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「タックネーム」の決め方、米海軍の正解はポップコーン片手の投票

戦闘機パイロットのあだ名、通称「コールサイン」(空自では「TACネーム」)は、部隊の仲間がポップコーンを食べながら投票して決める。米海軍の公式記事に、そう書いてある。

由来は見た目や性格、名前のもじり、そして若手時代のやらかし。かっこいい響きの裏に、しょうもない出来事が隠れていることもある。

発端はドーナツの図解

きっかけは、イラストを描く @jpg2t785 さんが10月8日の朝に投稿した「パイロットのコールサインとは」という図解だ。

左のコマには、腕を組んだ女性パイロットと「DONUT」の文字。由来の説明は「隠れてドーナツを食べていたのがバレた逸話から」となっている。名前だけ聞くとなんとなく強そうなのに、中身はつまみ食いの発覚だった。

図解では、コールサインを2種類に分けている。

  • 個人のコールサイン。仲間内で呼び合うニックネームで、性格や外見、失敗談などから付く。航空自衛隊では「TAC(タック)ネーム」と呼ぶ
  • 無線・戦術上のコールサイン。「RAVEN 1」「RAVEN 2」のように通信で機体や部隊を見分ける呼び名。大統領が乗った米空軍機が「Air Force One」になるのもこっち

この記事で扱うのは前者のほうだ。

「主にやらかしで決まる」は本当か

この図解を引用して、@iiyamaline さんが「海軍のコールサインは主に『やらかし』で決まるそうです。」と書いた投稿が2万5千いいねを超えた。

@iiyamaline さんが「個人的に好き」と挙げているのは2つ。電子レンジでブリトーを温めすぎて発火させた「NUKE」と、離陸時にフレアを滑走路へ大量にばらまいた「SCORCH」だ。どちらも英語の出典までは確認できなかったので、ここでは紹介された例として読んでほしい。

では、本当に「主に」失敗で決まるのか。米海軍ペンサコーラ航空基地が2022年に出した記事「The Story Behind Call Signs」が、由来をこう説明している。

Oftentimes a call sign is awarded based on a person’s traits, be they physical or character, or stem from a play on their names. Another source for call signs are the mishaps and mistakes junior aviators run into.

訳すと、コールサインは見た目や性格の特徴、名前のもじりから付くことが多い。もう1つの由来が、若手パイロットのしくじりや失敗、という書き方だ。

失敗談は由来の柱の1本で、全部が全部やらかしというわけではない。とはいえ、しっかり公式の由来リストに入っている。

決め方はポップコーン投票

同じ記事で、海軍航空学校司令部の副長 Brandy McNabb 中佐が、自分のいた部隊での決め方を語っている。

コールサインのない新人が来ると、ホワイトボードに名前を書き、候補を10個ほど並べる。最後の選定は待機室(Ready Room)での特別なイベントになる。

We would make popcorn, review all of the options and put it to a vote to select the best call sign.

ポップコーンを作って、候補を全部見直して、投票でいちばんいいのを選ぶ。完全に飲み会のノリである。

ただし最終決定権は司令にある。記事には「名前が適切かを確かめるため」とあるので、さすがにアウトな案はここで止まるらしい。付くのはだいたい若手のうちで、選ぶのは部隊だという。

McNabb 中佐自身のコールサインは「Harry」。ハリー・ポッターに似ているから付いたそうで、本人は気にしていないと話している。見た目由来の典型例を、本人が自己申告しているわけだ。

かっこいい名前は映画の中だけ

コールサインと聞いて多くの人が思い浮かべるのは、映画『トップガン』だろう。主人公 Pete Mitchell は「Maverick」、ライバルの Tom Kazansky は「Iceman」、相棒の Nick Bradshaw は「Goose」と呼ばれていた。

ところが現実はそんなに甘くないらしい。米軍事メディア「Task & Purpose」の記事で、退役海軍中佐の Chris Harmer 氏は「コールサインの大半は、パイロットの鼻っ柱を折るためのものだ」と語っている。

同じ記事では、空軍の Keith Anderson 中佐の話も紹介されている。若手の失敗談の再話から付くことが多く、その話は最低10%は本当でなければならない、という。逆に言えば、残りの9割は盛っていいということになる。

空自の「TACネーム」も変わる

日本の航空自衛隊では、同じものを「TACネーム」と呼ぶ。乗りものニュースの解説記事によると、転属などで変わることもあるそうだ。

同記事が例に挙げているのが、1990年の邦画『BEST GUY』だ。自信過剰な主人公の呼び名は孫悟空にかけた「ゴクウ」。ベイルアウト(緊急脱出)から生還した吉永3佐は「ゾンビ」と呼ばれている。後者はもう、名前を聞いただけで何があったか分かる。

英語版 Wikipedia の「Aviator call sign」にも、由来の例や映画の呼び名が一覧でまとまっている。

由来を知ると見え方が変わる

戦闘機ゲームでも、パイロット同士はコールサインで呼び合うのが定番だ。シリーズ最新作の話題はエースコンバット8の特典「ゼロ」の記事にまとめている。

次に強そうなコールサインを見かけたら、裏にドーナツやブリトー級の出来事がないか、ちょっと想像してみてほしい。

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