「リロイ・ジェンキンス」とは?元ネタ(WoWの突撃動画)と「32.33%」「チキン」の意味を解説
ボス部屋の前で、パーティ全員がえんえんと作戦会議をしている。担当を割り振り、立ち位置を決め、しまいには生存率まで計算し始める。そこへ、席を外していた男が戻ってきて言う。「よし、やるぞ」。そして自分の名前を絶叫しながら一人で突っ込み、パーティは全滅する。2005年に撮られたこの1本の動画が 「リロイ・ジェンキンス」 です。
「リロイ・ジェンキンス」とは?
日本語圏での意味は、作戦や指示を無視して単騎で突っ込み、集団ごと台無しにする人、またはその行為。そこから広がって、無謀な特攻そのものを指すこともあります。「リロイする」「あいつリロイ・ジェンキンスかよ」といった形で動詞にも名詞にも化けます。ニコニコ大百科にも中黒あり表記で項目が立っています。
使いどころは、MMOやFPSのように味方と足並みをそろえないと成立しないゲームが中心です。ただ、言われた側が本気で怒るタイプの罵倒ではありません。温度としては「やっちまったなお前」くらいの笑いが強い。元の動画からしてプレイヤー自身が自分たちを笑ったものだったので、そのノリが言葉にも残っています。
元ネタ・由来
舞台はオンラインRPG『World of Warcraft』(WoW)の高難度ダンジョン、上位ブラックロック・スパイア。その一角に「ルーカリー」というドラゴンの卵が並んだ区画があり、雛が孵ると一気に囲まれます。動画のパーティはここに挑む直前で、誰がどう釣るか、どこに立つかを長々と詰めています。
計算役の一人が数字を出して言うのが、この動画で一番有名な台詞です。「32.33 - repeating, of course - percentage of survival」。生存率32.33パーセント、もちろん循環小数な、という意味で、リーダーはこれを聞いて「いつもよりだいぶマシだ」と応じます。
そこへ、会議のあいだチキンを温めに離席していたリロイが戻ってきます。「Alright chums, I’m back. Let’s do this.」と言うなり、自分の名前を叫んで単騎で走り出す。仲間の「Oh my God, he just ran in.」が続き、孵った雛の群れに囲まれてパーティは全滅します。ここまでで動画はほぼ終わりですが、真骨頂は最後です。責め立てる仲間に対し、リロイが返した一言が「At least I have chicken.」。少なくとも俺にはチキンがある。何ひとつ反省していないこの返しで、動画は伝説になりました。
広まり方も当時としては変わっています。ギルド PALS FOR LIFE は動画をWoW専門のファンサイト WarcraftMovies に上げ、あわせて公式フォーラムに「プレイングに批評をくれ」と投稿しました。真顔でアドバイスを求める体裁そのものがネタだったわけです。以降の足取りはこうなります。
- 2005年5月11日 WarcraftMovies に投稿。公式フォーラムにも「批評をくれ」と書き込み
- 2005年11月16日 米クイズ番組『Jeopardy!』に出題される(公開から半年で一般常識扱い)
- 2005年11月19日 YouTubeに初アップロード
- 2006年8月6日 2本目のYouTubeアップ。ここから本格的に伸び始める
- 2006年10月25日 WoWのトレーディングカードゲームにカード化
- 2008年10月14日 WoW本編のパッチ3.0.2でゲーム内実績として実装
- 2012年5月 YouTube版が3,060万再生に到達
- 2014年3月 『ハースストーン』が正式リリース。レジェンダリーカードとしてクラシックセットに収録(ベータ期から実装済み)
- 2022年3月 ハースストーンの「傭兵団」モードにも実装
- 2024年 『オーバーウォッチ2』とのコラボでトールビョーンにリロイ関連のボイス
特徴
自分の名前をフルネームで叫んでから突っ込むのが、このミームの見た目上の中心です。海外では突撃前に「LEEROY JENKINS!」と叫ぶこと自体がお約束になり、ゲームに限らずスポーツやライブの入場でも使われます。
チキンも同じくらい引用されます。全滅の責任を問われて「少なくとも俺にはチキンがある」と返す構図が便利すぎて、大失敗したあとに残ったささやかな利益を挙げる言い回しとして独立しました。日本語だと「まあ飯は食えたし」くらいのポジションです。
ゲーム側の扱いも独特です。Blizzardはこのネタを潰さず取り込みました。2008年のパッチで追加された実績「Leeeeeeeeeeeeeroy!」は、まさに全滅の原因になったルーカリーの雛50体を15秒以内に倒すという内容で、達成すると称号「Jenkins」が付きます(Wowhead)。動画で負けた相手を、今度は制限時間内に殲滅しろという設計です。
サジェストで一番引かれているのは ハースストーン のカードでしょう。レジェンダリー・ミニオン「リロイ・ジェンキンス」は突撃(Charge)持ちで、出すと相手に1/1のドラゴンの雛を2体プレゼントするという効果を持ちます。動画で雛に潰された史実がそのままデメリットになっている、手の込んだ再現です。もとは4マナでしたが、盤面に他のカードを必要とせず1ターンで相手を倒しきる戦略が成立してしまうという理由で、のちのバランス調整で5マナに引き上げられました(PC Gamer)。カードゲームのプレイヤーには、ミームより先にナーフされたカードとして記憶されている面もあります。
公式がネタを引き受け続けた結果、寿命も異常に長くなりました。2025年5月には公開20周年で海外ゲームメディアが一斉に振り返り記事を出し、Blizzardの公式アカウントも「20 years of fearless memorability」と祝っています(PC Gamer)。ファンが勝手にやったことを運営が公式に迎え入れるという流れは、ファンの作ったMMOに本家がサーバー用PCを寄贈した件とも通じるところがあります。
演じた本人の Ben Schulz は、動画のあと「Leeroy Jenkins Entertainment」という会社を立ち上げたとされますが、現在この会社は残っていません。広告出演の話は断って学業を優先し、WoW自体もやめたとされます。イベントに本人として登壇するなど、ネタを本人公認で受け入れてきた人でもあります。なお現在の職業については情報源によって記述が食い違っており、確定的な記録はありません。
流行った理由としてよく挙がるのは3点です。作戦会議というオタク的な儀式を当事者自身が笑った自虐だったこと、YouTube以前から広まった数少ないバイラル動画だったこと、そして権利者であるBlizzardがネタを取り上げずに公式化したこと。英語版の詳しい経緯はWikipediaにまとまっています。
使い方・例文
- 「作戦説明の途中でリロイした味方がいる」
- 「開幕3秒で単騎凸、リロイ・ジェンキンスかよ」
- 「準備ゼロで面接受けに行ったの、我ながらリロイだった」
- 「全部落としたけど飯はうまかった。少なくとも俺にはチキンがある」
ゲーム外でも、段取りを飛ばして先に動いてしまった人を指して使えます。責める文脈より、やらかしを笑う文脈のほうが自然です。
関連する言葉
1本の対戦動画がそのまま語になったという意味では、2008年のスマブラ大会から生まれたウォンボコンボと同じ型です。ネット最古級の海外ミームという括りならリックロールが同世代にあたります。難所に無策で突っ込む話なので無理ゲーともよく並びますし、カード調整の話をするならナーフが前提知識になります。こうした古い海外ミームが日本の遊びに落とし込まれた例としては、ネットミームをかるたにした「ミームかるた」も面白いところです。