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「家庭科のドラゴン」が青い鳥文庫で小説化、ドラゴンの名前はルール・レジェ

小学校の家庭科で配られた裁縫箱の、あのドラゴン。翼を広げて牙をむいた、明らかに裁縫と関係ない顔つきのやつだ。9月16日、この「家庭科のドラゴン」が講談社の青い鳥文庫で小説になることが明らかになった。青い鳥文庫といえば『怪盗クイーン』や『人狼サバイバル』が並ぶ児童書の定番レーベル。そこに裁縫箱の柄が、主役側のキャラとして入ってくる。

『小説 家庭科のドラゴン (上)』は11月11日発売

青い鳥文庫の公式の書誌ページによると、書名は『小説 家庭科のドラゴン (上)』。作はもえぎ桃さん、絵は岩本ゼロゴさんで、発売日は2026年11月11日だ。紹介文の書き出しは「平成男児の憧れ・あの「家庭科のドラゴン」が、ついに青い鳥文庫に降臨!」。降臨、という語をレーベル公式が使っている時点で温度が高い。

タイトルに(上)と入っているので、少なくとも下巻まで続く。208ページで本体900円という値付けも、青い鳥文庫の並びに素直に収まるサイズ感だ。

主人公は裁縫が得意な小5、武器は銀の針と糸

中身がまた、想像していたより本格的なファンタジーだった。公式のあらすじはこうだ。「裁縫が得意な小学5年生・天羽結人(あもう ゆいと)は、壊れたバッグを直そうとして、不思議なドラゴンの裁縫箱を開いてしまう」。開けた瞬間に、異世界〈ドラゴンアース〉へ飛ばされる。

そして決め台詞が「家庭科は“生きる力”。銀の針と糸を武器に変え、結人は仲間を守るため立ち上がる」。裁縫箱を開けて異世界という流れはなろう系の異世界転移そのものなのだが、チート能力にあたるものが「家庭科」というのが効いている。剣でも魔法でもなく針と糸で戦う小5、というだけで1冊読める気がしてくる。

対象読者は「小学中級から」で、すべての漢字にふりがな付き。つまり今の小学生が読む本として作られている。裁縫箱を懐かしがっている20代30代ではなく、これから裁縫箱を買う側の子どもが主な読者ということだ。

ドラゴンの名前は「ルール・レジェ」だった

そもそもあの柄は何者なのか。デザインを手がけたのは大阪のキャラクター制作会社サンワードで、同社の実績ページに開発の経緯がまとめられている。それによると「誰もが一度は見たことのある『家庭科のドラゴン』が開発されたのは1999年のこと」。1993年に中学校で男子の家庭科が必修になった6年後で、「男児が家庭科を楽しめるように」という空気が高まっていた時期にあたる。

学習教材メーカーの新学社(京都市)が「どんなキャラが裁縫道具のパッケージに使われていれば男児に選んでもらえるのか」を考え、ドラゴン案が出たものの設計のノウハウが無く、サンワードに話が来た。制作側が狙ったのは、当時流行っていたRPGに多い西洋神話風の世界観の再現と、いい意味で「教育現場らしくない」デザイン。ボツになったものを含めるとキャラクターのアイデアは50以上出ているという。

名前があること自体が初耳という人が多いと思う。小学生のころ、あの裁縫箱を選んだ理由は「なんかカッコいいから」以上でも以下でもなかったはずで、裏では重力を司る神獣という設定が組まれていた。

裁縫セットは累計100万箱以上、いまはTシャツもコミケも

ねとらぼの取材記事によると、ドラゴンは「強くかっこいい」ものを求める小学生の感性に刺さり、裁縫箱は累計100万箱以上を売り上げた。サンワード側の実績ページでは「選べる裁縫道具」の中から一番人気になり、一学年の児童を対象に1年で10万個以上、新学社の商品ラインナップで売上No.1という数字が出ている。柄は裁縫箱だけでなく、彫刻刀からエプロンまで学校生活のあらゆる教材に広がった。小学校の教室で25年も君臨していれば、そりゃ全員の記憶に残る。

火がついたのは近年だ。2021年にハードケースの製造が終了し、創業者の病気で事業が危うくなったところから、創業者の息子が家業に入って立て直しに動いた。辰年の2024年にはコミックマーケットへの出店販売を始め、公式Xでの出展告知には約4万件のいいねが集まったという。ねとらぼによると、ブースに来た客の2〜3割は女性で、「女の子だからやめなさい」と言われて買えなかった人が大人になって買いに来ていた。プロレス団体「ドラゴンゲート」とのコラボも同じ2024年から。今はアパレルやクリアファイル、アクリルキーホルダーまで出ていて、Tシャツを探して検索する人がいるのはこの流れだ。

変化球としては、ロックバンド「超能力戦士ドリアン」の楽曲「ドラゴンの裁縫セット(笑)」がある。小学生時代を振り返って「マジで何がよかったんだ」と自虐的に歌う曲なのに、公式が素材を提供してコラボが成立した。ドラゴン側の懐の広さが話題になったとねとらぼは書いている。25周年企画ではニコニコ超会議への初参戦やVRChat向けの3D衣装まで手を広げていて、裁縫箱の柄という出自からずいぶん遠くまで来ている。

ちなみに学校の家庭科まわりは、エプロンの柄に漫画の集中線「ドーン!!」が新登場していたなんて話もある。教材のデザインは、大人が思っているより攻めている。

小説の発売は11月11日。平成の小学生が抱えていた裁縫箱の柄が、今の小学生が読む本の棚に、名前と設定を持って戻ってくる。書店で見かけたら、表紙のドラゴンがあの顔つきのままかどうかを確かめてみてほしい。

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