韓国語の「자리가 있다」は席が空いてるとも空いてないとも取れる、「そこ座んなよ」と同じだった
韓国語の辞書サイトのスクリーンショットが1万2千いいねを集めています。「자리가 있다」(チャリガイッタ)という項目の意味欄に、こう書いてありました。
「席が空いている、席が空いてない」。読み間違いではなく、正反対の意味が2つとも載っています。説明文にも「状況によって意味が決まる」とだけ書かれていて、辞書のほうが匙を投げている感じがあります。
「ここ、席ありますか?」に「あります」と答えると座れない
これはスクショのネタ枠ではなく、韓国語をやると最初のほうでぶつかる本物の落とし穴です。出典は韓国語辞書のKpediaで、자리가 있다のページにそのまま同じ記述があります。
からくりは「자리(チャリ)」が「席」であると同時に「(誰かの)場所・持ち場」でもあるところです。カフェで相席を頼むときの定番フレーズが「여기 자리 있어요?」(ヨギ チャリ イッソヨ)で、直訳すると「ここ、席がありますか?」。日本語の感覚だと「ありますよ=どうぞ空いてます」と答えたくなりますが、韓国語では逆で、「있어요(あります)」は「人がいます、取られてます」という意味になります。座っていいですよと言いたいときの返事は「없어요(ありません)」です。
空いていることをはっきり言いたいときは「자리가 비어있다(席が空いている)」と別の言い方を使う、というのが実際の使い分けになります。旅行中にこれを取り違えると、空いている席の前で追い返されたり、逆に人の荷物が置いてある席に堂々と座ったりすることになります。
日本語の「そこ座んなよ」も、まったく同じ罠
このスクショに対して、日本語も人のことを言えないという指摘が付き、そちらは4万2千いいねまで伸びました。
「そこ座んなよ」は「そこ座っていいよ」とも「そこ座らないで」とも取れる、というものです。言われてみるとたしかにどっちも成立します。
これも仕組みははっきりしていて、由来の違う2つの「な」が同じ形に潰れているのが原因です。ひとつは禁止の「な」で、「座るな」が縮んで「座んな」。もうひとつは「〜なさい」を略した「な」で、「座りな」が縮んで「座んな」。出発点は正反対なのに、口語で撥音便になった瞬間に見分けがつかなくなります。
同じ現象は他の動詞でも起きます。「するな/しな」が両方「すんな」になり、「見るな/見な」が両方「見んな」になり、「やるな/やりな」が両方「やんな」になる。日常会話では語尾の上げ下げと顔で判断しているだけで、文字にした瞬間にどちらとも読めます。LINEで「もうやんな」と送られてきて数秒固まった経験、わりとみんなあるはずです。
辞書に正反対が並ぶのは、けっこう普通のこと
ひとつの語が正反対の意味を持つ現象自体は、言語をまたいで珍しくありません。日本語の「適当」がきちんとした意味とテキトーな意味の両方を持っているのが分かりやすい例で、「情けは人の為ならず」のように、解釈が割れたまま両方が使われている言い回しもあります。
とはいえ辞書の意味欄に「空いている、空いてない」が並んで、説明が「状況によって決まる」で終わっているのはなかなか強い。旅行前にひとつだけ覚えるなら、「여기 자리 있어요?」に座りたい側として答えるときは「없어요」、これだけで十分です。
ことばの噛み合わなさでいうと、生きている牛はcowで肉になるとbeef、というやつも日本語のほうが大概だった話がありました。どの言語も、外から見ると同じくらい変です。