動物園のコツメカワウソ、人が来ると活発になると判明。アデレード大の6か月調査でストレスの兆候は出ず
動物園に行くと、動物が奥に引っこんで出てこないことがあります。人に見られてストレスなんだろうな、と勝手に反省しながら帰るのが定番の流れですが、その前提を疑う研究結果が出ました。
146回、1時間ずつ観察した
研究チームは、1回あたり約1時間の観察を積み重ねて合計146セッションを分析しました。泳ぐ、歩く、登る、物をいじる、休むといった行動を細かく記録しながら、同時に鳴き声(キーキー、チャープ、悲鳴のような声、吠え声など)も拾っています。そのうえで、来園者だけがいる状況、スタッフもいる状況、誰もいない状況を比べました。
論文のタイトルが「You Otter Not Talk」で、otter(カワウソ)と ought to(〜すべき)をかけた駄洒落になっているあたりに、研究チームの余裕を感じます。
「人がいると隠れる」わけではなかった
結果は、来園者がいるときのほうがカワウソは活発で、しかも見つけやすい場所にいる傾向がある、というものでした。人の存在がストレスになって隠れる、という単純な図式は、少なくともこの6頭では観察されなかったことになります。
ただし、ここは研究チーム自身が慎重に線を引いています。今回の調査は観察によるもので、来園者が来たからカワウソが活発になったのか、活発に動いているカワウソの前に人が集まっただけなのかは区別できません。どちらの向きの因果なのかは、この方法では決められないというわけです。
「カワウソが人を見て楽しんでいるのかもしれない」という言い方で紹介されることが多い研究ですが、正確には「人がいると悪いことが起きる、という前提のほうを疑う材料が出た」というのが手堅い読み方になります。
動物園の「見せ方」に効いてくる話
この手の研究が積み重なると、展示のつくり方が変わってきます。来園者の存在が動物にとってどう働くかは種によっても個体によっても違い、これまでの調査でも、ストレスの出方は個体差が大きいという結果が出ていました。カワウソについては、少なくとも隠れる場所と出てくる場所の両方を用意しておけば、本人(本獣)が選べる、という話になります。
動物園でカワウソの前に立ったとき、こちらが一方的に観察している気分でいるけれど、向こうもこちらを眺めて時間をつぶしているのかもしれない。そう思うと、ガラスの前でしばらく粘ってみる価値はありそうです。