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英語圏に九九はあるのか、イギリスは12×12まで暗記して全国テストまである

2026年9月11日 ・ トレンド「英語圏 九九 times tables イギリス 12×12 アメリカ 掛け算 暗記 学習指導要領」より

「ににんがし、にさんがろく」。小学2年生で叩き込まれたあの節回しは、大人になってもだいたい残っています。じゃあ英語圏の小学生は、あれをどうやって覚えているのか。9月10日の朝8時すぎ、@abcabcabc999666さんが投げたこの疑問が、1日で25万いいねを超えました。

「ににんがし みたいなのあるんかな」「トゥトゥンがフォー みたいな」。冗談まじりの書き方ですが、440件を超えるリプ欄を追っていくと、答えが1つに定まりません。実際に各国の教育当局が出している文書を読みに行ったところ、英語圏はまったく一枚岩ではありませんでした。

「トゥトゥンがフォー」は、そこそこ実在する

まず元投稿の当てずっぽうの部分から。これがけっこう当たっています。

英語圏で子どものころを過ごしたというSalalovessugaさんは、「Two twos are four, Two threes are six」と挙げたうえで、「とかほんとに言いますよ。」と書いています。2が2つで4、2が3つで6。「ににんがし」「にさんがろく」の構造をそのまま英語にしたような言い方で、掛け算表のことは times tables と呼ばれます。日本の九九よりゆっくりな印象だった、とも付け加えていました。

英語は生きている牛はcowなのに肉になるとbeefみたいな面倒くささで知られていますが、掛け算の唱え方に関しては日本とわりと近いところにいるようです。

イギリスは9×9で終わらない、12×12まで

範囲がはっきり違うのがイギリスです。イングランドのナショナルカリキュラム(日本でいう学習指導要領)の算数を見ると、Year 4の項目に、こう書かれています。Year 4はgov.ukの一覧で8〜9歳の学年とされていて、日本でいえば小学3年生に重なります。

“recall multiplication and division facts for multiplication tables up to 12 × 12”

12×12までの掛け算表について、掛け算と割り算の答えを即座に言えるようにすること、という内容です。九九が9×9=81で打ち止めなのに対して、覚える上限が12×12=144まで伸びる。段の数でいえば3段ぶん多く、暗記する組み合わせは81個から144個になります。原文はgov.ukのナショナルカリキュラム(算数)で読めます。

12まで覚えるのは、1フィート=12インチ、1シリング=12ペンスという12進法の名残だとよく説明されます。ダース単位で物を数える文化とも相性がいい数字ではあります。

しかも25問の全国テストがある

さらにイギリスには、それがちゃんと言えるかを測る全国共通のテストがあります。multiplication tables check、略してMTCです。

“The multiplication tables check (MTC) is statutory for all year 4 pupils registered at state-funded maintained schools, special schools or academies, including free schools, in England.”

イングランドの公費で運営される学校に在籍するYear 4の児童全員にとって、MTCは法定(statutory)の扱いだと書かれています。中身についての説明はこうです。

“The purpose of the MTC is to determine whether pupils can recall their times tables fluently up to 12, through a set of 25 timed questions.”

12までの掛け算表をすらすら思い出せるかを、制限時間つきの25問で確かめる。実施時期も決まっていて、“Schools must administer the MTC during a scheduled 2-week period in June”、つまり6月に設定された2週間のあいだに学校が実施することになっています。

制度としてはわりと新しめで、gov.ukのMTCのページの更新履歴を見ると、初回公開が2020年3月3日、2021/22年度向けの更新が2021年7月19日、法定の年度に向けた更新が2022年3月21日と並んでいます。小3くらいの学年で九九の全国テスト、と聞くとぎょっとしますが、25問なので時間はごく短いものです。

ただし先の話までは決まっていません。同じページの冒頭には、2025年11月に出たCurriculum and Assessment Reviewの最終報告と政府回答を受けて、今後のアセスメントのあり方を見直している最中だという断りが付いています。そのうえで “Assessment arrangements for the academic year 2026 to 2027 will remain unchanged” とあり、2026/27年度までは今の形のままです。

アメリカは一桁×一桁、日本と同じ範囲

同じ英語圏でも、アメリカはイギリスとは別物です。教育の基準を州ごとに決める国なので全州が一律というわけではありませんが、多くの州が土台にしてきたCommon Core State Standards(各州共通基礎スタンダード)の算数を見ると、Grade 3、小学3年生の項目にこうあります。

“By the end of Grade 3, know from memory all products of two one-digit numbers.”

3年生の終わりまでに、一桁の数どうしの積をすべて暗記していること。同じ項目には “Fluently multiply and divide within 100” ともあり、100までの範囲で掛け算と割り算を流暢にこなす、という書き方になっています。一桁×一桁ということは、範囲としては日本の九九とぴったり同じです。原文はCommon Coreの算数スタンダード(PDF)の3.OA.7にあります。

つまり「英語圏の九九」は1つに決まりません。イギリスの子は日本より広い範囲を覚え、アメリカの子は日本と同じ範囲を覚えている。元投稿に付いたリプが噛み合わないのも当然でした。

日本の九九は第2学年、覚え方が音に埋まっている

こちらの根拠も見ておきます。文部科学省の小学校学習指導要領(平成29年告示)のPDFを見ると、九九は第2学年で扱われ、「乗法九九について知り,1位数と1位数との乗法の計算が確実にできること。」と書かれています。ここでいう1位数が、いわゆる一桁です。

範囲だけ見ればアメリカと同じですが、日本の場合は「ににんがし」のように音として塊にしてしまうのが特徴です。九九は覚える対象であると同時に、口が勝手に動く呪文のようなものになっている。英語の Two twos are four も同じ発想ではありますが、単語がそのまま並ぶぶん、呪文としての圧縮率は低そうです。ちなみに日本語と英語を混ぜて読むMazelingoのような学習ツールが受けるのも、この「音で覚える」感覚と地続きな気がします。

現地にいた人どうしでも、証言が割れている

面白いのは、リプ欄の当事者の話も一致していないことです。

英語圏の現地校に通っていたというLILDMU3eqI96206さんは「ないです。」ときっぱり書いています。歌のようなものを聞かされたけれど覚えさせる気がある作りではなく、だからいつまでも覚えない、という体験談です。いいねは257件付いていました。そして最後の一行がよく効いていて、「ちなみに九九ではなく十二十二になります。」。12×12まで覚えるなら、九九ではなく十二十二だろう、というツッコミです。

一方で先ほどのSalalovessugaさんは「ほんとに言いますよ」と書いている。どちらも実際にその場にいた人の話なので、国も学校も時期も違えば体験が食い違うのは当たり前です。日本の九九ほど全国どこでも同じ、という状態ではないのだと考えるほうが近そうです。日本語がうまく通じなかった側の体験としては、アメリカのサブウェイで店員と顔なじみになるまでの話も同じ手触りがあります。

結局どっちが楽かは決められない

まとめると、イギリスは12×12までを覚えたうえで6月に25問のテストを受け、アメリカと日本は一桁×一桁までで揃っている。範囲の広さと覚え方は国ごとにバラバラで、そこに優劣はつけようがありません。

ただ、掛け算表を丸暗記させられる小学生がどこの国にもいる、という事実だけは共通していました。次に英語圏の人と話す機会があったら、Two twos are four と言ってみると通じるかもしれません。

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