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ドードーは「のろまで愚か」ではなかった 世界に2つの完全な頭骨をCTで覗いたら、嗅覚と夜目に強い鳥だった

2026年8月15日 ・ トレンド「ドードー 頭骨 CT 研究 知能 嗅覚 夜行性」より
コペンハーゲン動物学博物館に保管されているドードーの頭骨
画像: コペンハーゲン動物学博物館のドードー頭骨(CC BY-SA 3.0 / FunkMonk, via Wikimedia Commons)

ドードーといえば、丸くて重そうで、人間が近づいても逃げずに捕まった鳥。だから絶滅した、という説明を子どものころに読んだ人は多いと思います。この「のろまで愚か」という評価に、頭骨の中身から反論する研究が出ました。

そもそも標本がほとんど残っていない

ドードーの研究がここまで進まなかった理由のひとつが、単純に材料不足です。17世紀にモーリシャス島で姿を消したあと、まとまった骨格や軟組織はほとんど残りませんでした。完全な頭骨にいたっては世界に2つだけ。コペンハーゲンのデンマーク自然史博物館と、オックスフォード大学自然史博物館にあるものが、事実上の最後の手がかりです。

今回の国際チームは、その希少な頭骨を含む標本と、近縁で同じく絶滅したロドリゲスドードー(ソリテア)をCTでスキャンしました。比較のために現生のハト・キジバトの仲間36種も同じように解析しています。

使ったのはエンドキャストという手法です。脳そのものは残っていませんが、脳が入っていた空間の内壁には、脳が押しつけた形が残ります。その型を3Dで起こせば、脳のおおまかな大きさや各部分の比率が見えてくる、という理屈です。

「頭が悪い」という証拠は出てこなかった

出てきた結果は、これまでのイメージとだいぶ違いました。認知に関わる前脳は、同じくらいの体サイズの鳥と比べて小さくありません。少なくとも「近縁のハト類より知能が低かった」と言える根拠は見つからなかった、というのが研究チームの結論です。

もっと面白いのが感覚のほうです。ドードーは嗅覚に関わる部位が、ソリテアやほかのハト類より大きい可能性が示されました。地面に落ちた果実を探して食べる暮らしなら、鼻がきく個体のほうが有利なので、辻褄は合っています。

そして視覚。目そのものは大きいのに、視覚を処理する視葉が異様に小さいという、ヨタカやフクロウに似た組み合わせが見つかりました。細かく見る力より、暗いところで光を拾う力に振った構成です。ここから研究チームは、ドードーが薄明薄暮、あるいは夜に活動していた可能性を指摘しています。もし本当なら、世界で唯一の夜行性のハトだったことになります。

くちばしにも特徴がありました。上のくちばしから来る触覚の情報を処理する領域が発達していて、地面をつつきながら手触りで食べ物を探していた姿が浮かびます。嗅覚が強く、暗さに強い目を持ち、くちばしの感覚も鋭い。明るい昼間に目でエサを探すタイプの鳥とは、そもそも設計が違っていたわけです。

じゃあ、なぜ人間に捕まったのか

ここで気になるのが、「賢いなら逃げろよ」という素朴なツッコミです。ただ、逃げないことと頭が悪いことは別の話になります。ドードーが暮らしていたモーリシャス島には、もともと自分を襲う大型の捕食者がいませんでした。近づいてくる生き物を警戒する必要がない環境で数百万年やってきた鳥に、初対面の人間を恐れる理由はありません。

さらに人間が持ち込んだブタやネズミ、サルが卵やヒナを食べたことのほうが、絶滅への打撃としては大きかったと考えられています。「愚かだから滅びた」という筋書きは、話としては分かりやすいけれど、実態にはあまり合っていません。

数百年ぶんのイメージが書き換わる

ドードーの「愚か者」イメージは、剥製も生きた姿も見られない時代に、当時のスケッチと逸話だけで固まっていったものです。今回のように現物をCTで覗ける時代になると、そのイメージのほうが先に崩れていきます。

しかも今回わかったのは、暗い森の中を鼻を頼りに歩き回る鳥という、これまでのぼんやりした姿より断然かっこいい像でした。同じ絶滅鳥でも、印象が変わるだけでずいぶん見え方が違ってきます。