「堀田湯 上目黒」今冬開業、閉業する大黒湯を銭湯のまま継ぐ
上目黒の銭湯「大黒湯」が、取り壊されずに銭湯のまま残ることになった。足立区西新井の堀田湯が引き継ぎ、今冬「堀田湯 上目黒」として開業する。
発表は2026年10月10日の朝。株式会社堀田湯がPR TIMESでリリースを出し、会社・西新井・上目黒の3つの公式Xが同じ内容を告知した。
閉業から「継業」へ
大黒湯は目黒区上目黒で約66年続いてきた町の銭湯だ。閉業を決めたと聞いた堀田湯側が「この場所を、銭湯のまま残せないか」と考えたのが始まりだという。
間に入ったのは野村不動産ソリューションズ。不動産仲介の会社が両者の橋渡し役になり、大黒湯を銭湯として受け継ぐ話がまとまった。
ここがこの話のいちばん珍しいところだ。リリースによると、閉業した銭湯の多くは建物が取り壊され、集合住宅や駐車場に変わっていく。土地の次の使い道として「銭湯を続ける」を選ぶケースは多くない。
前当主の幸田栄一さんは、リリースにこうコメントを寄せている。
この場所で、これからも銭湯の暖簾がかかり続けることを嬉しく思います。
瓦屋根と黒松はそのまま残る
堀田湯 上目黒では、街の目印だった宮造りの瓦屋根と、入口で客を迎えてきた黒松を残す。黒松は新しい施設のシンボルマークにも入った。
浴室のガラスや脱衣所の格子天井といった銭湯らしい意匠も生かしながら、いま改修工事を進めているところだ。
西新井の公式Xは、告知に続く投稿でこう書いている。
66年、その地を見守り続けた宮造りの瓦屋根、大きな黒松、立派な銭湯絵。
株式会社堀田湯の告知に付いた写真には、看板と瓦屋根と松が写った旧大黒湯の外観や、富士山と鯉が描かれた銭湯絵も入っていた。通っていた人なら見覚えのある景色のはずだ。
サウナと露天風呂の新エリアが増える
残すだけではなく、足すものもある。サウナ、露天風呂、水風呂、内外気浴スペースを備えた新エリアを設けるという。
普段の風呂として通える場所でありつつ、ゆっくり過ごしたい日にも来られる銭湯を目指すとのこと。新エリアの詳細は、開業に向けて順次発表される予定だ。
入浴料は大人600円。東京都内の銭湯の大人料金は2026年8月1日から50円上がって600円になったばかりで、それと同じ額になる。サウナ料金は別で、詳細は後日発表とされている。
継ぐ側の堀田湯はどんな銭湯か
堀田湯は1942年に足立区西新井で創業した銭湯で、2022年にリニューアルしている。掲げている言葉は「この街を、温める。」。
代表の堀田和宣さんは堀田湯の三代目にあたる。経歴はちょっと変わっていて、リゾートウェディング事業の創業や、ZOZOの前身企業の創業メンバーなどを経てから、2024年に家業の銭湯を継いだ。
2026年には会社の名前も「株式会社堀田湯」に変えた。リリースでは、堀田湯ブランドで今後も複数の出店を予定していると書いている。上目黒の継業は、その出店計画の中で発表された。
銭湯は半世紀で8割以上減った
背景には銭湯の減り方がある。リリースが引く厚生労働省の衛生行政報告例(2024年度)では、一般公衆浴場としての銭湯は全国で2,730施設。半世紀で8割以上が姿を消した計算だ。
東京都内でも400軒あまりまで減っている。家に風呂があるのが当たり前になったうえに、建物の老朽化、経営者の高齢化、湯を沸かす重油の値上がりが重なって、閉業はいまも続いている。
閉業の知らせが「続く」話になった
西新井の公式Xの告知には、発表から数時間で600を超えるいいねが付いた。閉業の話が出ると、普通は「また一軒なくなるのか」で終わる。今回はその逆で、建物も銭湯としての役目もそのまま続く。
渋谷の改良湯のように、古い銭湯に手を入れてサウナ好きに評判の場所になった例はすでにある(改良湯×スヌーピーの記事)。サウナ後のいわゆる「ととのう」目当ての層を、中目黒・祐天寺エリアでどこまで取り込めるかも見どころになる。
開業日は決まり次第発表される。最新情報は堀田湯 上目黒のInstagramと、株式会社堀田湯の公式サイトで追える。祐天寺の近くに住んでいる人は、冬の楽しみがひとつ増えた。