カルビーの銀色“石油原料節約パッケージ”に、吉田戦車が直描きイラスト。「上手に描ける人が信じられない」の自虐に、十分うまいと総ツッコミ
2026年の初夏、スーパーのお菓子売り場でちょっとした異変に気づいた人も多いのではないでしょうか。いつもはカラフルなはずのポテトチップスやかっぱえびせん、フルグラが、銀色一色の“そっけない”パッケージで並んでいる。この見慣れない袋に、思わぬ形で遊び心を発揮したのが、漫画家の吉田戦車(@yojizen)さんでした。
「袋にきれいに描ける人が信じられない」。そんな一言とともに投稿されたのは、カルビー「フルグラ」の銀色パッケージに、黒いペンでゆるいタッチの生きものが直描きされた一枚。ほとんど印刷のない銀の余白が、まるで真っさらなキャンバスのように吉田さんの筆を誘ったようです。本人は謙遜していますが、その味のある線はまぎれもなくプロのそれ。リプライ欄では「上手ーと思ったら、ご本人様……!」「いやいや、十分お上手なのですが」と、自虐を真に受けさせてもらえない“総ツッコミ”状態になりました。
そもそも「石油原料節約パッケージ」って?
このネタの舞台となった銀色の袋は、カルビーが2026年5月ごろから順次切り替えた「石油原料節約パッケージ」です。パッケージ印刷に使うインクやプラスチックは、石油から精製されるナフサを原料としています。そのナフサの調達が難しくなったことを受け、白と黒だけのモノクロ印刷にすることで、顔料や有機溶剤に使う石油をぎゅっと切り詰めているのです。
対象になったのはポテトチップス・堅あげポテト・かっぱえびせん・フルグラなど14品ほど。カルビー以外にも、印刷の色数を減らしたり包装を簡素化したりと、多くの食品メーカーが同じような対応を取りました。ちなみに、スナックの袋がそもそも“銀色”なのは、中身を光や酸化から守るためにアルミを蒸着させているから。その袋を透明にできない理由は以前くわしく紹介しましたが、今回の節約パッケージは、その銀の地に乗せる“印刷インク”のほうを削っているわけです。じつはこの“銀色パッケージ”、供給が逼迫した時代に何度か顔を出してきた歴史があり、目にした年配の人の中には「昔もこんなのあったな」と懐かしむ声も。ピンチのときに現れる、日本のお菓子売り場の風物詩のような存在でもあります。
「余白」が漫画家を呼んだ
普段のフルグラなら、パッケージいっぱいにフルーツやグラノーラの写真、ブランドロゴがぎっしり。ところが石油原料節約パッケージは、商品名と最小限の文字が黒で入るだけで、あとは銀色がのっぺりと広がっています。その“描いてくれと言わんばかりの余白”は、不条理ギャグの名手にとってあまりに魅力的だったのでしょう。
吉田戦車さんといえば、『伝染るんです。』のかわうそ君に代表される、脱力系のゆるい絵柄と独特のセンスで一時代を築いた漫画家。何気ない日常のすき間に妙なものを描き込んでしまうその作風そのままに、節約パッケージの銀のスペースへ、するりとキャラクターを住まわせてしまったわけです。
ピンチが生んだ、ちいさな遊び場
インク不足という、本来なら渋い事情から生まれた地味なパッケージ。それが漫画家の手にかかると、「落書きしたくなる白い袋」というポジティブな遊び場に早変わりしました。節約のためにそぎ落とされた余白が、思わぬ形で人の創作意欲を刺激する。制約があるからこそ生まれる面白さを、さらりと見せてくれた一枚でした。銀色の袋を見かけたら、あなたも一枚、ペンを走らせてみたくなるかもしれません。