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「#関ヶ原2026」が今年も開戦、ニッセンは松尾山にパジャマを届けた

石田三成の陣跡に立つ大一大万大吉の旗と、その向こうに見える松尾山
画像: 石田三成の陣跡から見た松尾山(CC BY 3.0 / Hikomi Moneru, via Wikimedia Commons)。当サイトで縮小・切り抜きをしています

9月15日は「関ケ原合戦の日」。1600年、慶長5年のこの日に東軍と西軍がぶつかった、あの関ケ原である。426年たった今年も、Xでは朝から「#関ヶ原2026」のタグが動いている。

で、そのタグの中に通販のニッセンが混ざっていた。「京の商人枠で参戦しております」と言って、松尾山にパジャマを届けたという報告だ。

投稿は9月15日の朝9時1分。2時間ちょっとで21万回以上表示され、リポストは620件、いいねは1,400件を超えた。意味が分かるとじわじわ来るタイプの投稿なので、順に説明していく。

タグを配っているのは関ケ原町の公式サイト

このタグ、参加者が勝手に盛り上がっているだけではない。関ケ原町の観光公式サイト「関ケ原観光ガイド」のイベントページに、こう書いてある。

9月15日「関ケ原合戦の日」に合わせて、今年は9月12日(土)~9月23日(水・祝)までイベントを開催!ぜひ関ケ原町にお越しください!SNSで発信する際には「#関ケ原2026」または「#関ヶ原2026」をつけて発信してください!

町の側が「このタグで発信してください」と名指しで案内している。しかも表記を2つ併記しているのが親切で、大きい「ケ」の「関ケ原」と、小さい「ヶ」の「関ヶ原」、どちらでもいいことになっている。地名としての正式表記は大きい「ケ」のほうなのだが、Xで検索してみると小さい「ヶ」の投稿もかなり多い。この日ばかりは両方追わないと全体が見えない。

そして現地でも、この日はちゃんと動いている。ライターのayanさん(@warashibe)が朝の関ケ原を撮っていた。

町内に法螺貝が鳴り、丸山からのろしが上がり、関ケ原鉄砲隊の演武が始まる。426年前の朝と同じ時間帯に、同じ場所で音を出しているわけだ。タグの投稿を見ているだけだと祭りっぽさが先に立つが、足元にはこういう地元の行事がある。

記念館は戦況を時刻つきで実況している

タグの背骨を作っているのが、岐阜県立の岐阜関ケ原古戦場記念館だ。公式アカウントが、合戦の推移を当日の時間軸に沿って実況している。開戦の午前8時はこれ。

井伊・松平隊が西軍の宇喜多隊に撃ちかけて開戦。豊臣方ではなく徳川家が先陣を切ることを重視したためだ、という解説が付く。この時点で西軍の島津隊は動かず、小早川隊にも不穏な気配がある、というところまで午前8時の投稿で触れている。

続いて午前10時、ここで話がこの記事の本題につながる。

ここで松尾山が出てくる。松尾山に布陣していたのは小早川秀秋で、東軍の黒田長政から調略を受けつつ、西軍が善戦しているのを見てどちらに付くか決めきれずにいた。しびれを切らした徳川家康が本陣を前に出し、約3万の軍勢が迫ってくる。秀秋が焦る。

その後どうなったかは歴史の授業でやったとおりで、秀秋は西軍を裏切って大谷吉継の陣に突っ込み、そこから西軍が崩れて日が暮れる前に勝負がついた。つまり松尾山は「寝返りの山」として名前が残っている。

ニッセンが松尾山にパジャマを届けた理由

ここまで来ると、冒頭のニッセンの投稿が効いてくる。

届け先は松尾山。松尾山にいるのは、この日に寝返る小早川秀秋。そこへ「開戦前の疲れを癒すパジャマ」を送りつけている。寝返りの舞台に、寝るための服を、それも開戦前に届け済み。何も悪口を言わずに「あなた今日寝返りますよね」と全部伝えきっているのがうまい。

「京の商人枠」という名乗りも適当ではなくて、ニッセンは本社が京都市南区にある。創業は1970年、呉服のカタログ販売から始まった会社だ。関ケ原から京都まではJRで1時間ほど。物流で戦に関わる商人という立ち位置は、地理的にもちゃんと成立している。

こういう「その日だけ全員が世界観に乗る」タイプの企画は、自治体や企業のSNSがたまに当てる型でもある。茨城県が群馬のヒット企画を知事公認でマネして観光パスポートを無料交付する話も同じ匂いがするし、武将もので言えば刀剣男士がインストラクターを務めるFit Boxingの新作も来年出る。歴史ネタは擦られ方の幅が広い。

リプ欄では普通に接客が始まっていた

ネタ投稿として伸びたあと、リプ欄で起きたことが個人的にいちばん良かった。

パジャマの写真を見た人から「これ、女性も着れます? 凄く欲しい…」という質問が飛ぶ。返ってきたニッセンの答えがこれ。

「ボタンのあわせは逆になりますが、サイズがもしあえば問題なく着用いただけます。よろしければご覧くださいませ!もしご不明な点があれば遠慮なくお声がけくださいね。」

ボタンの合わせが左右逆になるという注意まで添えて、商品ページを貼っている。合戦のノリで投稿しておきながら、質問には素の通販の顔で答えるという切り替えだ。

そして貼られた商品の名前が、「【パジャマ】肌側綿100%キルト前開き長袖パジャマ(消臭テープ付き)【大きいサイズ有】寝返りしやすい」。寝具の世界で言う「寝返り」は、寝ている間に体の向きを変えることだ。松尾山に届けた品の商品名に、最初から「寝返りしやすい」と書いてある。狙って選んだのか在庫の都合なのかは分からないが、ネタが最後まで商売とつながっている。

相馬野馬追執行委員会の公式アカウントからは「今日このニュースはギルティすぎる笑」というリプが付いて、こちらも50いいね以上を集めていた。武者行列を運営している側から見ても刺さる投稿だったらしい。

関ケ原町のイベント期間は9月23日まで。松尾山ではARで山城を見られる企画も走っているので、タグを追って「そんな祭りがあるのか」となった人は、寝返りの現場まで足を延ばしてみるのもいい。

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