ネットの「脳死」は思考停止の意味、脳死周回・脳死パの使い方と医療用語との違い
考える前に、もう体が動いている。良し悪しも判断せず、ただ惰性で動いてしまう。そんな“思考停止”の状態を表すのが、ネットスラングの 「脳死」 です。
「脳死」とは?
ネットスラングの「脳死」は、深く考えず、思考停止のまま反射的・惰性で行動することを指します。「脳死で周回(同じ作業をひたすら繰り返す)」「脳死でいいねした」「脳死で買った」のように、理由を考える間もなく、いつも通り・なんとなくで動いている状態を、軽く雑に表す言葉です。
必ずしも悪い意味だけではなく、「頭を使わずラクにできる」というニュアンスで使われることも。単純作業のゲーム(作業ゲー)を無心で回すようなときに、「これは脳死でいける」と言ったりします。
医療用語の脳死は、脳幹を含む脳全体の機能が戻らない状態を指す言葉で、1980〜90年代の脳死・臓器移植をめぐる議論(1997年に臓器移植法が施行)を通じて一般にも知られるようになりました。ネットのスラングはそこから「頭が働いていない」部分だけを借りた比喩で、医学的な意味とは関係がありません。
ゲームで生まれた派生語
いまの使われ方の中心は、ソーシャルゲームやブラウザゲームです。ニコニコ大百科の「脳死プレイ」の項目(ニコニコ大百科、2017年5月作成)では、戦術を特に考えなくても攻略できる遊び方として説明されていて、そこから次のような言い方が派生しています。
- 脳死プレイ … 本来は頭を使うゲームを、考えるのをやめて遊ぶこと
- 脳死パ(脳死パーティ) … 脳死プレイができるような強い編成。「とりあえずこの脳死パで回る」のように使う
- 脳死ゲー … 脳死プレイが中心になる作品。こちらはたいてい批判の意味を含む
- 脳死周回 … イベントで同じステージを何十周もするとき、最適な手順を固定して同じ操作をくり返すこと
脳死周回は、周回の回数が10周、20周と増えるほど操作を減らしたくなる、という事情から生まれた言葉です。同じステージなら出てくる敵も同じなので、一度最適解を見つけたらあとは同じことをくり返すだけになります。手動で淡々と回すか、オートにして放置するかは人によって分かれます。
いつから使われているか
スラングとしての初出は特定できていません。2021年のYahoo!知恵袋には「俗語としての『脳死』の初出」という質問が立っていて、質問者は2ちゃんねるかライトノベルあたりではないかと推測していますが、確かめられないままでした(知恵袋)。回答では、1973年の雑誌にすでに「決まった事務しかしない総務」を脳死にたとえた記事があったという指摘もありますが、原本は確認できていません。
はっきりしているのは、2017年にはゲーム用語として辞典の項目が立つほど定着していたことと、その後「脳死で買う」「脳死でいいね」のように、ゲーム以外の日常の行動にも広がったことです。
似た言葉との違い
- 思考停止 … 意味は近いものの、議論の場で相手を批判するときに使われることが多い言葉です。脳死は自分の行動に使うことが多く、「脳死でやってる」は自虐や手抜き宣言に近い響きになります
- 作業ゲー … ゲームそのものの性質を指す言葉。脳死は遊んでいる人の状態を指します
- 情報量が多すぎて頭が処理落ちするバグるは、考えようとしてもできない状態。脳死は「あえて考えない」ほうです
使うときの注意
この言葉は死や医療に関わるため、軽い場で使われることを不快に感じる人が一定数います。ゲーム仲間のあいだでは定着していますが、仕事の場や、言葉に敏感な人がいる場では「何も考えずに」「オートで」「流れ作業で」と言い換えておくのが無難です。
使い方・例文
- 「イベント周回、もう脳死でやってる」
- 「脳死で課金してたら結構な額になってた」
- 「難しく考えず、脳死で選んで正解だった」
関連する言葉
イベントを効率よく回すために、たまった回復分を消化する火消しなども、しばしば「脳死で」淡々とこなす作業になりがちです。