龍角散をアメリカで飲もうとして止められた話。水なし・さじ1杯が正しい飲み方
のどが荒れたときの定番、龍角散。あの缶入りの微粉末を海外で出したらどう見えるか、という投稿が8月28日の朝から伸びています。投稿したのはMTさん(@Mocherin)。アメリカ留学中、お世話になっていた新聞社で取材を受ける前に、のどを整えようと龍角散を取り出したところ、周りが明らかにざわついたそうです。
「ヤバい薬と間違えられる」と察したMTさんは、「これは日本の喉の薬で、このように使います」と説明しながら実演します。ところが、付属のさじで粉をすくって口に放り込んだところで「やめろ! オーバードーズで死ぬぞ!」と全力で止められた、と。しかも止めた側から使い方まで指導が入るという、何重にもややこしい展開になっています。
誤解自体はその場で解けたそうですが、「あいつのテンションが高いのはきっとあれのせいだ」という噂が結構長いあいだ残っていたそうです。オチまで含めて完成度が高い。
悪いのは飲み方ではない。それが正しい飲み方だ
ここが今回の話の肝で、MTさんの飲み方は完全に正解です。龍角散は生薬の微粉末がのどの粘膜に直接くっついて働くタイプの薬なので、水で流し込むと粉が胃に落ちてしまい、狙った効き方をしません。公式サイトも「必ず水なしで服用してください」と明記しています。
つまり「白い粉を小さなさじですくって、水も飲まずにそのまま口へ入れる」という一連の動作は、薬として何ひとつ間違っていない。間違っていないのに、文脈を知らない人が横で見ていると別の何かに見えてしまう。そこがこの話の面白いところです。
欧米に「粉薬」という選択肢がほとんどない
もうひとつの背景が剤形の違いです。日本では粉末や顆粒の薬がごく普通に処方されますが、欧米では粉末・顆粒はあまり一般的ではなく、市販薬も処方薬も錠剤とカプセルが主流とされています。実際、リプ欄には「アメリカで売っている龍角散はフルーツ味のタブレットタイプで、粉は手に入らない」という声も並びました。
見慣れた薬の形が錠剤とカプセルだけの環境で、缶から白い微粉末が出てきて、それを匙で山盛りにして水なしで口に運ぶ人がいたら。そりゃ止めにも入ります。「粉の龍角散って缶に入ってるし、ヤバい薬と間違える要素あるか?」という疑問も出ていましたが、その缶と匙こそが誤解のもとだった、という結論になっていました。
リプ欄で笑われていたのはむしろ止めた側で、「なんで正しい使い方をそんなに詳しく知ってるんだ」というツッコミが大量に付いています。取材で得た知識ということにしておきましょう。
名前の「龍」は龍骨、「角」は鹿角霜
海外で誤解されがちな一方、龍角散は名前の響きから中国由来の漢方だと思われることも多いのですが、これも違います。ルーツは江戸時代の秋田藩で、藩の御典医だった藤井家の初代・藤井玄淵が藩薬として創製したのが始まりです。
つまり和漢薬であって、生まれは秋田。日本の外に出た瞬間に説明の難易度が跳ね上がるのも納得の出自です。
持って出るなら缶のまま
同じ経験談はほかにもぶら下がっていて、「愛用しているので旅行にも缶のまま持っていくが、空港で引っかかることがしばしばある。最近はバッグから出して見えるところに置くようにしている」という人もいました。中身を小分けして名前のわからない容器に移し替えるより、正規のパッケージのまま持っていくほうが説明が早い、というのは薬全般に言える話です。
海外へ持ち出す予定があるなら、缶ごと、箱ごと。あと、現地で実演するときは先に説明を終わらせてから口に運んだほうがよさそうです。