人間の体にも“猫のような模様”がある? ふだんは見えない皮膚の縞「ブラシュコ線」がすごい
自分の体に、見えない模様が刻まれている。そう聞くと少しゾクッとしますが、これはオカルトではなく、れっきとした皮膚科学の話です。「実は人間にも猫の模様みたいなものがあって、普通は見えない」という投稿が、じわじわと“へぇ”を集めました。
頭からつま先まで走る「ブラシュコ線」
この見えない模様は「ブラシュコ線」と呼ばれています。1901年、ドイツの皮膚科医アルフレッド・ブラシュコが、ホクロやアザ、湿疹といった皮膚の症状が、まるで見えない線をなぞるように並んで現れることに気づいて発見しました。
ブラシュコ線は、頭のてっぺんから腕、胴体、足の先まで、体じゅうを縞模様のように走っています。背中ではV字やうずまき、お腹や手足では波打つような曲線を描くのが特徴。ただし、健康な肌ではこの線を肉眼で見ることはできません。おもしろいのは、この線が血管や神経の流れに沿ったものではなく、人類にほぼ共通する“生まれつきのライン”だという点です。
発疹が出たときだけ、模様が浮かび上がる
ふだんは隠れているブラシュコ線ですが、ある条件でその存在がうっすら見えることがあります。それが、皮膚に発疹などのトラブルが起きたとき。症状がこの線に沿って帯状に現れるため、はからずも“自分の模様”が浮かび上がるのです。冒頭の投稿でも、「発疹がこの線に沿って出るので、(症状の出ている)その人は今、自分の体の模様を確認できる貴重な状態にある」と紹介され、なんとも言えない気持ちにさせられます。
正体は「モザイク」。三毛猫と同じ仕組み
では、なぜこんな模様ができるのでしょうか。カギになるのが「モザイク」という現象です。私たちの体は1個の受精卵から細胞分裂を繰り返して作られますが、その過程でわずかに性質の違う細胞が生まれ、それぞれが増えて広がっていくと、性質の異なる細胞のパッチワークができあがります。この境界がブラシュコ線として表れる、と考えられています。
そして、この仕組みは動物の毛色にも通じています。毛の色を決める遺伝子はX染色体と関係が深く、モザイクによって色の違う部分が生まれるのが、三毛猫のあの独特なブチ模様。つまり人間のブラシュコ線と三毛猫の模様は、いわば“親戚”のような関係にあるわけです。「人間にも猫みたいな模様がある」という言葉は、比喩ではなく仕組みのうえでも的を射ていたのですね。
ちなみにネット上では、この見えない模様について「人間には見えないけれど、これが見える“謎の捕食者”から身を隠すための迷彩なのでは」といった空想も飛び交い、盛り上がりました。もちろんそんな捕食者はいませんが、そう考えたくなるほど、私たちの体はまだ知らない不思議を隠しているようです。もっと詳しく知りたい人は、科学メディアナゾロジーの解説記事などをのぞいてみてください。