ノーベル化学賞の「硤合反応」、読み方は“そあいはんのう”
「硤合反応」の読み方は「そあいはんのう」です。2026年のノーベル化学賞は、この反応を見つけた硤合憲三さんに決まりました。
発表は日本時間の10月7日夜。速報で名前を見て、まず読み方で止まった人も多かったようです。
誰が何で受賞したのか
スウェーデン王立科学アカデミーが選んだのは2人です。フランスのパリ南大学のアンリ・カガンさんと、東京理科大学の硤合憲三さん。
受賞理由は英語で “for the discovery of non-linear effects and autocatalysis in asymmetric organic synthesis”。日本語にすると、不斉有機合成における非線形効果と自己触媒の発見、という意味になります。
賞金は1,200万スウェーデン・クローナで、2人で半分ずつ分けます。
硤合さんは1950年に広島県で生まれ、東京大学で理学博士を取りました。米国ノースカロライナ大学の博士研究員を経て東京理科大学の教授になり、いまは同大学の名誉教授です。2012年には紫綬褒章も受けています。
東京理科大学のお知らせも当日中に出ていて、受賞の一報をそのまま伝えています。
生き物は「片方の手」しか使わない
この賞のテーマは、ざっくり言うと「右手と左手」の話です。
アミノ酸のように、鏡に映すと重ならない2種類の形を持つ分子があります。右手と左手のような関係なので、化学では「キラル」と呼びます。
ふしぎなのは、生き物の体に入っているアミノ酸がほぼ片方だけだという点です。ところが試験管で普通に作ると、両方が半分ずつできてしまう。
生命の化学が片方にそろっている状態は「ホモキラリティ」と呼ばれます。どうやってそこにたどり着いたのかは、100年以上の謎でした。
薬づくりにも直結します。体に効くのは片方の形だけ、ということがあるので、狙った方だけを作れるかどうかが大事になります。
硤合反応のしくみ
最初の一歩を踏んだのはカガンさんです。1986年に、片方の形をそれまで考えられていたより多く作る方法を見つけました。
次に進んだのが硤合さんでした。1995年の論文で、生成物そのものが触媒になる反応を報告しています。
材料はピリミジン-5-カルバルデヒドという分子と、ジイソプロピル亜鉛です。反応してできたアルコールが、次の反応で「同じ向きの自分」を作る触媒として働きます。
つまり最初にほんの少しだけ片方が多ければ、その差がどんどん広がっていく。上の図はその一例で、片寄りが5%しかない触媒から、39%片寄った生成物ができています。
そして2003年、2種類の鏡像のうち片方だけができる反応を発表しました。ノーベル賞の発表文には、生命そのものを除けば誰も成し遂げていなかった、とまで書かれています。
選考委員長のハイナー・リンケさんは、2人の反応を「spectacular(目を見張る)」と表現しました。
「硤合」はなぜ読めないのか
読めなかったのは、たぶんあなただけではありません。発表のあと、Xにはこんな声が並びました。
- 「初見で硤合憲三先生のお名前が読めなかったのは内緒」
- 「硤合(そあい)て読むのね。難しい」
- 「そあいけんそう(濁らない)」
読めないのには理由があります。「硤」は音読みが「コウ」「ギョウ」の12画の字で、そもそも「そ」とは読みません。
さらにこの字は、日本の文字コードの基本であるJIS X 0208の第1・第2水準に入っていません。後から作られた拡張規格のJIS X 0213で、ようやく「第4水準」に入った字です。
名字としても珍しく、名字由来netによると「硤合」さんは全国でおよそ30人、順位は54,254位です。
そのうち広島県におよそ20人、埼玉県におよそ10人。硤合さん本人も広島県の生まれなので、名字の分布とも一致しています。
読み方を覚えておくと得をする
この秋はしばらく、ニュースや授業で「硤合反応」の名前を見かけるはずです。読み方は「そあい」、中身は鏡像の片方だけが自分を増やす反応。この2つを押さえておけば話についていけます。
受賞理由の全文はノーベル賞公式のプレスリリースで、反応の詳しい中身はWikipediaの「硤合反応」で読めます。
友達が「なんて読むの?」と言っていたら、教えてあげてください。