タコの吸盤が不揃いならオス、そろっていればメス。11万いいねの見分け方を大日本水産会のページで確かめた
タコの吸盤を見ればオスかメスかわかる、という豆知識が9月9日にXで伸びた。投稿したのは @B_O_R_O_vrc(ぼろ)さん。文面はこれだけだ。
「タコって、オス同士で争ったりするから吸盤が不揃いになるんですよ メスの吸盤はきれいに並ぶんです はい」。9月9日の午後3時すぎの投稿で、翌日までに11万9000いいねが付いた。言われてみればスーパーのタコを見ながら確かめられる話で、そのぶん「本当?」と思った人も多かったらしい。
大日本水産会のページにも、ほぼ同じ説明が載っている
出どころを探すと、一般社団法人 大日本水産会の魚食普及推進センターが、この話だけで1ページ使って解説していた。見出しからして「タコの性別を見分けたい!オスは吸盤はふぞろいで、メスは規則正しい?」だ。
オス側の説明はこう書かれている。「この写真だとチョットわかりにくいですが、オスは大きい吸盤と小さい吸盤の差が大きいと言われることがあります。」。そしてメス側は「一方でメスは規則正しく同じ大きさの吸盤が並んでいると言われます。」。つまり、吸盤の大きさがバラつくのがオスで、粒がそろって並ぶのがメス、という向きでXの投稿と一致している。
理由の説明も同じ方向だった。同センターは「オスは縄張り争いをすることが多く、その際腕に力をより強く込められるように吸盤が大きくなっている個体が多いと考えられます」と書いている。ケンカで腕に力を込めるほうが吸盤が育つ、という筋書きだ。
ただし、出典のほうは言い切っていない
ここが面白いところで、同センターは「〜です」と断定せず、わざわざ「言われることがあります」「言われます」で受けている。理由もページ内に書いてある。
「種類はもちろん、個体差もあり、最終的にはお腹を開いて卵があるか等で確認しないとわからない事も多いのですが、オスは縄張り争いをすることが多く、その際腕に力をより強く込められるように吸盤が大きくなっている個体が多いと考えられます」。タコと一口に言ってもマダコやミズダコなど種類があるし、同じ種類でも個体差がある。腹を開けば一発でわかるが、売り場でそれはできない。だから傾向として語られている、というのが実際のところらしい。
見た目で雌雄を当てるのが難しい生き物は他にもいて、美ら海水族館では色や形の違う2タイプの深海魚がいて別種か個体差かわからず、キイハナダイのオスとメスだったと判明するまで長くかかっている。逆に毛色でほぼ性別が読めるのが猫で、オスの三毛猫が3万匹に1匹と言われるのはそのためだ。タコの吸盤はその中間くらいの目安だと思っておくのがよさそうだ。
吸盤が大きいと得、というわけでもないらしい
同じページには、もう一段踏み込んだ話も書かれていた。大きい吸盤は強そうに見えるが、いいことばかりではないという。
「例えば大きい吸盤をケガした場合は、一気に生き残りやメス獲得に不利になります。そのような理由から、吸盤が大きくならないメスのような平均タイプの個体もいると考えると、吸盤が大きくなる個体と、雌のように規則正しい個体がいるという事も納得できるのではないでしょうか?」
デカくすれば強いが、その1個をケガした瞬間に大損する。だからオスの中にも、メスみたいに粒のそろった無難な吸盤で生きている個体がいる、という説明だ。売り場で「吸盤がきれいに並んでるからメスだな」と思ったタコが、実はケガを避けたタイプのオスかもしれない。目安が目安どまりになるのは、そういう事情もある。
ついでに、オスとメスで食感は変わるのか
気になるのは味のほうだと思う。同センターは食感についても触れていて、「力が強いと筋肉が強いので雄は硬め、雌は柔らかめと言われることがあります。」と書いている。ここでもやっぱり「言われることがあります」で、しかも直後に「これは人によって意見が分かれるところです」と但し書きまで付いている。
そのうえで、味を決める要素は雌雄だけではないと続く。メスは卵を持つ時期に栄養を取られると考えるとその時期はオスメスで味が変わりそうだが、むしろ時期による味の差のほうが大きいとも考えられるし、産地が違えば餌や潮の速さといった生息環境も変わる、という書き方をしている。オスを引いたから硬い、と決めつけるほど単純ではないわけだ。
見分け方は知られていても、理由までは知られていなかった
Xの反応で目についたのは、吸盤の並びが雌雄で違うこと自体は前から知っていた、という人だ。「タコのオスメスで吸盤の並びとかが変わるのは知ってたんだけど、理由が「争ったりすることによる影響」だとは初めて知った」と書いている人もいて、見分け方だけが先に広まって、理由までは共有されていなかったらしい。
ちなみに、争えば吸盤が大きくなるという説明なら、よく争ったメスはどうなるのかという疑問は残る。同センターのページにその答えは書かれていない。
次にゆでダコのパックを手に取ったら、値段より先に吸盤の並びを見てみてほしい。粒がきれいにそろっているか、大小がバラバラか。当たっているかどうかは腹を開けるまでわからないけれど、買い物のあいだだけは楽しめる。