いらすとやの「最高傑作」、名前は「水の中で眠る会社員たちのイラスト」
役所の掲示物から会社の資料まで、日本中で見かけるフリー素材サイトの「いらすとや」。その膨大なイラストの中から一枚だけを選んで「最高傑作」と言い切る投稿が、2026年9月20日にXへ流れてきました。文面はたった一行で、あとはリンクと画像だけ。それが投稿から一日で10万いいねを超えています。
水没したオフィスで、サラリーマンが気持ちよさそうに寝ている
貼られていたのは、円く切り取られた水中の風景です。ネクタイを締めたサラリーマンが数人、目を閉じたまま体をゆるめて漂っている。背景にはうっすらと机や椅子らしきものが沈んでいて、その間を黄色と黒のシマシマの魚が何匹も横切っていきます。ツノダシですね。水族館の熱帯魚コーナーにいるあれです。
会社が水に沈んでいるのに、誰ひとり慌てていません。溺れているというより、労働から解き放たれて浮いているように見える。この温度差が効いていて、投稿には「最高傑作」の一言以上の説明がいらなかったわけです。表示回数は290万を超え、リポストは6,000件、ブックマークも1万件を超えました。あとで見返すために保存した人がそれだけいた、ということになります。
正式なタイトルは「水の中で眠る会社員たちのイラスト」
投稿に貼られていたリンクをたどると、いらすとや公式のページに着きます。この絵の正式なタイトルは「水の中で眠る会社員たちのイラスト」。画像ファイルの名前は office_underwater.png で、直訳すると「水中のオフィス」です。
公式の説明文は、そのまま引くとこうなっています。「水に沈んだ会社の中でのんびりとくつろいでいるサラリーマンたちのイラストです。」。つまり溺れているのでも幽霊になっているのでもなく、公式の解釈として彼らはくつろいでいる。勝手な深読みではなく、作った側がそう書いている。ここが一番おかしいところだと思います。
10年前の一枚が、いまになって掘り起こされた
公開日を見ると2016年4月30日。今回バズった投稿より10年以上前の絵です。新作が話題になったわけではなく、誰かが膨大なアーカイブの底から拾い上げてきた、という順番になります。
いらすとやは2012年のスタート以来、行事も職業も動物も、ニッチすぎる場面まで含めて更新を続けてきました。だから「探せば何かある」のは知られているのに、こういう絵があること自体は誰も把握しきれていない。そこを一枚ずつ掘り当てて「これが最高傑作」とやる遊びが成立するわけです。いらすとやという存在がどう受け止められているかはミーム辞典の「いらすとや」にまとめています。
ちなみに、素材そのものは規約の範囲内なら個人でも法人でも無料で使えます。公式のご利用についてによると、有償対応になるのは「素材を21点以上使った商用デザイン」など。著作権は作者のみふねたかしさんが保持していて放棄はしていない、とも明記されています。会議資料の1ページに沈めて使うぶんには、問題なさそうです。
いらすとやの“攻めた一枚”は、これが初めてじゃない
いらすとやが時々ぶっ込んでくるブラック寄りの絵は、そのたびに掘り起こされています。2026年7月には、スマホをのぞき込む人の頭からピンクの脳がとろけ出す「ドパ人」(ドーパミン中毒のイラスト)が話題になりました。かわいいタッチのまま、言いにくいことをさらっと絵にしてしまう。今回の水没オフィスも、その系譜の一枚として見ると納得がいきます。
最高傑作かどうかは人によるとして、探せば自分の「これ」が見つかるのは確かです。会社で資料を作るついでに、いらすとやの検索窓に思いついた単語を投げてみてください。だいたい、ある。