「ドレンチェリー」は本物のさくらんぼ、緑のアンゼリカの正体はフキ
ケーキの上の真っ赤な“ニセモノっぽいサクランボ”は、ちゃんと本物のさくらんぼでできている。名前は「ドレンチェリー」だ。
10月2日の深夜2時、Xに投稿された母親の思い出話が約1.2万いいねを集め、朝にはYahoo!リアルタイム検索の急上昇に「ドレンチェリー」と「アンゼリカ」が並んだ。
発端は「オカンの風邪ケーキ」
投稿したのは @RnR_Equipment さん。お母さんは風邪で熱を出すと、決まってあのケーキを欲しがったそうだ。
お母さんの言い分は「あのニセモンの体に悪そうなサクランボみたいなやつがのった安いケーキを食べんと死ぬかもしれん…」。言われるたびに、投稿者さんが自転車で買いに行っていたという。
そのニセモンっぽいやつが「ドレンチェリー」という名前で、本物のサクランボから出来ていると最近知った、というのが投稿のオチだ。
写真には「ドレンチェリー」と書かれた赤い業務用の袋と、「ドレンチェリー 緑」の袋が写っている。そう、緑色のドレンチェリーもある。
中身は種抜きさくらんぼの砂糖漬け
辞書の説明はシンプルだ。コトバンク(世界の料理がわかる辞典)によると、ドレンチェリーは製菓材料の一種で、さくらんぼの種をとって砂糖漬けにし、赤く着色したもの。
色は赤だけでなく、黄や緑もある。クッキーやケーキの飾りにするほか、刻んでフルーツケーキやアイスクリームに混ぜて使う。
名前の由来も同じ辞典に載っていて、英語の「drained cherry」から来ている。“ドレン”は排水口のドレンと同じ語だ。水分を抜いてから糖液に漬ける工程に由来するという説明も見かけるが、辞書に製法までは書かれていない。
原材料の1番目は「さくらんぼ」
製菓材料の通販サイト cotta で売られている「ドレンチェリー 赤 400g」の原材料名は、次の順に並んでいる。
- さくらんぼ
- 砂糖、水飴
- 合成着色料(赤102)
- 香料(チェリーオイル)
- 酸味料(クエン酸)
いちばん多いのはさくらんぼで、あの不自然なほどの赤は着色料の赤102によるもの。“体に悪そう”に見える理由はだいたいこの色だろう。同じ商品の説明には、イタリア産の桜桃を製菓用に一粒ずつ選んでいるとある。
投稿の写真の赤い袋の下のほうには「ワカショク」の文字が見える。そのワカショクが出しているドレンチェリー(赤)100gの説明は、さらに細かい。原料はイタリア・ナポリ郊外で採れたインペリアル種とナポレオン種で、粒は21mmサイズに限定している。
写真の袋は100g入りよりずっと大きく、同じ中身かまでは分からない。お母さんのケーキの実がどこ産だったかも不明だが、少なくとも市販品の説明を見る限り、原料はイタリアのさくらんぼが定番らしい。
緑のアンゼリカは日本だとフキ
ドレンチェリーと一緒にレトロなお菓子を飾ってきたのが、緑色の細長い「アンゼリカ」だ。こっちは話が逆になる。
コトバンク(改訂新版 世界大百科事典)によると、本物のアンゼリカはヨーロッパのアルプス地方原産とされるセリ科の越年草。薬効があることから「天使」の意味の名前が付いた。主な産地は南フランスとドイツだ。
その茎の砂糖漬けが製菓用のアンゼリカなのだが、日本ではフキの葉柄で代用し、それをアンゼリカと呼んでいるという。同じ事典には、本物は香りが高く、透き通った緑色をしているとも書かれている。
つまり「ニセモノっぽい赤い実」はちゃんとさくらんぼで、隣の緑のほうが別の植物で代わりを務めていた。
白くまの顔にもいる
アンゼリカは鹿児島のかき氷「白くま」の飾りにも使われてきた。名前の由来は“白くま”の名前の由来をまとめた記事で紹介していて、そこでは「セロリの仲間の砂糖漬け」と書いている。
本物のアンゼリカはセロリと同じセリ科なので、その説明で合っている。ただし日本で「アンゼリカ」と呼ばれてきたものは、事典によればフキの葉柄で代用したものだ。
熱が出たら食べたいもの
投稿のお母さんにとって、あの赤い実がのったケーキは風邪のときのお守りみたいなものだったのだろう。ニセモノ扱いされながら、中身はちゃんとさくらんぼだった。
昔ながらのケーキやクッキー缶で赤い実を見かけたら、さくらんぼだと思って食べてみてほしい。緑の細切りのほうは、たぶんフキだ。