ゴジラ-1.0の「震電」は実在機、射出座席は映画オリジナル
『ゴジラ-1.0』に出てくる「震電」は、旧日本海軍が実際に試作した戦闘機だ。ただし劇中の射出座席は映画オリジナルで、実機には付いていない。
10月30日の夜9時から、金曜ロードショーで『ゴジラ-1.0』が本編ノーカットで放送された。放送中に「震電」がXのトレンドに入り、「実在するの?」という声が流れていた。
公式アカウントの投稿は、田中美央さんと一緒に見る実況企画「海神作戦応援乗船」の告知だった。山崎貴監督も緊急参戦すると書かれている。ハッシュタグ「#ゴジラマイナスワン」「#応援乗船」を付けて投稿してほしいとのことで、震電の話もこのタグで流れていた。
震電は3回しか飛んでいない
震電は九州飛行機(福岡)が作った局地戦闘機で、機首に小さな翼がある前翼型(エンテ型)だ。プロペラは機体の後ろについている。
米国立航空宇宙博物館(NASM)の解説によると、初飛行は1945年8月3日。そのあと6日と9日にも飛んで、飛行時間は3回で合計45分だった。終戦はその6日後で、量産には届かなかった。
飛んだ日は日本語版Wikipediaだと「6日、8日」になっていて、NASMとは1日ずれている。3回しか飛んでいないという点はどちらも同じだ。
1号機はいまもNASMが持っている。2019年時点では、ユードバー=ハジー・センターに操縦席から前の部分だけが展示されていた。
NASMの解説はNASMの震電のページで読める。
射出座席は映画オリジナル
劇中の震電には射出座席があり、操縦席にはドイツ語の表示も出てくる。どちらも実機の話ではない。
乗りものニュースは、映画の震電について「オリジナルにはない装備として射出座席がありました」と書いている。実機には射出座席は無く、代わりに試作2号機から、プロペラのハブ内に火薬で爆破して飛ばす装置を組み込む予定だったという。
日本語版Wikipediaも、同じ装置を説明している。減速筐の取付ボルトに火薬を仕込み、電気で着火して、冷却ファンごとプロペラを切り離す仕組みだ。1号機には間に合わず、付いていなかった。
後ろにプロペラがある機体は、脱出するときにそのプロペラが邪魔になる。だから座席を飛ばす装置ではなく、プロペラのほうを飛ばす装置が考えられた。
X上では、こんな声があった。ぽんずさん(@ponnz)は「震電のスペック知ってるミリオタだったら脱出装置がついてるの知ってるので秘密でも何でもなかった」と投稿している。劇中の脱出装置は、スペックを知っていれば驚きではなかった、という見方だ。
計画だけを見れば、実機にも脱出のための装置はあった。ただ、それは座席を撃ち出す射出座席ではなく、プロペラを切り離す装置だ。
射出座席そのものは、第2次大戦末期のドイツが世界に先駆けて実用化した。初期型は圧縮空気で作動し、ハインケルHe219やHe162、ドルニエDo335などに載っていた。
操縦席にあるドイツ語の札
射出座席の技術はドイツ生まれなので、表示がドイツ語なのはその出自に合っている。乗りものニュースによると、劇中では元海軍工廠の技術者が、戦闘機には最低限の脱出装置も付いていなかったと口にするという。
大刀洗平和記念館にある震電の模型の操縦席にも、劇中と同じくドイツ語の札がある。2階テラスから見えるコクピット内の座席のヘッドレスト下部に、赤い文字の白いプレートが付いている。
そこには「Druckluft-Schleudersitz」と「Bestätigung」などの文字がある。意味は圧縮空気式射出座席と、確認だ。
この札があることから、展示の模型は映画で使われた機体そのものだと乗りものニュースの筆者は考えた。2023年11月の記事の時点では、制作側が明言していない推察だと断り書きがついていた。撮影用に作られた模型だったことは、そのあと読売新聞が報じている(下の節)。
だぶるさん(@dablue_7916)は「ドイツ人(ドイツ語がわかる人)からしたら盛大なネタバレだったらしいの何度聞いても笑えるよな」と書いている。
ドイツ語が読める人なら、操縦席に書いてある言葉から射出座席だと分かる。札の意味が、日本語だけで見ている人より先に伝わっていた、という話だ。
大刀洗の実物大模型を見に行った人たち
この模型は、福岡県筑前町の大刀洗平和記念館で、常設展示されている。放送が始まってから、見に行った人の写真もXに上がった。
いつきさん(@amanoya5)は『ゴジラ-1.0』を見たあとに大刀洗平和記念館へ行った写真を投稿している。写真は4枚で、全景、吹き抜け、操縦席、SHINDENのステッカーが写っている。
さとぴさん(@_3_10_4)は、上映当時に大刀洗へ見に行ったという。こちらも2階から機体の全景を撮っている。
模型は1100万円で極秘購入
この模型は、もともと映画の撮影用に作られたものだ。読売新聞(福岡版)によると、映画の情報が漏れないよう、製作会社と筑前町が極秘で交渉して、町が1100万円で買い取った。
運送や設置の費用を入れた約2500万円の予算を議会に通す必要があり、議員への説明のあとは資料を回収したという。
展示が始まったのは2022年7月。売買契約書には、映画が公開される2023年11月まで、ゴジラの名前はもちろん、映画で使われたことも公表しないという条件が入っていた。
クラウドファンディングでは、600人から計1271万円が集まった。入館者数は2022年度で約8万2000人、2024年3月の時点では、その年度で約9万5000人になる見込みだった。以上は読売新聞の記事にある。
模型を見に来た人のなかには、実機の設計者である鶴野正敬技術少佐の長男・正英さんもいた。2024年3月に、82歳で見学している。
見に行くなら
現地の情報は大刀洗平和記念館の公式サイトを見てほしい。
11月3日には、新作『ゴジラ-0.0』が公開される。
メイキング映像はIMAXと実寸大の和光の話、キャストは長澤まさみさんの役の話を別の記事にしている。前の週の放送は金ロー『ゴジラ-1.0』の前週はALWAYSにまとめた。