猫を撫でただけでノミの有無を見抜いた獣医、その根拠が“自分がノミアレルギーだから”だった
動物病院で猫を診てもらったら、獣医が撫でながら「うーん、ノミはいなそうだなぁ」と言った。まだ何も調べていないのに、なぜわかるのか。聞いてみたら返ってきた答えが、想像のはるか斜め上でした。
「僕、ノミアレルギーだから触っただけでわかるんだよね」。投稿したいえもりさん(@iewori)は、これを「命を削った特殊能力」と表現しています。9万いいねを超えて広がったのも納得で、たしかに検査キットが人間の形をして白衣を着ている。
そもそも人がノミに刺されると何が起きるのか
ノミの痒みは、刺されたこと自体で起きるわけではありません。吸血のときにノミが注ぎ込む唾液に対して、体がアレルギー反応を起こすことで痒みや赤みが出ます。犬猫のノミアレルギー性皮膚炎も、原理としては同じです。
面白いのはその反応が、刺された回数によって段階的に変わっていくところ。医師の解説によれば、初めて刺されたときはほぼ無反応で、何度か刺されるうちにまず「遅れてやってくる反応」が出るようになります。さらに重なると遅れた反応と即座の反応が両方出るようになり、そのうち即座の反応だけになる。そして最終的には免疫ができて、また反応しなくなるといいます。
つまりこの獣医は、刺されすぎて「触れた瞬間にわかる」段階まで進んでいる可能性が高い。特殊能力というより、通算被害数の証明書に近いものがあります。
本来の確認方法はもっと地味
念のため書いておくと、動物病院の正式なノミ確認は体を張るものではありません。目の細かいノミ取りコームで毛をすいて、ノミそのものや黒い粒(ノミの糞)が落ちてこないかを見る。落ちた粒を湿らせた紙の上に置くと、血液由来なので赤く滲みます。皮膚を掻き取って顕微鏡で見たり、血液検査でアレルギーの抗体値を調べる方法もあります。
だからこの一言は、診断そのものというより最初の当たりをつける勘の話でしょう。それでも「触っただけでわかる」と真顔で言われたら、飼い主としては笑うしかない。
動物アレルギーを抱えて働く人は、少なくない
このツイートには「ノミアレルギーで獣医を目指すってすごい」という反応がつき、投稿者自身も「なるほど、後天的だったのかもしれない」と返しています。実際、動物に関わる仕事とアレルギーの組み合わせは珍しくありません。リプライ欄には「動物アレルギーの獣医は意外といる」「レジンアレルギーで歯科技工士を辞めた友人がいる」といった声もありました。
これを裏づける調査もあります。札幌医科大学の野上和剛氏らが動物医療従事者と学生を対象に行った実態調査では、回答した322人のうち51%にあたる164人が動物アレルギーを持っていました。回答者の内訳は獣医師が187人(58%)と最多です。
半数が症状を抱えながら現場に立っていて、6割が実務で困った経験を持つ。動物が好きで選んだ仕事なのに体が受けつけない、というのはなかなかしんどい話です。それでも辞めずに続けている人が多いという事実のほうに、この投稿の笑いの土台がある気がします。
免疫がついたら能力を失う
ひとつ気になるのは、さっきの段階の話でいくと、刺され続けた先には「免疫ができて反応しなくなる」ゴールが待っていること。ノミセンサーとしての精度は、獣医を長く続けるほど落ちていくことになります。
能力を維持するには適度に刺され続けなければいけない。診察室でそんな綱渡りが行われていると思うと、次に動物病院へ行ったとき、先生の腕をつい見てしまいそうです。