ゲリラ豪雨の浸水対策、水のうはゴミ袋2枚と水20リットルで作れる。効く置き場所は玄関より室内
今日の東京は、板橋区付近で1時間に120ミリ以上という降り方をして、駅の階段が滝になり、幹線道路で車が止まりました。ああいう雨は年々増えています。
気象庁の日本の気候変動2025によると、1時間に50ミリ以上の雨の年間発生回数は、アメダス1300地点あたりの換算で1976年からの10年間が約226回、直近10年(2015〜2024年)が約334回。約1.5倍です。80ミリ以上にいたっては約14回から約24回で、約1.7倍。強い雨ほど増え方が大きいというのが、統計に出ている傾向です。
避難の話は自治体がしてくれるので、ここでは家でできる手当てのほうを、実際にやる順番で書きます。
水のうはゴミ袋2枚と水20リットルでできる
土のうを配っている区もありますが、砂と袋を取りに行っている時間がないときは、ゴミ袋で作れます。これが「簡易水のう」です。
ポイントは水を入れすぎないことです。45リットルの袋いっぱいにすると45キロになって動かせなくなるうえ、袋が破れます。半分の20リットルなら、成人が両手で抱えて数メートル運べる重さに収まります。
段ボールとの併用は各区が推している方法で、水のうを箱に詰めると壁のように積めます。玄関前に並べるならこの形が扱いやすいです。
効く置き場所は、玄関より先に室内の排水口
ここがいちばん誤解されているところだと思います。豪雨のときに家へ水が入ってくる経路は、玄関からとは限りません。下水道が満杯になると、家の排水管を逆にのぼってきます。
なので水のうを最初に置くべきは、トイレの便器の中、浴室の排水口、洗濯機の排水口です。1階と地下、それに半地下の駐車場がある家は特に効きます。
排水口から「ゴボゴボ」と音がしたり、流れが悪くなったりしたら、下水道側が満杯に近いサインです。北九州市上下水道局の逆流防止対策や新潟市の案内でも、この段階で洗濯や入浴の排水を控えるよう呼びかけています。自分の家から流す水を減らすのも、立派な対策です。
今日の東京でも、墨田区でマンホールから水が高く吹き上がる様子がテレビカメラに撮られていました。あれは管の中の水と空気が行き場を失った結果で、家の中で同じことが起きるとトイレから水が上がってきます。
逆流すると、家の中で何が起きるか
対策の話だけだと実感が湧かないので、実際に起きたところを見ておきます。今日の豪雨で床上浸水にあった方が、自宅のトイレの様子を上げていました。便器から水が噴き上がっています。
「ウォシュレット機能が追加された」と笑いに変えていますが、噴いているのは下水道からのぼってきた水です。ここが厄介なところで、床が濡れるだけの話では終わりません。
汚水が入った家の後始末について、厚生労働省は被災した家屋での感染症対策で順番を決めています。洗浄や拭き取りで汚れを十分に落とす、乾かす、そのあとで消毒する。この順番が逆だと消毒剤が効きません。泥が積もっている場所や、下水が逆流した水が混じったおそれのある場所は消毒の対象です。
作業するときの装備も決まっていて、厚手の手袋、底の厚い靴、長袖。肌を出さないのは、水に何が混じっているか分からないからです。作業中にけがをしたら、その場で流水で洗って消毒します。破傷風のリスクがあるので、深い傷なら病院へ行く判断も要ります。
ただし、水のうで止められる水には限度がある
自治体の案内には必ず但し書きが付いています。葛飾区の言い方だと、水のうは「台風接近前や水深の浅い初期の段階で行うもの」であって、「河川が氾濫するような大規模な浸水を防ぐことはできない」。
逆流の勢いが強ければ、水のうごと押し上げられます。膝まで水が来ているのに玄関で積み増しをしているのは、単に危ない時間の使い方です。水のうは「降り始めの30分を稼ぐ道具」くらいに考えておくのが実態に合っています。
水は貯めておくべきか。飲む水と使う水は分けて考える
「豪雨の前に水を貯めるべきか」という質問は、2つの話が混ざりがちです。
ひとつは飲料の備蓄。これは豪雨に限らず常に必要なもので、目安は1人1日3リットル、最低3日分、できれば1週間分です。4人家族なら3日で36リットル、1週間なら84リットル。ペットボトルの箱が何箱分か想像すると、置き場所から考えることになります。普段飲む水を少し多めに買って、古いものから使って買い足す日常備蓄で足ります。東京都の東京備蓄ナビに家族構成を入れると必要量を出してくれます。
もうひとつは生活用水です。断水したときにトイレを流したり体を拭いたりする水で、風呂に残し湯をしておくのが定番の方法。ただし豪雨の場面では、この残し湯には別の使い道があります。水のうの材料としてその場で使えます。わざわざ蛇口から20リットル汲むより早い。
注意点として、下水道が逆流しかけているときに残し湯を一気に流すのは逆効果です。小さい子どもがいる家では、残し湯そのものが溺水の危険になるので、ふたと浴室の施錠はセットで考えてください。
車は水深60センチがいちばん危ない
車の話は数字がはっきりしています。JAFの冠水路走行テストでは、水深30センチならセダンもSUVも時速10キロ・30キロで走り抜けられました。ただし時速30キロだと巻き上げた水がエンジンルームに大量に入ります。水深60センチになるとセダンは時速10キロでも走りきれず、時速30キロではわずか10メートルでエンジンが止まりました。
もっと怖いのは、止まったあとです。水深何センチまでドアは開くのかという別のテストでは、水深60センチでセダンのドアを開けるのに通常の5倍近い力が必要になりました。ミニバンのスライドドアにいたっては、男性の力でも開かなかったケースがあります。
JAFの説明では、車内と車外の水位の差が小さくならないとドアは開きません。だから完全に水没しきったあとのほうが、むしろ開けやすくなります。いちばん出られないのは、その手前の水深60センチ前後という中途半端な状態です。窓が開くうちに開ける、開かないなら脱出用ハンマーで割る。ハンマーはトランクではなく運転席から手が届く場所に置いておく道具です。
そして大前提として、アンダーパスには入らない。今日も秋葉原駅近くのアンダーパスが通行止めになり、北区では車が動かなくなって運転手が自力で脱出しています。冠水した道路は見た目で深さが分かりません。
そして、水が引いたあとの車にも続きがあります。JAFは台風・大雨時のクルマに関する注意点で、浸水した車のエンジンをいきなりかけないよう呼びかけています。キーが切れていてもバッテリーがつながっていれば電流は流れていて、漏電から車両火災に至ることがあるためです。手順としては、ボンネットを開けて浸水の程度を見て、水に浸っているならバッテリーのマイナス端子を外し、外した端子が接触しないようにしておく。ハイブリッド車と電気自動車は感電の危険があるので触らず、そのままロードサービスか販売店に連絡します。
歩くときは、マンホールの蓋が外れている前提で
冠水した道路を歩かざるを得ないときは、傘や棒で足元を突いて進みます。水が噴き出した場所では蓋が押し上げられてずれていることがあり、開いた穴は濁った水面からは見えません。側溝のふたも同じように浮いて外れます。足元は見えないものと考えて、一歩ずつ突いて確かめるしかありません。
履くのは長靴よりひも付きの運動靴です。長靴は水が入った時点で重りになります。膝の高さを超えたら歩くのをやめて、高いところで待つほうが安全です。
買っておくなら、かさばらないものから
砂を積んだ土のうを家に常備するのは現実的ではないので、水を吸って膨らむタイプの土のうが手軽です。乾いた状態では薄い座布団くらいで、水に浸けると数分で20キロ近くまで膨らみます(PR)。
玄関前に並べるほか、地下駐車場の入口や、勝手口の段差に置いておく使い方ができます。使ったあとは自治体のルールに沿って捨てられるものが多いです。ただ、これも水のうと同じで、止められるのは浅い水だけという前提は変わりません。
今夜のうちにできること
雨雲レーダーを見て「これは来る」と分かってから水のうを作り始めても、間に合う量はたかが知れています。袋と段ボールを1か所にまとめておくだけで、次の豪雨のときにやれることがひとつ増えます。