セルフ給油の“静電気除去シート”、触ってる人いる?問題。「触らない発想がない」化学メーカー勤務者と世間の断絶
車を運転する人なら、一度は目にしたことがあるはず。セルフのガソリンスタンドで給油機の手前に貼られた、赤い手のひらのマークと「はじめにタッチ!」の文字。その真ん中にある黒いパッド。「静電気除去シート」です。ある投稿者が、そこに素朴な疑問をぶつけました。
「これタッチしてから給油してる人みたことないねんけど、してる人おる?」。言われてみれば、たしかに。給油口を開けてノズルを握る動作に気を取られて、あの黒いパッドは素通りという人、けっこう多いのではないでしょうか。リプライにも「一度も触ったことない」「存在は知ってるけど意味を知らなかった」という声が並びました。
「触らないという発想がない」プロの戦慄
ところが話はここで終わりません。この投稿を引用する形で、化学メーカーに勤めるという人がこうコメントしたのです。
「化学系メーカー勤務ワイ、コレを触らないという発想がなさすぎて世間との断絶を感じる」。可燃物や静電気の怖さを日々叩き込まれている人からすると、あのパッドをスルーするなんて考えられない、というわけです。このひと言に12万を超えるいいねが集まり、「触らない派」の多さに驚くプロと、「え、触るものなの?」となる世間との温度差が、くっきり浮かび上がりました。
そもそも、なぜ触らないと危ないのか
静電気除去シートは、その名のとおり体にたまった静電気を逃がすための安全装置です。車を降りて歩くと、衣類やシートとの摩擦で体に静電気が帯電します。その状態で金属の給油ノズルに手を伸ばすと、手とノズルの間でパチッと放電。このときの小さな火花が、給油口から立ちのぼるガソリンの蒸気(ベーパー)に引火し、火災につながる危険があるのです。
シートはプラスチックに金属を混ぜて作られており、触れることで体の静電気が給油機を通じて地面へと安全に逃げていく仕組み。だから、いざ触っても「パチッ」とはきません。総務省消防庁の資料によれば、セルフスタンドが解禁された平成10年からの数年間だけでも、静電気が原因とみられる給油中の火災は複数件報告されており、いまも毎年のように起きているといいます。
見落としがちなポイントもあります。給油を始めたあと、いったん車内に戻ってまたノズルを握る。このときに再び静電気が発生して放電するケースがあるということ。つまり「最初に一度触ればOK」ではなく、車内に戻ったらもう一度触れておくのが安全、というわけです。
知ってしまえば、もう素通りできない
厳密には、静電気除去シートの設置は消防法で義務づけられているわけではないそうです。それでも多くのスタンドがわざわざ貼っているのは、給油に慣れていない人でも安全に使えるように、という配慮から。あの派手な赤い手のマークは、ただの飾りではなかったのです。
「触ってる人見たことない」という共感から始まり、プロの「触らないなんてありえない」で目が覚める。今回の一件は、身近すぎて意味を考えなかった“あのパッド”の正体を、多くの人に思い出させてくれました。次にセルフで給油するときは、ぜひあの黒いパッドに、まず手のひとつ。ほんの一秒の習慣が、思わぬ火事から自分とスタンドを守ってくれます。