「焼く前→1200℃で焼いた後」が別物すぎる。魔法少女みたいな幽霊の陶芸ビフォーアフターに息をのむ
同じものを撮った2枚のはずなのに、まるで別の作品。そんなビフォーアフターがXで話題になりました。ソファにちょこんと埋もれた白いお化けが、魔法少女のステッキをいっぱいに抱える愛らしい陶芸作品。その「焼く前」と「1200℃で焼いた後」を並べた投稿です。
投稿したのは陶芸家の泥方陽菜さん。焼く前はマットで、全体がぼんやりと淡い色合い。ところが焼き上がった後は、お化けの体はガラスのようにツヤめき、ステッキは鮮やかな赤や金色にきらめき、背景の三日月には金の星がびっしり。同じ作品とは思えない“変身”ぶりに、「魔法だ」「焼くとこんなに変わるのか」と驚きの声が相次ぎました。
マットな素地が、焼くとツヤめくワケ
この劇的な変化のカギをにぎるのが「釉薬(ゆうやく)」です。焼く前の器の表面に塗られている釉薬は、乾いた状態ではマットな粉っぽい質感で、色もぼんやりしています。ところが窯で高温にさらされると、釉薬に含まれるガラス成分がとけて、なめらかなガラス質の層に変わるのです。これが、焼き上がりのあのツヤの正体。
陶器の「本焼き」は、一般的におよそ1200〜1250℃という高温で行われます。この熱で釉薬がとけてガラス化すると同時に、原料に含まれる銅や鉄などの金属成分が化学反応を起こし、はじめて本来の色が現れます。つまり陶芸家は、焼く前の“くすんだ色”の状態から、焼き上がりの発色を頭の中で想像しながら作業しているわけです。
金色は仕上げの“もうひと焼き”
作品にきらめく金色も、陶芸ならではの技。金の装飾(金彩)は、ガラス化した釉薬の上から金を含んだ絵の具などで描き、あらためて窯で焼き付けることで定着します。何度も窯に入れて、ようやくあの豪華な仕上がりにたどり着くのですね。星のようにちりばめられた金の粒ひとつひとつにも、その手間がかかっていると思うと、いっそう見入ってしまいます。
“焼くまで完成が読めない”のが陶芸のロマン
釉薬の発色は、窯の中の温度や置かれた場所、原料に含まれるわずかな不純物によっても、溶け方や色味が微妙に変わります。だからこそ陶芸は、窯を開けるその瞬間まで仕上がりが完全には読めない。狙いどおりにいくことも、思わぬ表情が生まれることもある、いわば“窯まかせ”の面白さがあります。
今回のビフォーアフターがこれほど刺さったのは、単に「かわいい作品」だからだけではありません。地味な素地が高温をくぐって輝きをまとう、その過程そのものが持つ“へぇ”と感動が、多くの人の心をつかんだのでしょう。窯を開けた瞬間の作者の高揚まで、写真の向こうに伝わってくるようでした。