形になります。どちらで検索しても行き着く先は同じ8行ですが、正しく拾えるのは「おわびじゃ、たすけて」だと思っておけば間違いありません。
「屋台の歌」の正式なタイトルと、サントラでの7バージョン
曲名で探そうとして詰まる人が多いので、ここも整理しておきます。劇場のパンフレットやサウンドトラックでの正式なタイトルは「島のうた」で、「屋台の歌」はあくまで観客側の呼び名です。逆に言うと、サントラの曲名一覧を「屋台」で探しても出てきません。
サウンドトラックの配信が始まったのは、映画公開の翌日にあたる2026年7月25日です。Part1とPart2の2枚に分かれていて、どちらも26曲ずつ、劇伴と劇中歌あわせて52曲。「島のうた」と名の付くトラックは、この中に7つ入っています。
- 島のうた(Part1-4)/歌は「島民」。縦読みが仕込まれているのがこれ
- 島のうた 祭囃子ver.(Part1-9)
- 島のうた セイレーンver.(Part1-12)/セイレーン(CV.鈴木みのり)と人魚2人
- 島のうた まちがえて襲っちゃったのver.(Part1-13)
- 島のうた 討伐オファーver.(Part1-16)
- 島のうた セイレーンのアカペラver.(Part2-14)
- 島のうた 島二郎ver.(Part2-24)/島二郎(CV.最上嗣生)と島民
見送りの場面で流れるのは、いちばん下の「島二郎ver.」です。Part2の曲順を見ると、ひとつ前が「出航の朝」、ひとつ後ろが「家路へ」。港で送り出す場面にぴったり収まる位置に置かれていて、ここだけ歌詞から拾えるものが無くなります。
セイレーンver.の歌詞も同じ、だから縦読みも同じ
「セイレーンが歌うほうにも縦読みが入っているのか」という疑問もよく見かけます。入っています。歌詞サイトプチリリに載っている「島のうた(セイレーンver.)」を見ると、並ぶ食べ物はわたあめ、ビール、じゃがバター、たこやき、すきやき、ケバブ、焼きそばで、島民ver.と同じ。頭文字も当然そのままで、「おわびじゃ、たすけて」が出てきます。
つまりセイレーンver.で変わっているのは歌い手と拍子であって、言葉の中身ではありません。助けを求める文が仕込まれた歌を、助けを求められている側であるセイレーン(CV.鈴木みのり)が楽しそうに歌う。縦読みを知ってから聴き直したとき、いちばん座りが悪くなるのがこのバージョンです。
「屋台の歌」を家で聴くには、サントラを配信で
劇場を出てから確かめたい人向けに、聴く手段も書いておきます。「島のうた」はサウンドトラックのPart1の4曲目に入っていて、Apple Music、Spotify、LINE MUSIC、YouTube Music、Amazon Music Unlimitedなどで配信されています。CDを買わなくても、サブスクの契約があればその場で聴けます。
繰り返しになりますが、曲名で探すときは「島のうた」です。「屋台の歌」で曲名検索をかけても、配信サービスのどこにも出てきません。
このサントラ、売れ方も相当なものになっています。オリコンの週間デジタルアルバムランキングでは、8月10日〜16日の集計でPart1が1位、Part2が2位。登場4週目にして、ちいかわシリーズでは初の1位・2位独占でした。4週連続のTOP5入りも続いています。
同じ集計週で、ビルボードジャパンの総合アルバムチャート「Hot Albums」でも首位を取っています。CDの売上は2,249枚で15位ながら、ダウンロードとストリーミングで1位を取って総合を持っていった形です。映画のサウンドトラックがこのチャートの首位に立つのは、RADWIMPSの『天気の子』以来およそ7年ぶり。劇伴のアルバムがここまで上に居座るのは珍しく、縦読みの話が広まって歌そのものを聴き直す人が増えたことも、少なからず効いていそうです。
前半は詫び、後半はSOS
前半4文字と後半4文字で意味が切れているのもよくできています。歌詞サイトUtaTenの考察コラムでも、前半が島民からの詫び、後半が助けを求める言葉になっていると読み解かれています。事情を隠したまま、外から来た者を島に呼び寄せてしまった側の後ろめたさ。そう置いてみると、この歌がただのグルメソングではなくなります。
念のため書いておくと、これは公式が「そう仕込みました」と発表したものではありません。あくまで観客と歌詞サイトの読み解きです。ただ、当たっていると思わせる材料がいくつも出てきています。
見送りの場面では、歌詞が貝汁とカレーだらけになる
説得力を一段上げているのが、劇中の別の場面との比較です。ちいかわたちを島から送り出す場面で流れる「島のうた(島二郎ver.)」では、歌い出しの「おいしい屋台がてんこもり」から先が丸ごと差し替わり、並ぶのは貝汁とカレーばかりになります。同じ食べ物が繰り返される歌詞では、頭文字を拾っても言葉になりません。7種類のメニューが順番に並んでいたからこそ8文字が拾えたわけで、危機が去った場面ではその仕掛けごと消えていることになります。
貝汁は島二郎(CV.最上嗣生)の自慢の一品です。セイレーンの好みに合わせて濃い味の屋台料理を並べ続ける必要がなくなったから、島の味に戻った。そう読んでいる人もいて、歌詞の変化がそのまま島の状況の説明になっています。
同じメロディを場面ごとに歌い手ごと作り替えて、セイレーンが歌う回では言葉をそのまま残し、脅威が去った回では言葉のほうを差し替える。ここまで作り分けてあると、歌詞に仕掛けがあると考えるのは自然な流れです。
音楽担当は「宝箱を置いてきた」と書いていた
この映画の音楽を担当したのはトクマルシューゴ。公開前の投稿で、上水樽力とともに制作したことを明かしたうえで、「自分のアルバムと同じように、ギミックと夢幻を重ね宝箱を置いてきた気持ちです」と書いています。
ギミックを置いてきた、と本人が言っている以上、探せば見つかるものが仕込まれているのはたしかです。ちなみにエンディングテーマ「机さする」は、公式の告知によると作詞がナガノ、作曲がトクマルシューゴ、歌唱が青木遥。原作者が直接言葉を書いている作品なので、劇中歌の歌詞も相当練られていると見るのが妥当でしょう。
かわいい絵で怖い話をする、いつものやり方
各行の頭文字に別のメッセージを仕込む縦読みは、和歌の「折句」までさかのぼる古い言葉遊びで、ネット掲示板では丁寧な文章に本音を忍ばせるイタズラとして使われてきました。それを、かわいい生き物が屋台のごちそうを数え上げる歌に仕込む。しかも劇場では誰も気づかないまま楽しく聞き流してしまう。
記録的なヒットになっているこの映画は、「檻に入れて…暗いとこ」のような直球で不穏な歌詞でも話題になりました。明るい歌のほうにまで別の意味を隠してあるとなると、油断できる場面がひとつもない。もう一度観に行く人は、屋台のメニューをメモしながらどうぞ。