「距離ガバ」とは?意味と何kmから距離ガバなのか、バイク・車の“距離ガバ勢”の由来を解説
「ちょっとそこまで」と言って出ていった人が、夜には隣の県どころか3つ先の県にいる。バイクや車の界隈でその距離感を指すのが 「距離ガバ」 です。読みは「キョリガバ」で、距離感がガバガバの略になります。
「距離ガバ」とは?
距離感がガバガバなこと、またはそういう感覚の持ち主を指す言葉です(ニコニコ大百科)。数百kmの移動が苦にならず、100kmを「近い」と言う。移動が目的地に着くための手段ではなく、走ること自体が目的になっているのが特徴とされます。
大百科が挙げている行動でおもしろいのが、同じ道や一度行った場所をもう一度たどりたくないという理由から、近い用事でも時間に余裕があれば大きく迂回して向かうというもの。近い遠いの感覚が緩いというより、そもそも走る距離を減らす気がないわけです。
人に対して使うときは「距離ガバ勢」、集団を指すときは「距離ガバ界隈」という形もよく見ます。他人に貼るツッコミとしても、自分から名乗る自己申告としても使われます。
何kmから距離ガバなのか
「距離ガバ 基準」で検索する人がいちばん知りたいのはここだと思うのですが、答えは上のとおりです(fcl. カーペディア)。入会審査も認定距離もありません。
ただ、この記事には fcl. が自社インスタグラムのフォロワー約150人に取った独自アンケートも載っていて、こちらは数字で読めます。「どこまでを近いと感じるか」への回答は100km以内が25.7%で最多、次いで30km以内が22.9%、50km以内が20.1%。「遠い場所なんて存在しない」を選んだ人も10.4%いました。1日で走った最長距離を聞いた質問では600〜800kmが最多で、1,200〜1,800kmと答えた人も複数いたそうです。
もうひとつ参考になるのが、当人たちが出している自己申告のスケールです。2020年7月27日に @soushi7006 さんが投稿していた目安がこれ。
- 〜100km … めちゃ近い
- 〜200km … 近い
- 〜700km … わりと近い
- 700km〜 … 遠い
700kmでようやく「遠い」に届く配分ですが、本人が「私の1日の過去最長移動距離が700kmのため」と注釈を付けているとおり、自分の最長記録がそのまま「遠い」の線になっています。後述する @pigio3733 さんも「ほぼ休憩なしで800キロ走行した時は感覚麻痺して死んでました」と書いていて、限界の手前までは全部「近い」で処理されるらしい。基準が人それぞれというのは、要するにそういうことなんだと思います。
乗り物によって呼び名が変わる
同じ「移動しすぎ」でも、手段によって割り当てられる言葉が違うのがこのジャンルの決まりごとです。
- 車・バイク … 距離ガバ
- 徒歩 … 伊能忠敬界隈
- 鉄道 … 乗り鉄
ニコニコ大百科の上でも、距離ガバが親記事で、伊能忠敬界隈がその子記事という関係になっています(伊能忠敬界隈)。歩く人のほうが先に有名になった感はありますが、辞典の構造としては距離ガバが上位の概念に置かれています。
元ネタ・由来
ニコニコ大百科は「遅くとも2016年10月ごろから使用されているようだ」としています。根拠として貼られているのは2017年より前の「距離ガバ」を含む投稿を並べたX検索へのリンクだけで、初出の1本も発案者も特定されていません。
流通していた証拠として残っているものだと、2019年8月6日の @AA_UZU さんの投稿があります。「図 距離ガバの作り方」と題した図解で、依存症の解説図のパロディになっているもの。いいねは2,592件付いています。
図の中には「往復400kmは日帰り範囲」といった段階が並んでいて、2019年の時点で語のニュアンスが今とほぼ変わっていないことが分かります。
次の節目が2021年7月30日。@pigio3733 さんが、移動そのものが幸福感につながるという内容がテレビで紹介されたのを受けて、「みろ。距離ガバ達よ。こういうことだそうだ」と投稿しました。いいねは7,891件で、この投稿と翌日までのリプライがTogetterにまとめられ、閲覧は8万6千件を超えました。まとめの後半には上の @AA_UZU さんの図や、さっきの @soushi7006 さんの基準といった過去の投稿も並べられていて、距離ガバ勢の生態がひととおり読める構成になっています。
ニコニコ大百科に項目が立ったのは、それよりだいぶ後の2024年8月13日でした。同じ日の18時49分に子記事の伊能忠敬界隈も作られています。伊能忠敬界隈がXでバズったのが2024年7月末なので、歩く側の流行が、先に存在していた親概念のほうを記事化させた形です。言葉としては距離ガバのほうが8年ほど先輩なのに、辞典デビューは同じ日になりました。
使い方・例文
- 「日帰りで山口まで行ってきた」「距離ガバすぎる」
- 「ツーリング仲間が全員距離ガバだから、集合場所が毎回県外なんだけど」
- 「距離ガバ勢に聞きたいんだけど、300kmって近いほうですか」
- 「同じ道を戻りたくないから遠回りしただけです。距離ガバではない」
自分から名乗るパターンが多いのは伊能忠敬界隈と同じですが、距離ガバのほうは「言われて否定する」というやりとりもよく見ます。ガバガバと言われて素直にうなずける人はそう多くない、ということなんだと思います。
関連する言葉
徒歩版が伊能忠敬界隈、集団を指す語尾が界隈。同じ趣味の中でも本気度が突き抜けている層という意味ではガチ勢と重なりますし、移動そのものが目的になって抜け出せない状態は沼の説明そのままです。
実際の走行距離の話でいうと、日産のキャシュカイ e-POWER が無給油で1,980km走ってギネス世界記録に認定された件は、距離ガバ勢が反応しがちなニュースでした。満タン1回で東京から沖縄あたりまでの直線距離を超える計算になります。商用バンのプロボックスが耐久レースに参戦したときに「社畜ハイパーカー」と盛り上がったのも、日常的に長距離を走る人ほど刺さる話でした。給油まわりだと、セルフ給油の静電気除去シートを触っているかどうかで意見が割れた回もあります。給油の回数が多い人ほど、こういう習慣の差が出ます。
最後に一つだけ。ニコニコ大百科の距離ガバの項目には、長距離運転は集中力が下がって腰や尻も痛くなるので、休憩と十分な睡眠を必ず取るように、という注意書きが本文に書かれています。辞典が心配してくるジャンル、なかなかありません。