ハリー・ポッターのニンバス2000は誰が買った? マクゴナガル先生の動機で読み方が割れた
『ハリー・ポッターと賢者の石』で、1年生のハリーがグリフィンドールのシーカーに選ばれ、最新型の箒ニンバス2000を手に入れる場面。あの箒は誰が買ったのか、そしてなぜ買ったのか。9月2日の夕方にXの @grey_butler さんが投げた読み替えが、翌日には63,748いいねまで伸びていた。
よく語られるのは、親のいないハリーを不憫に思って贈ったという同情説のほうだ。@grey_butler さんはその話を前置きに置いたうえで、後半をこう続けている。「最新の箒を送りつけてクィディッチから逃げられないように囲い込むクィディッチ狂の行動の方が納得感ある」。同じ場面に真逆の動機を当ててきた形になる。
箒を買ったのはマクゴナガル先生本人
まず前提の確認から。英語版Wikipediaのミネルバ・マクゴナガルの項では、ハリーがクィディッチのチームに入る資格を得たあと、マクゴナガルが彼にニンバス2000を買い与えた、と書かれている。誰かからの寄付でも学校の備品でもなく、本人が買っている。
その立場は、変身術の教授でグリフィンドールの寮監。生徒の親代わりのような役どころであると同時に、自分の寮のクィディッチチームの成績を背負う人でもある。
さらに引っかかるのが渡し方だ。魔法道具をまとめた項目のほうには、この箒はハリーをグリフィンドールのシーカーに選んだマクゴナガルを通じて、ダンブルドアの特別な許可のもとでハリーに与えられた、と記されている。校長の同意を取り付けたうえで箒を渡している。つまり、その場の思いつきで買ってきて渡した、という手続きではない。
見つけてから箒が届くまでの動きが速い
順番も見ておきたい。同じくWikipediaのマクゴナガルの項によると、ハリーの箒さばきに気づいたマクゴナガルは、彼をグリフィンドールのクィディッチチームのキャプテン、オリバー・ウッドに引き合わせている。
身寄りのない生徒を気にかけて最初に取る行動が、クィディッチのキャプテンへの紹介。同情説だけで読むと、ここの説明が少しつきにくい。そのあとシーカーに選び、校長の許可を取り、最新型の箒を用意する、と一連の動きに迷いがない。
もちろん、生徒の才能に気づいた教師が居場所を作ってやった、という読み方もできる。原作でマクゴナガルの内心が説明されているわけではないので、ここは読者側の解釈で分かれるところだ。
「箒でシーカーの席を確保する」前例はシリーズの中にある
「囲い込み説」を面白くしているのは、同じシリーズに露骨な前例が置かれていることだと思う。
ドラコ・マルフォイが持っているニンバス2001は、父親のルシウス・マルフォイがスリザリンのチーム全員に贈ったもので、その目的はドラコをシーカーの座に就かせるための賄賂だった、とWikipediaの魔法道具の項目にはっきり書かれている。箒を配って人事を動かすという発想が、作中に実在する。
型番でいえばニンバス2000の1つ上のモデルが、そのまま席と引き換えの箒として登場するわけだ。だから箒で囲い込むという読み方は、少なくとも作品世界の前例とは噛み合う。もちろんルシウスのほうは賄賂だと明記されていて、マクゴナガルの側は動機が書かれていない。そこは同じ扱いにできない。
ハリーは箒代を1クヌートも払っていない
反応の中には、動機ではなくハリーの財布に目を向けたものもあった。
「ニンバス2000もファイアボルトもマクゴナガル先生とシリウスがハリーに与えたヤツやから箒に関してはハリーは1クヌートも使ってないのでは」
言われてみるとそのとおりで、2本目のファイアボルトも名付け親のシリウス・ブラックからのクリスマスプレゼントだ。作中でいちばん高そうな買い物を、ハリーは2回とも他人に出してもらっている。
もうひとつ、どっちの説かで盛り上がる空気そのものをネタにした投稿もあった。
「マクゴナガルが箒をやったのはハリーの境遇への配慮だ、いやクィディッチ狂いにゃんこの横暴だと色々な推測がありますがご本人に聞いてみましょう。ニンバス2000さんどうですか?」
本人に聞くという発想はなかった。ちなみにこの投稿、箒は黙秘したそうです。
結局どっちなのかは原作に書いていない
同情だったのか、シーカーが欲しかったのか、たぶん両方だったのか。マクゴナガルが胸の内を明かす場面は原作にないので、ここは各自の読み方で分かれたままになる。ただ、箒を買い与えて校長の許可まで取りに行った教師がいた、という事実は動かない。
久しぶりに『賢者の石』を開いて、あの場面の順番を確かめてみてほしい。グッズのほうで追いかけたい人には、一番くじのハリー・ポッター第6弾と、クリスピー・クリームの組分け帽子ドーナツの話も置いてある。