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電柱の「足場ボルト」が地上1.8mより下に無いのは登らせないのが理由

函館のコンクリート電柱。上のほうだけに足場ボルトが左右交互に付いていて、下のほうには1本も無い
画像: 足場ボルトが付いた函館のコンクリート電柱(CC BY-SA 4.0 / Bjørn Christian Tørrissen, via Wikimedia Commons)。当サイトで縮小・切り抜きをしています。改変後の画像も同じ CC BY-SA 4.0 で提供します

電柱から左右交互に突き出ている棒は「足場ボルト」という。地面から1.8mより下に付いていないのは、国の基準でそう決まっているからだ。

メイドの上を棒が横切った

きっかけは、9月26日の昼に投稿された1枚の写真だった。

電柱に巻き付けるタイプの広告に、メイドのイラストが描かれている。その上を、電柱の棒が1本まっすぐ横切っていた。

投稿したのは一本松さん(@2_pon_)。棒が刺さったように見えるメイドになりきって、「お嬢様」の無事に安堵する一言が添えられている。

いいねは約11.3万、リプライは258件。写真のボケっぷりもさることながら、「で、あの棒って何?」と思った人も多かったはずだ。

棒の名前は「足場ボルト」

あの棒は、電気工事の作業員が電柱を昇り降りするための足場だ。電力会社の仕様書では「足場ボルト」と呼ばれている。

東京電力パワーグリッドには、足場ボルトだけを定めた標準仕様書「6E-004」がある。制定は1962年12月で、いま公開されている版は2018年の改定だ。60年以上、同じ名前の部品として規格が続いている。

コンクリート電柱の場合、ボルトはあとから穴を開けて付けるのではない。柱を作るときに「足場受口」という差し込み口を埋め込んでおき、そこにボルトをねじ込む。

1.8mより下に無いのは決まりだから

電柱の下のほうを見ると、棒が1本も無いことに気づく。これは偶然ではない。

経済産業省の「電気設備の技術基準の解釈」第53条には、こう書かれている。

架空電線路の支持物に取扱者が昇降に使用する足場金具等を施設する場合は、地表上1.8m以上に施設すること。

条文の見出しは「架空電線路の支持物の昇塔防止」。つまり、関係ない人が下から電柱に登れないようにするためのルールだ。1.8mといえば、だいたい大人の背丈くらいになる。

1本で約3トンの引っ張りに耐える

東電の仕様書を読むと、足場ボルトに求められる強さがかなり具体的に書いてある。

  • 破断荷重は29,400N以上。重さに直すとだいたい3トンで、引っ張ってもそこまでは切れない
  • 曲げ試験は、先端に1,960N(約200kg)の力を1分間かけて、先端のずれが5mm以内

東北電力の仕様書では、材料は一般的な構造用鋼材のSS400相当で、表面には1平方メートルあたり450g以上の亜鉛めっきをかける。雨ざらしで何十年も使うので、錆びにくくしてある。

ねじ込み式なので、ねじ山が傷んだボルトは交換できる。コンクリート柱のメーカー、三谷セキサンのカタログには、締め付けトルクは40〜50N・mが目安で、トルクをかけ過ぎると受け口のねじ部やポール本体が傷むという注意書きまで載っていた。

1本の電柱に何本付いている?

三谷セキサンのPCポールのカタログには、柱の長さごとの本数が出ている。

8m柱は受口が12あるのに、ボルトは10本しか付けない。受口の全部にボルトを挿すわけではないようだ。

下の1.8mだけ空いている

次に電柱の横を通ったら、一番下のボルトの位置を見てみてほしい。たいていの電柱は、頭の上あたりからしか始まっていないはずだ。

メイドの上を横切っていたあの棒も、登ろうと思えば誰でも登れる高さには付いていない。お嬢様は無事だし、電柱も安全に作られている。

出典

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