日本の花火が世界一“まん丸”に開く理由。玉の中に星を球状に詰める職人技と、途中で色が変わるカラクリ
夏の夜空に、ドン、と大きくまん丸に開く打ち上げ花火。毎年当たり前のように見上げていますが、じつはあの「どこから見ても真ん丸」という開き方、日本の花火ならではの特徴で、世界的にも高く評価される高度な職人技の結晶なのです。なぜあんなにきれいな球形になるのか、タネを明かしていきます。
タネ明かし①:玉の中に「星」を球状に詰めてある
打ち上げ花火の光の正体は、「星(ほし)」と呼ばれる火薬の粒です。日本の伝統的な「割物(わりもの)」と呼ばれる花火では、この星を、ボール状の花火玉の内側に沿って、球状(同心円状)にびっしり並べて詰めてあります。
玉が上空の狙った高さまで上がると、中心にある「割薬(わりやく)」が爆発。その勢いで、球状に並んだ星が全方向へ均等に飛ばされます。中心から同じ距離だけ飛ぶので、どの方向にも同じ大きさ。つまり まん丸の球に開くのです。真上から見ても、真横から見ても丸く見えるのは、玉の中身がそもそも球だから。花火師さんは、地上で組み立てた小さな球体を、そっくりそのまま夜空に“拡大コピー”しているようなものなのです。
なぜ日本は「球」にこだわったのか
じつはこの球へのこだわりには、日本ならではの事情があります。日本の花火大会は、古くから川べりで開かれることが多く、大勢の人が四方から見上げる庶民の娯楽として発展しました。だからこそ、どの角度から見ても同じ美しい形。すなわち、上下左右どこから見ても崩れない「球」が理想とされたのです。まさに、みんなで囲んで愛でる花のような存在でした。
タネ明かし②:色が変わるのは、星が“多層構造”だから
日本の花火のもう一つのすごさが、開いたあとに色が変わること。緑から赤へ、青から金色へ一発の中で表情が移ろっていきます。これも星の作りにヒミツがあります。
一粒の星は、芯となる粒に、色の異なる火薬を薄く塗っては乾かし、を何度も繰り返した“玉ねぎのような多層構造”になっています。職人は火薬を 0.5ミリほど塗っては乾かす作業を延々と重ね、報道によれば 2センチほどの星を作るのに、なんと約40日もかけることもあるとか。空に開いた星が外側の層から順に燃えていくことで、色が次々と切り替わって見えるわけです。海外の花火は火薬が単色のものが多く、こうした繊細な色変化は少ないとされます。
海外の花火と、どう違う?
海外にももちろん華やかな花火はありますが、玉が円筒状のものが多く、柳のようにだらりと垂れたり、形が不揃いに散ったりする傾向があるといわれます。それに対して日本は、「まん丸」×「色変化」という2つの持ち味で際立っている、というわけです。実際の日本の大花火が、いかにきれいな球形に開くか、こちらの映像(長岡まつり大花火大会)で確かめてみてください。
見えない場所への、こだわりの結晶
あの一瞬のまん丸を生むために、花火師は数か月をかけて準備します。星の大きさや重さの均一性、色の重ね方、玉を包む紙(玉皮)の厚みの微調整。観客からは絶対に見えない部分の精度が、少しでも狂えば、丸は歪み、色はにごってしまう。「見えないところで妥協しない」という職人の姿勢そのものが、夜空の真ん丸に結晶しているのです。
今年の夏、花火を見上げるときは、あの光の一粒一粒が、40日かけて塗り重ねられた小さな“作品”かもしれない。そう思うと、いつものドンッがちょっと違って見えてくるはずです。
※製造工程・日数は花火メーカーや玉のサイズにより異なります。各社・各報道の情報にもとづく一例です。