「ウォジャック(Wojak)」とは?意味・元ネタ(Feels Guy)と派生ミームを解説
MS ペイントで描いたようなガタガタの線、坊主頭、下がった眉に力のない目。海外の掲示板やSNSで「その気持ち、わかる」と言いたいときに貼られてきたあの顔が 「ウォジャック(Wojak)」 です。名前だけ聞くと誰かの本名っぽいのに、実際は絵の中の人物の名前ですらありません。
「ウォジャック」とは?
ウォジャックは、ペイントソフトで描かれた坊主頭の男性の線画で、落ち込み・後悔・ひとりで抱えるさみしさといった、うまく言葉にしづらい気分を代弁するリアクション画像です。英語圏では 「Feels Guy(フィールズ・ガイ)」 という別名でも通っています。feels は「感じるもの」くらいの意味のスラングで、そのまま「感情の人」。
うまいのは、この絵が具体的な誰かに見えないところです。目鼻立ちが最低限しか描かれていないから、貼られた文脈しだいで意味が変わる。バイト先の話に添えれば疲れた自分になり、恋愛の話に添えれば振られた自分になる。日本語でいうと顔文字に近い立ち位置で、絵というより気持ちの記号として使われてきました。
日本では「ウォジャック」という表記が主流ですが、ピクシブ百科事典は読みを「ゔぉやく」としています。もとがポーランド語なので、どちらが正しいというより、日本語に入ってくる途中で読みが分かれたパターンです。
元ネタ・由来
出自はきれいに一本の線では追えません。Know Your Meme も「正確な発祥は不明」とはっきり書いています。そのうえで確認できている最古の例が、2009年12月16日にユーモアサイト Sad and Useless へ投稿された 「I Wish I Was at Home」 という短い漫画です。パーティーの隅にこの男が一人で立っていて、家に帰りたいと思っている。それだけの絵ですが、のちのウォジャックの使われ方はもうここで完成しています。
絵そのものはもっと前から出回っていたようで、Know Your Meme はポーランドの画像掲示板 Vichan で twarz.jpg(顔、の意味)というファイル名のものが見つかったと書いています。英語版 Wikipedia のほうは同じ Vichan 発として ciepłatwarz.jpg(あたたかい顔)というファイル名を挙げていて、そちらは日付まで特定していません。要するに、どこの誰が最初に描いたのかは今も分かっていません。
はっきりしているのは、その後の広まり方のほうです。名前が付いたのはドイツの匿名掲示板 Krautchan で、英語版 Wikipedia によれば2010年に Wojak というハンドル名のユーザーがこの画像を持ち込んだのがきっかけとされます。Know Your Meme が確認できている Krautchan での最古のアーカイブ投稿は2010年4月26日のものです。以後この絵は「Wojak’s face」「ciepła twarz」と呼ばれるようになり、名前が定着していきました。2011年1月27日には4chanで、この顔が2体並んで肩を組む 「I know that feel bro」(その気持ちわかるよ)の構図が使われはじめ、定番化します。2012年2月2日には Reddit の /r/datfeel に「自分が Krautchan のあの Wojak だ」と名乗るユーザー Voyack が現れて質問に答え、2015年3月14日には専用のサブレディット /r/Wojak まで立ちました。
派生が爆発した理由
ウォジャックが特別なのは、原型そのものよりいじりやすさです。線が単純だから、髪を足す、色を塗る、口の形を変える、それだけで別人ができあがる。しかも新しい名前を付ければ、そのまま新しい人物類型として通用します。Know Your Meme の記述をならべると、進化はおおむね4つの時期に分かれます。加工しないまま気持ちを表す初期、名前の末尾に -jak を付けて類型を増やした時期、-oomer 系が量産された時期、そして2019年後半に始まって2020年に広がった Wojak Comics(コマ漫画)の時期です。
代表的な派生を並べるとこのあたりです。
- Crying Wojak:眉を寄せて歯を食いしばり、目を赤くして涙と鼻水を流している顔。悔しさや情けなさを出すときに使う
- Masked Crying Wojak:その泣き顔の上に涼しい顔の仮面をかぶせたもの。本音と建前がズレているときの定番
- I Know That Feel Bro:2体が肩を組む構図。共感を示すいちばん古い形
- NPC Wojak:顔を灰色にして無表情にしたもの。2018年10月に一気に広まった
- Doomer:黒いニット帽の若者。2018年9月に4chanで生まれ、先行きに期待していないタイプを指す
- Bloomer / Zoomer:Doomer の対義側。前向きな人、若い世代という具合に -oomer で並べて増えた
- Yes Chad:ひげを生やして堂々と肯定する顔。ウォジャックの線で描かれた ギガチャド の親戚にあたる
- Wojak Comics:これらを登場人物として並べたコマ漫画
2019年11月に出た Coomer のように、そのあとも派生は増え続けました。Know Your Meme 内で “wojak” を検索すると200件を超えるエントリが返ってくる(2023年2月時点)というのが、拡張性の分かりやすい証拠です。派生の一つである NPC は、日本語圏でもゲーム用語から来たスラングとして定着しています。
使い方・例文
日本語圏では、画像を貼る使い方と、タイプの呼び名として使う使い方の両方があります。
- 「給料日前の口座見てウォジャックの顔になった」
- 「そのエピソード、完全に I know that feel bro のやつ」
- 「休日の予定がゼロ。Doomer 化が進んでる」
貼るときに気をつけたいのは、これが自分の気持ちを言うための絵だという点です。落ち込んでいる自分に貼るぶんには笑い話で済みますが、他人に向けて貼ると「お前はこういう人間だ」というラベル貼りになります。とくに NPC 系は相手を無個性だと決めつける形になりやすいので、身内のノリの外では避けたほうが無難です。
関連する言葉
気持ちを一枚の顔で代弁する、という発想そのものは日本のネットのほうが先輩です。掲示板で泣き顔の代わりに使われた しょぼーん や、うなだれた人間を横から見た orz、キャラクターとして会話劇まで担った やる夫 は、いずれもウォジャックと同じ仕事をしています。文字か線画かの違いだけです。実際、コミケのコスプレエリアではギコ猫の顔を段ボールで作って歩いていた3人組が話題になっていて、ああいう顔の記号が20年たっても通じるのは日本も海外も変わりません。
同じ「雑な線の顔が世界に広まった」枠では トロールフェイス が最も近い並びです。ニヤけた煽り顔と、しょんぼりした共感顔で役割がきれいに分かれています。動物側で同じポジションを取ったのが Doge で、こちらは表情ではなく文字の添え方で気分を表しました。
心境を一枚で示す系統としては、火事の部屋でコーヒーを飲む This Is Fine や、何が起きても動じない Chill Guy も同じ棚です。ウォジャックが「つらい」を担当しているのに対して、この2つは「つらいけど平気なフリ」を担当している、と考えると並びが分かりやすい。派生が際限なく増えていく現象そのものを指す言葉としては ブレインロット が近く、実際に近年のウォジャック派生はその文脈で語られることが増えています。
英語で元をたどるなら、Know Your Meme の Wojak と Wikipedia の Wojak が経緯をまとめています。