「顔ない」とは?意味・由来・三省堂「今年の新語2024」入りまで解説
「遅刻しそうで顔ない」と言われて、顔が無いとはどういう状態なのかと固まった人は多いはずです。「顔ない」 は、感情が振り切れて表情を保っていられない、くらいの意味で使われています。
「顔ない」とは?
驚き、困り、恥ずかしさ。この3つのどれかが強く出たときの気持ちを表します。辞書の語釈でも意味の幅は広めに取られていて、文脈で読み分ける言葉です。
「遅刻しそうで顔ない」なら焦りと困り。「質問に答えられなくて顔ない」なら恥ずかしさと情けなさ。オタク文脈では推しが良すぎて処理が追いつかない状態にも使われますし、逆に真顔になってしまうことを指す人もいます。同じ言葉なのに、話し手によって指している感情がけっこう違います。
三省堂「今年の新語2024」に入った
この言葉は、辞書の三省堂が選ぶ「今年の新語2024」で10位に選ばれました。ネットスラング止まりではなく、辞書を作っている側が記録に値すると判断した言葉ということになります。
選評を書いた『三省堂国語辞典』の飯間浩明さんは、この言葉が伝統的な日本語とどこかで通じている点を挙げています。「顔色をなくす」「顔色を失う」は驚きや恥で青くなること。「人に合わせる顔がない」「面目ない」は相手に対して恥ずかしいこと。さらに古語まで遡ると「面伏(おもてぶ)せなり」があります。若い世代が新しく作ったつもりの言い回しが、昔からある表現とだいたい同じ発想にたどり着いていたわけです。
順位が10位に留まったのは、意味がまだ固まりきっていないという留保が付いたためでした。選評でも、この先きちんと定まって使われるようになるかは少し不安が残る、と書かれています。選評の全文は三省堂のサイトで読めます。
由来
語源ははっきりしていません。有力なのは、先に「顔なくなった」があってそれが縮んだ、という見方です。2010年代のSNSには「泣きすぎて顔なくなった」「寒すぎて顔なくなった」といった投稿があり、2019年頃には「顔ないなった」という途中経過のような形も見つかります。顔なくなった、顔ないなった、顔ない、と少しずつ短くなっていった流れです。
このほか「合わせる顔がない」から来たという説、涙などで顔がぐちゃぐちゃになった状態を指したという説、「面食らった」が変化したという説もあります。どれか1つに決め手があるわけではなく、複数の言い回しがゆるく合流した結果と考えたほうが実態に近そうです。
使い方・例文
- 「乗る電車間違えてた、顔ない」
- 「送る相手ミスってた顔ない」
- 「ライブの音源が良すぎて顔ない」
失敗を軽く報告するときのクッションとして便利で、深刻ぶらずに「やっちゃった」を伝えられます。
関連する言葉
同じ「今年の新語2024」からはメロいが6位に入りました。感情の高ぶりを短い形容詞で言い切る点ではエモいや尊いと同じ流れにあり、体力や精神の限界を表すしんどいとも近い場所で使われます。