「水35ℓ」は人体錬成材料、元ネタはハガレン1話のエド
「水35ℓ、炭素20kg」で始まる数字の列は、『鋼の錬金術師』の人体錬成の材料だ。エドが大人1人分の中身として挙げたリストである。
2026年10月8日の朝、Xでこの羅列だけを並べた投稿が流れてきた。材料の名前と量が11個続き、最後は「何をしようとしているのかすぐにわかる」で締められている。
投稿したのは@nikutaberuruさん。翌日までにいいねは約5.6万、返信は967件ついた。わかる人には一瞬でわかり、わからない人には化学の宿題にしか見えない。そのギャップがウケた投稿だ。
正体はエドの材料リスト
このリストは、主人公のエドワード・エルリックが「成人1人分の体を作る材料」として挙げるものだ。
最初に映像で出たのは、2003年版アニメの第1話「太陽に挑む者」。2003年10月4日、MBS制作の土曜18時枠で放送された回である。原作でも第1話に同じ場面があり、15〜16ページにあたる。
数字は2003年版アニメの英語書き起こし(Wikiquote)に載っている値で、バズ投稿の11項目と一致する。
ただ、英語圏のミームまとめサイトKnow Your Memeでは塩分が200gになっている。媒体や版によって細部がぶれているようなので、塩分だけは「250gか200g」と覚えておくのが無難だ。
何の話をしている場面か
相手は、エセ教主の起こす「奇跡」を信じている少女ロゼ。彼女に向かって、エドがこのリストを並べてみせる。
言っていることの中身はこうだ。大人1人分の材料は全部わかっていて、子どもの小遣いでも買えるくらい安い。それなのに、科学で人間を生き返らせた例はひとつも無い。つまり、何かが足りない。
1話の時点でもう、作品の中心にある「人を作る・生き返らせることはできるのか」という問いが置かれている。
錬金術の基本原則として作中で繰り返される等価交換の考え方も、このリストと地続きだ。材料はそろうのに足りないものがある、という引っかかりが、物語全体の入口になっている。
海外でもミームになった
このポーズは英語圏でも使われている。2018年10月23日、9GAGに「That is not the law of equivalent exchange」というキャプション付きで投稿された。2019年にはRedditのアニメミーム板で広く出回り、「This Is Not the Law of Equivalent Exchange」の名前で知られるようになった(Know Your Meme調べ)。
日本では材料リストの数字のほう、海外では両腕を広げたエドの絵のほう。同じ1話の場面が、別々の形でネットに残っている。
実際の人体と比べると
せっかくなので、本物の人体の中身と比べてみる。
英語版WikipediaのComposition of the human bodyによると、人体の元素を重さの割合で見ると次のようになる。
- 酸素 65.0%
- 炭素 18.5%
- 水素 9.5%
- 窒素 2.6%
- カルシウム 1.3%
- リン 0.6%
体重70kgの大人で計算すると、炭素は約13kg。エドのリストの20kgより7kgほど少ない。リンも70kgなら約420gで、リストの800gの半分ほどだ。
いちばん多い酸素は、リストに単体では出てこない。水35ℓの中に入っている、という扱いになる。
リストは「水」「石灰」「硝石」のように化合物の名前で数えているので、元素の割合ときれいに比べられるものではない。それでも炭素とリンは、ざっくり計算しても多めに出る。作中の台詞としては「材料はこれくらい安い」と伝われば十分なので、細かい数字の正確さは気にしなくていい部分だろう。
古のオタクの合言葉
2003年版の放送から23年がたった。それでも数字だけで元ネタが通じるのは、1話の冒頭でこのリストが強く印象に残ったからだ。
初めて見た人には化学のテストにしか見えないので、気になったら2003年版の1話を観てみてほしい。冒頭の数分で「あのリストか」がつながる。作品の情報は公式サイトやWikipediaのアニメ版の項目で追える。