前田悠伍の開幕12連勝、「ウイニングボール」を誕生日の山本祐大が突き返していた
9月11日、みずほペイペイドームでのロッテ戦。ソフトバンクが11-1で勝ち、先発した21歳の前田悠伍が開幕から負けなしの12連勝を決めた。ふつうならウイニングボールを握りしめて終わる場面だが、この日はボールの行き先がなかなか決まらなかった。
球団公式が投稿した動画に添えられた一文が「ウイニングボールを渡したら拒否られた」。渡そうとしたのが投手の前田で、断ったのが捕手の山本祐大。しかも山本にとっては、この日が誕生日だった。
開幕12連勝、21歳が斉藤和巳以来21年ぶりの球団記録に並んだ
まず試合のほう。スポニチによると、前田は7回を105球。「要所を締める投球で5安打1失点に抑え」、自身のプロ入り後では最多となる9奪三振を奪った。これで開幕から12連勝、勝ち星でもパ・リーグの単独トップに立っている。
ホークスでこの数字が出るのは久しぶりで、2005年に開幕15連勝して16勝1敗という成績を残した斉藤和巳以来、21年ぶりだ。若さのほうも相当で、日刊スポーツのデータ記事によれば、2リーグ制後に高卒3年目以内で開幕12連勝以上を挙げたのは、1965年の林(南海・3年目)の12連勝、1966年の堀内(巨人・新人)の13連勝に次いで3人目。パ・リーグに限れば、林に並ぶ高卒3年目以内の開幕連勝記録になった。
前田がボールを差し出した相手は、この日28歳になった山本祐大
ここからが本題のボールの話。この試合でマスクをかぶっていた山本祐大は、NPB公式の個人年度別成績にあるとおり1998年9月11日生まれ。つまり試合当日がちょうど28歳の誕生日で、しかも打つほうでも3安打を放って猛打賞という一日だった。誕生日に打ちまくった先輩がすぐ隣にいる。前田がボールを差し出したのは、そういう流れだ。
山本は今季途中に横浜DeNAから移ってきた捕手で、背番号は39(ホークス公式の選手ページ)。NPBの成績表でも2026年の欄に「横浜DeNA」と「福岡ソフトバンク」が2行並んでいる。9月10日時点で移籍後は43試合・打率.268、DeNAでの今季28試合は打率.227だったから、環境が変わってから数字は上向きだ。
山本が受け取らず、結局ボールを持ち帰ったのは前田だった
ところが山本は、差し出されたボールを受け取らない。西日本スポーツのホークス担当が伝えた山本の言葉が「誕生日なんかでもらえない」。前田が押し付ける、山本が押し返す、で何度か往復したらしい。ベンチ前で同じボールをやり取りしている絵面としては、じゃんけんで負けたほうが会計する店の前にちょっと似ている。
決着は試合後の囲み取材でついた。前田いわく「結局、もらいました。(記念球をもらうなら)『誕生日でホームランを打っていないと嫌だ』と言われたので」。山本の中には、記念球をもらうなら誕生日にホームランを打っていないと嫌だ、という自分ルールがあったわけだ。3安打では基準を満たさないらしい。そこまで言われたら前田も引き下がるしかなく、ボールは投げた本人の手に戻った。
ちなみに山本は同じ日、28歳の抱負を聞かれて「もっとホームランが打ちたいです」と答えている。ホームランへのこだわりは最初から最後までブレていなかった。
記念球が素直に手元に残らない話でいうと、千賀滉大のメジャー初セーブの記念球が新人のうっかりでスタンドに消えた一件もあった。あちらはボールが物理的に行方不明になったので、二人の間を往復しただけの今回はまだ平和なほうだ。
ファンが見ていたのは「どっちに渡すか」の譲り合い
ボールが止まらなかった理由を、見ていた側からうまく言い当てていたユーザーもいる。「おそらく誕生日の山本に渡したい前田と キャリアハイ更新の12勝目の前田に渡したい山本の戦いだと思う笑」という見立てが投稿されている。どちらも相手のほうが今日の主役だと思っているから、ボールが止まる場所がなくなる。押し付け合いというより、譲り合いがこじれた状態だ。
動画には正木智也も一緒に映っていて、球団は「3人揃うとほのぼのしすぎてつい長くなってしまいました」として、フルバージョンを翌日に球団サイトで公開すると案内している。ボールの往復が何回あったのか数えたい人は、そちらを待つのがよさそうだ。