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「ホドモエシティ」とは?ポケモンBWのBGMがミーム化した理由と「ホドモエシティ猫」「踊るトゥースレス」の元ネタ

ホドモエシティ(ほどもえしてぃ) ・ 2026年8月25日 公開

赤いチャイナ服の猫が、やたらキレのいい足さばきで踊っている動画。あるいは、指を鳴らされた瞬間にドラゴンが踊り出す動画。流れているのは同じ曲です。曲名を知らないまま「あの曲」としてだけ覚えている人がかなり多いのですが、正体は2010年発売のニンテンドーDSソフト『ポケットモンスターブラック・ホワイト』に出てくる町のBGMでした。

「ホドモエシティ」とは?

ホドモエシティは、『ポケットモンスターブラック・ホワイト』(以下BW)のイッシュ地方にある港町の名前です。ミームの文脈で「ホドモエシティ」と言うときは町そのものではなく、その町で流れるBGMを指しています。

ゲームのほうの町は、大きなマーケットを抱えた港が舞台で、作中では「イッシュ地方の海の玄関」と呼ばれています。イッシュ地方で5番目のジムがある町でもあり、ジムリーダーはじめんタイプ使いのヤーコンです。英語版の名前が Driftveil City なので、海外のミームコミュニティでは一貫して “Driftveil City” と呼ばれています。日本語圏で「ホドモエシティ猫」、英語圏で “Driftveil City cat” と、同じ猫が国ごとに別の綴りで呼ばれているのはこのためです。

ちなみにBWは、初代から連れてきたポケモンを預けられるポケモンバンクが2027年2月に終了するという話でも名前が挙がる世代です。曲のほうが本体より有名になっている今の状況は、当時のプレイヤーからするとだいぶ妙な光景だと思います。

元ネタ・由来

この曲がネットに出ていった順番は、Know Your Meme の Driftveil City の項にかなり細かく残っています。ざっと追うとこうなります。

2010年9月18日、DSでBWが発売されます。翌月10月20日には4枚組のサントラも出ました。ここまでは普通のゲーム音楽です。

2010年9月23日、発売からわずか5日後に、この曲を使った音MADがニコニコ動画に投稿されます。KYMが確認できている最古の使用例がこれで、9年間で20万再生を超えました。ゲームを遊んだ人より先に、音MADを作る人が素材として目を付けていたことになります。

2014年から2018年ごろ、ニコニコのジョジョMAD(約60万再生。2014年11月22日に Jankey Chan がYouTubeへ再投稿しています)、2017年1月27日の SiIvaGunner、2018年2月2日のファミリーガイのリミックス(2年で20万再生超)と、MAD/YTPMVの定番素材として海外にも渡っていきます。日本のニコニコで加工され、加工された状態のまま国境を越えた形です。

2018年、3DCGのトカゲが妙な動きで踊る Dancing Lizard が流行します。この時点ではまだ曲は固定されていませんでしたが、2019年4月22日にYouTuberの “it’s me jb” がホドモエシティを当てた版を投稿し、4年で140万再生を超えました。この版がよく回ったことで、「踊る動物にはこの曲」という組み合わせが定着していきます(KYM の Dancing Lizard)。

2023年12月9日、アニメーターの Cas van de Pol が「The Ultimate “How To Train Your Dragon” Recap Cartoon」を投稿します。『ヒックとドラゴン』を早送りでまとめた動画で、1分30秒あたり、ヒックが指を鳴らすとトゥースレスがこの曲に合わせて踊り出す。振り自体は2018年の Dancing Lizard が下敷きです。2週間で400万再生を超えました。

同じ日に A.Z. Clubs がそこだけ切り出した版を出して2週間で3万再生、12月11日には The Meek Guy の1時間耐久版が同じく2週間で30万再生。踊るトゥースレスだけが本編から独立していきます(KYM の Dancing Toothless)。

2023年12月13日、TikTokの @uwaa.w がトゥースレスと元のトカゲを並べた比較動画を投稿し、2週間で260万再生。12月22日には @igreenscreenthings のグリーンスクリーン版が5日で600万再生を記録して、誰でも自分の動画に踊るトゥースレスを合成できるテンプレになりました。

2024年、ここで日本の猫ミームブームと合流します。赤いチャイナ服を着た猫がこの曲で踊る動画が「ホドモエシティ猫」の名前で広まり、海外でも “Driftveil City cat” として定着しました。踊りの振りは中国発の科目三、日本での通称ナルトダンスの系統とされています。

ただし、その猫の動画そのものが誰の投稿でいつ出たのか、AI生成なのかどうかについては確定的な記録が残っていません。テンプレとして量産された結果、最初の1本が埋もれてしまったパターンです。曲の来歴は5日単位で追えるのに、いちばん有名になった猫の出どころだけ分からないのは、なかなか皮肉な話だと思います。

なぜ広まったのか

広まった理由をひとつ挙げるなら、曲名が最後まで画面に出ないことだと思います。ゲーム中は町に入れば勝手に流れるだけで、曲名がテロップで出るわけではない。プレイした人ですら「ホドモエシティの曲」という以上の呼び名を持っていません。名前が付いていない曲は、出所ごと剥がれた状態で流通します。

そこにゲーム音楽特有の作りが乗ります。町のBGMは何分でも聴き続けられるように繰り返し前提で作られているので、どこから切ってもどこで切っても成立する。音MADにも、動画のループにも、TikTokの数秒にも、そのまま使えます。加工しても崩れない素材だったのが強かった。

短いループ曲が、出所を知られないまま広まっていく構造はよくある話で、うちのサイトでもちいかわの体操の曲の正体がスーパーの「呼び込み君」だったという記事を出しています。あちらは業務用のPOP機材の内蔵音、こちらはDSのゲーム音楽。分野は違いますが、「誰も曲名を知らないのに全員が知っている」という到達点は同じです。

おもしろいのは、日本語圏の記述がいまだに追いついていないことです。ニコニコ大百科のホドモエシティの項は2014年に作られて今も更新されていますが、中身は冷凍コンテナやヤーコンの話が中心の町の解説で、曲について触れているのは関連動画の欄にある「ニコニコ動画ではホドモエシティのBGMを使用した音MAD・アレンジなどが多く見られる」の一文だけ。踊る猫もトゥースレスも出てきません。海外で何が起きたかを細かく記録しているのはKYMのほうで、素材を出した側の日本にはその記録が残っていない。

使い方・例文

会話で出てくるときは、だいたい「曲名を特定する」文脈です。あの曲なんだっけ、という問いへの答えとして名前が呼ばれます。

  • 「これホドモエシティじゃん、ポケモンの曲だよ」
  • ホドモエシティ猫の元ネタ、まさかBWだとは思わなかった
  • トゥースレスが踊るやつ、曲はホドモエシティで合ってる?
  • BWやってたのに、あの曲がホドモエシティだって15年気づかなかった
  • 「ホドモエシティ 何のゲーム」で調べる人が多すぎる

曲そのものを指して「ホドモエシティが頭から離れない」のような使い方もします。町の話をしているのか曲の話をしているのかは文脈で判断してください。ポケモン勢に町の名前として言うと、ヤーコンのジムの話だと思われることがあります。

関連する言葉

いちばん近い場所にあるのが猫ミームです。2024年に猫の映像で日常のドラマを再現する動画が一気に増えて、その素材のひとつとしてホドモエシティが選ばれました。猫ミームのBGMというとチピチャパを思い浮かべる人が多いと思いますが、あちらがラテン系の楽曲だったのに対して、こちらは日本のゲーム音楽が海外を一周して戻ってきたもの。同じジャンルの動画で、出自がまったく逆方向というのが面白いところです。

踊りの振りのほうを担当しているのがナルトダンスで、中国発の科目三が日本でその名前で呼ばれるようになったものです。曲は日本産、振りは中国産、火が付いたのは海外という組み合わせで、どの国のミームなのか誰にも答えられない状態になっています。

日本のニコニコで素材化された段階を担ったのが音MADです。ホドモエシティの場合、発売5日後にはもう素材として使われていたわけで、公式より先にネットが曲を見つけた形になります。

ポケモン発のダンスミームという点ではPOKÉDANCEとも並びますが、性格はほぼ真逆です。あちらは公式が振り付けと楽曲を用意して踊らせにいった企画で、こちらは公式が用意した覚えのない町のBGMが勝手に踊りの曲になった。同じシリーズから出た2つのダンスなのに、公式の関与のしかたがこれだけ違うのは珍しいと思います。