動画の「ドパガキ用」にツッコミが7万いいね、元祖「忙しい人向け」は2007年のニコニコ動画
ここ最近、動画の見出しに「ドパガキ用」と書かれているのを見かけるようになった。倍速にした版だったり、本編の前に置くハイライトだったり、丸ごとショートにまとめた版だったり。要は「全部見るのがしんどい人はこっち」という意味で使われている。
そこに真正面からツッコミが入った。
発端は「ドパガキ用ってなんだよ」の一言
投稿したのは暁のそよ風(@akakazegroovy)さん。9月1日16時13分の投稿で、翌2日の朝までにいいねは71,094、返信は63件まで伸びた。2日未明にはYahoo!リアルタイム検索の急上昇にも「忙しい人」が入っていた。
ラベルの片方にある「ドパガキ」は、ドーパミンとガキをくっつけた造語だ。強い刺激に慣れきって集中が続かない状態を、自嘲や軽い煽りとして使う。2024年末ごろからXで広まった言い方で、アドガキやブレインロットあたりと同じ棚に置かれている。そこから派生して、刺激を詰め込んだ短い版の動画に「ドパガキ用」と貼られるようになった、という流れになる。
「忙しい人向け」は2007年のニコニコ動画から
一方の「忙しい人向け」は、そうとう歴史が長い。ニコニコ大百科の解説によると、元の曲や作品の雰囲気とリズムをある程度は保ったまま、一部を切り出してつなぎ合わせた動画のことを指す。巻き戻すようなつなぎ方はせず、飛ばし飛ばしで進むのが作法だ。
初出は2007年4月21日、Damedaaa氏が投稿した「忙しい人のためのAitsu koso ga Tennis no Oujisama」とされている。この動画自体はすでに削除済み。同じ年の8月には別の作品で再ブレイクし、11月には薄幸Pが1か月で37作を公開して話題になった。
短縮の度合いでタイトルの言い方も変わる。「死ぬほど忙しい人のための〜」を名乗るなら、一般的な楽曲で45秒未満、10分を超える作品なら2分未満というのがひとつの目安になっている。タイトルに「忙しい人のための」を含む動画は、ニコニコ動画の検索APIで数えると現在10,607件あった。18年かけて1万本を超えたわけで、ラベルというよりジャンルだ。
最多再生は「粉雪」の668万回
その中で一番再生されているのが、2007年11月22日投稿の「忙しい人のための『粉雪』」。再生数は668万回を超えていて、長さは1分12秒しかない。
2位は「忙しい人のための 「ドラえもんのうた」」で479万、3位が「忙しい人のための『この木なんの木』」で294万。少し下ると「忙しい人のためのラジオ体操第一」が245万、「忙しい人のためのめざせポケモンマスター」が195万と続く。誰でも知っている曲を1分ちょっとに畳んで、サビだけが連打される作りになっている。時間の節約というより、聴きどころを詰めた替え歌に近い。
「同じだろ」と「別物だろ」で割れた
引用ポストや周辺の投稿では、両方の言い方をどう住み分けるかの整理が始まった。
「『忙しい人向け』は短縮を表し、『ドパガキ用』は過剰装飾を表すのが個人的には良いのかなと思う。」 「忙しい人用はギャグ路線だけど、ドパガキ用は倍速圧縮だもの」 「忙しい人向けとドパガキ用は使い所がそもそも違うのだ」
言われてみれば、ニコニコの忙しい人向けは元の曲を刻んで笑いに変える二次創作で、作り手の手数がかなり入っている。今の「ドパガキ用」は本編をそのまま速くしたり切り出したりするものが中心で、目的は時短と離脱防止のほうにある。この線引きなら確かに別物だ。
一方で、元の投稿に同意しつつ、呼び名が置き換わっていくのを寂しがる側もいた。「最近忙しい人向け用だろうなってのがドパガキ用ってなってて悲しい」という声だ。指しているものが多少ずれていても、日常で口に出す呼び方はどちらか片方に寄っていく。
同じものの言い換えなのか、別ジャンルなのか。この記事では答えを出さないでおくので、自分の感覚で決めてほしい。ひとつ確かなのは、短くする理由の書き方が変わったことで、2007年は「時間がないから」だったのが、2026年は「刺激が足りないから」になっている。ちなみにニコニコ側では、コメントが流れる読み方の「ニコニコ漫画形式」が2027年1月下旬で閲覧終了になると発表されたばかり。18年もつ型もあれば、畳まれる型もある。