首都圏外郭放水路の「地下神殿」、見学エリアの泥5cmは手作業で掃除
埼玉の「地下神殿」こと首都圏外郭放水路の調圧水槽に、泥が約5cmたまった。見学エリアの分は、人の手で押し出している。
公開したのは施設を管理する国土交通省 江戸川河川事務所だ。10月1日の夕方、公式Xに清掃中の動画を出した。
投稿によると、長雨の影響で9月だけで3回、調圧水槽に水が入った。そのたびに運ばれてきた泥が床に積もり、約5cmになったという。
横一列で泥を押していく
動画は18秒ほど。柱が並ぶ床の上で、11人ほどが横一列になり、柄の長い道具で泥水を前へ押している。
あの広い床を人の手でやるのかと思うと、見ているだけで腰にくる。ただ、投稿には「清掃は見学エリアのみで実施しています」とただし書きがある。全面を手でやっているわけではない。
もうひとつ気になる臭いについても、先回りして書かれていた。
※雨水のみの流入のため、臭いはほぼありません。
入ってきたのは雨水だけなので、そこは安心していいらしい。投稿は10月2日の午前中の時点で1万4,000件を超えるいいねを集めていた。
地下神殿はどれくらい広いのか
首都圏外郭放水路は、洪水を防ぐために造られた「世界最大級の地下放水路」だ。放水路は地底50mを通っていて、2002年6月から暫定的に動き始めた。
地下神殿と呼ばれているのは、その中の調圧水槽という部屋だ。投稿のハッシュタグも「#首都圏外郭放水路」「#調圧水槽」と堅い語が続いたあとに「#地下神殿」が来るので、「急にどうした😂」と反応した人もいた。ただ江戸川河川事務所は公式サイトでも、柱と空間の巨大さから「地下神殿」とも表現される施設と紹介している。
その調圧水槽の紹介ページによると、サイズはこうなっている。
長さ177mは、サッカーのピッチ(105m前後)よりずっと長い。実際、天井にあたる地上部分はサッカー場として使われている。中に立つ柱は59本で、1本が高さ18m・重さ500tあるとされる。
床に5cmの泥と聞くと少なく感じるけど、この面積に広がった5cmだ。見学エリアだけでもかなりの量になる。
「プロに頼まないの?」への答え
投稿やニュース動画への反応には、「プロに頼まないの🙁?」「こういうのこそロボット導入してほしい」という声があった。
気持ちはわかる。でも、重機を使う清掃はちゃんと別にある。江戸川河川事務所は2024年12月、重機による全面清掃の様子を投稿していた。
この投稿によると、重機を使った全面清掃は1〜2年に1度。ふだんは見学会で使う範囲だけを手作業で掃除している。2024年は11月20日に、地上からクレーンでホイールローダーを調圧水槽へ吊り下ろした。
春日部経済新聞の記事では、重機は天井にある縦4m・横10mの開口部から入れると紹介されている。泥はペイローダーですくい、不整地運搬車で運び出す。地下22mの部屋に重機を入れるには、天井の穴からクレーンで下ろすしかない。
つまり今回の手作業は、見学会をすぐ再開するための掃除だ。全体の大掃除は、台風シーズンが落ち着いたころに重機でまとめてやる。
9月は見学会も振り回された
9月は流入が続いた月だった。9月19日には見学会の公式アカウントが、立入りを制限していた地下神殿をスタッフ総出で清掃し、底盤まで降りられるようにしたと告知している。
見学会のよくある質問によると、雨の日でも見学会はほとんど通常どおり開かれる。ただ施設が動くと、立坑と調圧水槽に水が入り、排水・後処理・清掃・安全点検に時間がかかる。そのあいだはコースを一部変えて開催するという。
泥がたまるのは、施設がちゃんと仕事をした証拠でもある。
ニュースでも清掃が紹介された
テレビ朝日系のANNも、10月2日に今回の清掃を取り上げている。
地下神殿は映画『翔んで埼玉』(2019年)のロケ地にもなった場所だ。見学会はコースが全7種類あり、どのコースでも地下神殿に入れる。いちばん人気の地下神殿コースは約55分・定員55名で、料金は1人1,200円。
見学に行って床がきれいだったら、それは誰かが横一列で押した床かもしれない。泥5cm分の手間を思い出しながら柱を見上げてみて。