実在の動物をアプリで追えるブレスレット「Fahlo」が日本でバズる、同じ1匹を9万7千人で見守っていた
ブレスレットを1本買うと、実在するサメが1匹割り当てられて、いま海のどのあたりを泳いでいるかをアプリの地図で追える。そんな仕組みが8月28日、日本のタイムラインで一気に広まりました。アメリカのブランド「Fahlo」の商品です。
日本語のタイムラインで大きく伸びていたのが、この投稿です。
追っているのは研究者が付けた本物の発信機
仕組み自体は寄付グッズというより、研究のおすそ分けに近いです。
タグを付けているのはFahloではなく、提携している自然保護団体の研究チーム。サメなら Saving the Blue、ウミガメなら Sea Turtle Conservancy、ゾウなら Save the Elephants といった具合に、動物ごとに違う団体が付いています。サメの場合はSPOT(Smart Position and Temperature)と呼ばれる衛星タグで、背びれの近くに取り付けるのが一般的だと公式サイトのQ&Aに書かれています。
なぜタグを付けるのかも、団体の言葉として公式サイトに載っています。Saving the Blue は、バハマで発信機を付けたシュモクザメの例を挙げていました。バハマ国内はサメの保護区なので守られているけれど、その個体がアメリカ側の海に出た途端、限定的な漁が認められている水域に入ってしまう。どこをどう通るかが分かって初めて、どんな規制が要るかを議論できる、という話です。
アプリで実際に見られるもの
買う前にいちばん気になるのが、結局どこまで見られるのかという点だと思います。アプリ「Fahlo Animal Tracker」で開けるのは、割り当てられた1匹ぶんのページです。
- 名前。研究チームが付けた個体名がそのまま出る(バズった投稿のナマケモノは「カリプソ」)
- 写真。現地のチームが撮ったものがある個体は載る
- タグを付けたときの経緯。いつ、どこで、どのチームが装着したかの短い読み物
- 地図と移動の履歴。点と線で経路が引かれ、点には日付が付く
- 移動距離。前回の位置からどれだけ進んだか、通算でどれだけ動いたか
- 同じ個体を追っている人数。名前のすぐ下に「#97,062 of 97,663」のように出る
- 地球儀の表示に切り替えて、自分の動物が世界のどこにいるかを俯瞰する機能
逆に無いものもはっきりしています。アプリの対応言語は英語とフランス語だけで、日本語はありません(2026年9月時点)。地名も動物の紹介文も英語のまま読むことになります。評価はApp Storeで4.8、レビューは36万件を超えていて、そこは安心していい規模です。
飼っている動物の行動をアプリで見る話とは、方向が逆になります。日本では8月に、犬用スマート首輪の行動記録に「7秒間吠えました」まで残るという投稿が23万いいねを集めていました。あちらは自分の犬を秒単位で記録するもので、Fahloは見ず知らずの野生の1匹が地球のどこにいるかを数か月かけて眺めるもの。同じ「動物をアプリで見る」でも、粒度がまったく違います。
日本から買うなら
公式サイトからも日本へ発送してくれますが、英語で住所を入れて国際配送を待つ必要があります。Amazonの日本のサイトにも並んでいるので、急ぐならこちらのほうが早いです(PR)。
公式の商品名と動物の対応は下の表のとおりで、Amazonでは日本語の商品名が付いているぶん選びやすくなっています。
ウミガメの「The Journey」。Fahloの出品は4千円台が並ぶなかで、ここに挙げた2本では安いほうで、公式の19.95ドルに近い値段です。
ジンベエザメの「The Quest」。日本語のタイムラインで「ぽちった」報告がいちばん多かったのがこれです。
なお、バハマで発信機を付けたシュモクザメの話が出てくるサメのライン「The Voyage」は、Amazonでは在庫切れが続いています。欲しい人は公式サイトを見に行くのが早いです。
地図が「今」を映していないことがある理由
アプリの地図は、必ずしもリアルタイムではありません。ここは公式が Fahlo Protection Ping という名前を付けて説明しているところで、表示されるルートはライブのこともあれば、遅れて出ることも、過去の記録だけのこともあります。パートナー団体が決めた安全上の手順に合わせている、と書かれています。
つまり、居場所が細かく分かりすぎると困る動物がいる。追いかけたいのは飼い主気分の人間だけとは限らないわけで、遅延はバグではなく仕様ということになります。
「一生追える」でも「自分だけの1匹」でもない
バズった説明文には「生涯追跡できる」という言い方が混ざっていましたが、公式FAQの答えははっきりしています。発信機が電波を出すのは平均して1年ほど。長くて2年、短ければ1年未満。6か月以内に途切れた場合は別の個体と交換してくれる、という保証の付き方です。
もうひとつ、「1本買えば1匹が自分のものになる」わけでもありません。FAQには、購入のなかで同じ動物が重複しないようにはしているが、他の人があなたと同じ動物を共有している可能性はある、と書かれています。
その規模が分かる画面を出していた人がいました。ナマケモノを追っているアカウントです。
地図の下に「#97,062 of 97,663」と出ています。Fahloのアプリは動物の名前のすぐ下にその子を追っている人数を表示する作りなので、カリプソという名前のナマケモノ1匹を、9万7千人以上が同時に見守っていることになります。マップに引かれた赤い線は木から木へのジグザグで、点に付いた日付は12月14日と12月28日。ナマケモノなのに、思ったより動きます。
日本語の反応も、がっかりより先に「そこがいい」という方向で並んでいました。「野生動物の保護活動に、こういう形で参加できるのは嬉しい」「ジンベイザメのをぽちった、楽しみー」といった声のほか、「マナティがおらん…」「パンダは!!!ない!!!」と品切れならぬ品揃えを嘆く人も。1匹を独占できないぶん、同じ子を9万人で追っている状況のほうが、むしろ話として面白いという受け取られ方でした。
Fahloはどこの国の、どういう会社か
聞き慣れないブランドなので、素性から書いておきます。Fahloはアメリカの会社で、創業は2018年。海が好きな Carter Forbes と DJ Gunter の2人が大学を出てから立ち上げたブランドです。企業情報サイトではノースカロライナ州に本社があるとされています。
公式サイトには本社の住所そのものは載っておらず、代わりに発送拠点が書かれています。テキサス州キャロルトン、フロリダ州オーランド、カナダのバンクーバー、イギリスのミドルセックスの4か所。日本に届くのはこのうちのどこかからです。
寄付の実績も公式サイトに数字が出ていて、これまでに560万ドル以上を保護団体に渡したとしています(2026年9月時点の表示)。提携先はバイソンのAZA SAFE、ネコ科のPanthera、ウミガメのSea Turtle Conservancy、ゾウのSave The Elephants、ホッキョクグマのPolar Bears Internationalなど、動物ごとに別の団体が並びます。
動物ごとに商品名が違う(サメは「Voyage」)
ここが公式サイトでいちばん迷うところで、商品名に動物の名前が入っていません。サメを追いたければ「Shark」ではなくThe Voyage Braceletを選ぶ、という作りです。英語のまま探すと自分の動物がどれか分からなくなるので、対応を並べておきます(すべて19.95ドル、2026年9月2日時点)。
| 商品名 | 動物 |
|---|---|
| The Voyage Bracelet | サメ |
| The Quest Bracelet | ジンベエザメ |
| The Journey Bracelet | ウミガメ |
| The Odyssey Bracelet | イルカ |
| The Expedition Bracelet | ゾウ |
| The Trek Bracelet | キリン |
| The Charge Bracelet | サイ |
| The Scout Bracelet | オオカミ |
| The Ascent Bracelet | ユキヒョウ |
| The Roam Bracelet | バイソン |
| The Lounge Bracelet | コアラ |
旅や探索を意味する単語で揃えてあるので、覚えるというより、その場で照らし合わせるための表です。
「クジラ」と「シャチ」のブレスレットは無い
日本で検索している人の言葉を見ていると、クジラやシャチを追いたくて探している人がそこそこいます。ただ、いま買えるものにクジラ単体もシャチもありません。近いのは「Whale Shark」=ジンベエザメ(The Quest Bracelet)で、英語名にWhaleが入っているぶん、翻訳や又聞きの段階でクジラに化けたのだと思われます。
ただし、これは公式サイトの現在のラインナップの話です。公式が挙げている提携団体の一覧にはクジラやホッキョクグマ、ペンギン、ゴリラを扱う団体の名前も出てきますし、日本のAmazonには「Fahlo クジラ追跡ブレスレット」や、記事の反応で名前が挙がっていたマナティの「Drift」が実際に出品されています。過去に売っていたラインが流通に残っている形で、シャチだけはどちらにも見当たりません。
追っている動物が動かなくなったら
地図の点が止まったままになる、という質問も出ています。公式FAQの答えは、購入から6か月以内に信号が途切れた場合は別の個体に交換、それ以降に止まった場合は新しい商品を買ってほしい、というものです。
発信機が止まったこと自体は、その動物に何かあったことを意味しません。電池切れか、タグが外れたか、そもそもFahlo Protection Pingで表示が遅らされているか。どれなのかは、買った側からは区別が付かない作りになっています。
買う前に見ておくといいところ
現在サイトに並んでいるのは11種類で、ナマケモノのように今の一覧には無い動物を追い続けている人もいます。シーズンごとにラインナップが入れ替わる形のようで、欲しい動物がいるうちに、という買い方になりそうです。
バズった投稿に出てくるナマケモノも、公式の一覧からは外れていますが、Amazonには出品が残っています。ただし割り当てられる個体は買った人ごとに決まるので、上のカリプソに当たるとは限りません(PR)。
アプリは iOS 17.6 以降、Android 13 以降が対象。QRコードは1回きりで、読み込んだ端末のアカウントに紐づくので、誰かと使い回すことはできません。
追跡が終わるのは、たいてい発信機の電池が切れたときです。動物がいなくなったわけではない、という当たり前のことを、アプリの画面で毎回思い出すことになります。