「アズゴア トラック」ミームとは?歌詞の元ネタはDeltaruneのディセ失踪説
白いヤギみたいな王様キャラが、にやっと笑って夜道で車を飛ばし、道に飛び出した誰かをはねる。そこに「Driving in my car」という妙に耳に残る歌が乗る。TikTokやYouTubeショートで流れてくるこれが 「アズゴア トラック」 です。英語圏では「Asgore Runs Over Dess」、替え歌のほうは「Bergentrück」「Driving In My Car」と呼ばれています。
「アズゴア トラック」とは?
インディーゲーム『Deltarune』(デルタルーン)のファン考察をネタにしたミームです。主人公クリスの父親アズゴアが、ノエルの姉ディセを車ではねて行方不明にさせたのでは、という説を、GIFと替え歌で茶化しています。
前提として、ディセはゲームに一度も姿を見せないキャラです。作中では「行方不明になった」「もう亡くなっているかもしれない」とほのめかされるだけで、何があったのかは語られていません。アズゴアは元警察署長で、いまは町の花屋。作中ではかなりまじめで温厚な父親として描かれています。
その人が悪い笑顔でハンドルを握っている、というギャップが笑いどころです。アズゴアが犯人だというのはあくまでファンの考察で、公式に確定した話ではありません。
元ネタ・由来
2021年のReddit考察が出発点
海外のミーム辞典Know Your Memeによると、いちばん古いのは2021年9月18日の投稿です。Redditの『Deltarune』掲示板に、ユーザーの u/degraffa が「アズゴアがディセを死なせたのでは」という説を書き込みました。
根拠としてよく挙げられるのは、警察署長だったころのアズゴアが、処分を受けるほどの何かをやらかしたらしいことと、ノエルの家(ホリデー家)での会話に出てくる不穏なセリフです。2022年にはTumblrでこの説を茶化す画像が出て、2024年10月にはRedditに「How Dess “disappeared”」という、アズゴアがハンドルを切ってディセをはねる動画が上がり、2,000アップボートを超えました。この時点ではまだ一部のファンの間の話です。
2025年6月のGIFで一気に広がる
火が付いたのは2025年6月5日、『Deltarune』のチャプター3と4が同時に発売されてからです。新しいチャプターでもディセの謎は解けず、考察がまた盛り上がりました。
そこに出てきたのが、GIF作者の @Triki_Tr0y さんが2025年6月12日(日本時間)に投稿したこのGIFです。アズゴアがにやりと笑い、夜道でディセをはねる数秒の動きで、いいねは約7.7万ついています。
このGIFには下敷きがあります。2006年のアメリカのアニメ映画『Open Season』(邦題は『オープン・シーズン』とされる)で、猟師のショーが「He ran right in front of my truck!(あいつが俺のトラックの前に飛び出してきたんだ!)」と言い張りながら、実はわざとシカのエリオットをはねていた、という回想シーンです。事故のふりをして実はわざと、という構図がそのまま考察に重ねられています。
その後の1週間ほどで、同じ構図を自分の絵柄で描き直す人がXに次々と現れ、3万〜4万いいね級の描き換えが何本も出ました。日本の知恵袋にも2025年6月25日に「Tiktokとかで3日前くらいに流行り出した、アズゴアがディセを車で轢き殺すmemeが流行ってますが、流行った経緯は何ですか?」という質問が立っていて、日本でも同じころに流れてきていたことがわかります。
替え歌「Bergentrück」の歌詞
ミームを決定づけたのが替え歌です。2025年7月3日、KennyTheLyr1c1st さんがGIFに歌詞を付けた初版を公開し、翌7月4日に Bub8les さんが歌った版が出ました。こちらは再生回数2,750万回を超えています。
概要欄のクレジットでは、作詞とミックスが KennyTheLyr1c1st さん、歌が Bub8les さん、ディセの悲鳴が Ragamuffin さん、GIFが Triki_Tr0y さんです。歌っている人と歌詞を書いた人は別なので、そこは混同しやすいポイントです。
歌詞の出だしは次のとおりです。
Driving in my car Right after a beer
ここから、道のでこぼこがシカの形をしているとか、飲酒運転を責められても開き直るとか、アズゴアが悪びれずにディセをはねていく流れが続きます。ビールを飲んだ直後に運転し、汚い言葉も混ざる悪ノリの歌詞なので、当然ですが現実でやったら完全にアウトです。キャラが絶対にやらなそうなことを言わせる落差で笑わせている歌だと思って聞くのがよさそうです。歌詞の全文は動画の概要欄に貼られたGoogleドキュメントで公開されています。
7月15日には KennyTheLyr1c1st さんが、Bub8les さんの歌でフルバージョンも出しました。こちらも1,678万回再生されています。
曲のもとは『Undertale』のアズゴア戦
替え歌のメロディにはさらに元があります。直接の下敷きは、Zeb さんと Mythic Apex さんが2020年に出した「ASGORE」のトラップリミックスです。そのリミックスの原曲が、前作『Undertale』のアズゴア戦で流れる「Bergentrückung」と「ASGORE」(作曲はトビー・フォックス)です。
替え歌のタイトル「Bergentrück」は、この曲名「Bergentrückung」と「truck(トラック)」をかけた言葉遊びです。日本語で「アズゴア トラック」と呼ばれるようになったのも、映画の「my truck!」というセリフや、替え歌のサビで叫ばれる「TRUCK!!」が効いているとみられますが、誰が最初にそう呼んだのかははっきりしていません。
運転手を替えた派生が量産される
2025年7〜8月には、運転手を別のキャラに差し替えた派生が大量に出ました。Know Your Memeにまとめられている分だけでも、AI VTuberのNeuro-sama版、アニメ風のMV(560万回)、はねられたディセ側から歌うアンサーソング、『Five Nights at Freddy’s』のフレディ版(1,030万回)、重音テトが初音ミクをはねる3DCG版(300万回)などがあります。
流行った理由は、チャプター3・4の発売でディセの謎がちょうど再燃していたところに、まじめな父親キャラが悪い顔で車を飛ばすGIFと、一度聞いたら抜けない替え歌が重なったことです。「運転手を好きなキャラに替えるだけ」というテンプレのわかりやすさも、派生が止まらなかった理由とされています。
使い方・例文
- 「アズゴアのトラックの歌、1日中頭で流れてる」
- 「ディセの行方、もうアズゴア トラックのせいってことになってて草」
- 「推しがハンドル握ってる版のアズゴア トラック見つけた」
- (道に何か飛び出してきた動画に「Driving in my car」とだけリプする)
「Driving in my car」の一節だけで通じるくらい曲のほうが有名なので、元のゲームを遊んでいない人でも歌だけ知っているケースがよくあります。ただ、ディセの失踪は物語の核心に触れる話なので、未プレイの人に真顔で広めるとネタバレになる点は注意です。GIF作者の元投稿にも #deltarunespoilers(デルタルーンのネタバレ)のタグが付いています。
関連する言葉
ひとつの構図を自分の絵柄で描き直して回す遊び方は、日本のドブカスラッシュの描き換え大喜利とよく似ています。
海外のTikTokから広がったキャラクターものという点では、AI生成キャラに謎の名前を付けたイタリアン・ブレインロットと同じ時期の流行です。重音テト版の派生に反応した人なら、テトが歌うメズマライザーの流れで見かけたかもしれません。