「荷物専用新幹線」の模型が発表翌日に製品化中止、実物は座席ゼロのE3系だった
鉄道模型のTOMIXから「荷物専用新幹線」が出る。その新製品ポスターが公開されたのが9月10日で、模型店各社がその日のうちに予約を受け付けはじめました。翌11日の午前11時には、メーカー側の公式アカウントであるトミックスショールーム公式が商品紹介の投稿まで出しています。
そして同じ11日のうちに、この製品は中止になりました。
公式サイトに出たのは「製品化中止のお知らせとお詫び」
トミーテックの公式サイトに掲載された製品化中止のお知らせとお詫びは、日付が「2026.09.11」。本文はほぼ2文しかありません。
「2026年9月10日よりご案内いたしました<97652>JR E3系東北新幹線(荷物専用新幹線)セットにつきまして、諸般の事情により製品化中止とさせていただきます。」
続けて「お客様、並びに関係各位には、大変ご迷惑をおかけいたしますことをお詫びいたしますと共に、何とぞご了承いただきますようお願い申し上げます。」と書かれています。中止の理由として公式が出しているのは「諸般の事情により」の一言だけで、それ以上の説明はありません。
中止になったのは品番<97652>の「JR E3系東北新幹線(荷物専用新幹線)セット」。荷物専用新幹線に改造されたE3系L69編成を、7両のフル編成で再現するセットで、2027年3月発売予定とされていました。ポスターが出てから中止の告知が出るまで、丸1日ちょっとです。
模型店側の対応も早く、イモンやタムタムなどが中止の告知を出して、受け付けた予約は全てキャンセル扱いになりました。予約した側からすると、押した翌日に取り消しという流れです。ファンからは、発表の翌日に製品化中止というのは初めて見た、という反応も出ていました。
そもそも荷物専用新幹線って、何を運んでいるのか
ここからが本題かもしれません。模型が中止になった一方で、題材になった実物のほうは今も走っています。
JR東日本がこの車両の投入を最初に発表したのは2025年3月4日で、そのときの発表では「2025年秋に運行を開始する予定」とされていました。運行開始日が2026年3月23日と示されたのが2025年12月9日の発表で、実際に走り出したのもその日です。鉄道コムの「東北新幹線で『旅客が乗れない新幹線』2026年3月デビュー!」によると、その正体は「列車荷物輸送サービス「はこビュン」の輸送用車両」。「つばさ」で使われてきたE3系7両編成を改造したもので、JR東日本はプレスリリースでこれを「日本初の荷物専用新幹線」と呼んでいます。
はこビュンはJR東日本が展開している列車荷物輸送サービスの名前です。そのために1編成まるごとを荷物用に振り切ったのが、このE3系L69編成ということになります。旅客は乗れません。
座席を全部撤去して最大17.4トン、1000箱ぶん
改造の中身がなかなか豪快です。同じ記事の説明では「客室内の座席をすべて撤去することで、床面をフラット化。荷物をカゴ台車に載せたまま車内に搭載できるようにしており、最大17.4トン、1000箱程度の荷物が積載可能となっています。」とのこと。
座席を外すだけでなく、床を平らにしてカゴ台車ごと転がして入れられるようにしてある。新幹線の車内というより、走る倉庫に近い作りです。
積み下ろしの場所も普通の列車とは違います。「荷物の積み下ろしは、駅ではなく車両センター(車両基地)で実施。AGV(無人搬送車)を導入し、車両センター内の自動搬送を実現するとしています。」とのことで、ホームで駅員が台車を押している絵を想像していると、だいぶ外れます。
ダイヤについては、発表時点で「2026年3月23日以降の平日に運転。E5系による「やまびこ」と連結しての運転で、盛岡新幹線車両センターを正午前に発車し、16時ごろに東京新幹線車両センターに到着するダイヤを予定しています。」と説明されていました。プレスリリースでの号車の振り分けは、旅客が乗るのが1〜10号車で、荷物が乗るのが11〜17号車。E5系の後ろにE3系がくっついている編成を見かけたら、後ろの7両には誰も座っていない可能性があります。
実物はいまも平日に走っているのに、模型だけが幻になった
ちなみに発表当時の様子は鉄道ファンの記事にも載っています。車内は座席を全部外したうえで床に鉄板を敷き、滑り止め加工まで入れてある、という念の入りようです。実車は運行開始日の発表から3か月ちょっとで走り出し、そこから半年近く動き続けている、わりと地に足のついたプロジェクトです。
その実物を7両で再現するはずだった模型のほうが、発表から1日で消えました。理由は「諸般の事情により」としか出ていないので、ここで勝手な推測は書きません。分かっているのは、9月10日に予約できて、9月11日にはできなくなったという事実だけです。
荷物専用新幹線という存在自体を今回はじめて知った人も多いと思います。平日の昼間、盛岡から東京へ向かうE5系の後ろに、人を乗せていない7両がぶら下がっている。次に新幹線に乗るとき、連結部の向こう側をちょっと気にしてみると面白いかもしれません。
新幹線まわりの話だと、500系の長い鼻がカワセミのくちばしから生まれた経緯や、東京駅始発なら自由席で十分かで割れた論争もどうぞ。