口を大きく開けて“待ち伏せ”する肉食のホヤ「オオグチボヤ」。深海からやってきた激レア生物がアクアマリンふくしまに
ぽっかりと大きな口を開けたまま、深海でじっと動かない。まるでニヒルに笑っているようにも見えるこの生きものは、深海生物「オオグチボヤ」。アクアマリンふくしま(福島県いわき市)が、めったにお目にかかれないこの珍生物の展示を始めました。
生きて採るのが難しい、深海の珍客
アクアマリンふくしまの生き物情報によると、展示は 2026年7月11日 から。場所は2階の「親潮アイスボックス」です。オオグチボヤ(学名 Megalodicopia hians)は、水深300〜1000メートルの海底で、岩盤や海に沈んだ木などに くっついて暮らしています。富山県など日本海側の一部で分布が確認されているものの、生きたまま採集されることは非常に稀。飼育も難しい生きものだけに、会えるうちが貴重な機会です。
名前の「大口」は、ダテじゃない
さて、この生きもの、名前に「ホヤ」とついています。ホヤといえば、東北の珍味としておなじみの、あの海のパイナップルのような生きもの。ふつうのホヤは、海水を体に吸い込んでは吐き出し、その中に含まれる小さなプランクトンを“こしとって”食べる。いわば、水を濾(こ)して静かに暮らす穏やかな生きものです。
ところが、オオグチボヤは違います。英名を「Predatory tunicate(肉食性のホヤ)」というとおり、ホヤの仲間なのに“肉食”。その食べ方が、名前の由来にもなっています。
タネ明かし:口を開けて、流れてくる獲物を捕らえる
オオグチボヤは、水の流れが来る方向へ向けて、大きな口(入水孔)をぱっくりと開けて待ち構えます。そして、流れに乗ってやってきた小さな生きものが口の中に入ると、袋状の口を閉じて捕らえてしまうという、いわば “待ち伏せ漁”のスタイル。エサの少ない暗い深海で、動き回らずにじっとエネルギーを節約しながら、流れが運んでくるごちそうを待つ、理にかなった作戦です。
ふつうのホヤが「水をこして食べる」のに対し、オオグチボヤは「口を開けて獲物をつかまえる」。この違いこそが、名前の「大口」に込められた正体です。じっと動かず口を開けているだけなのに、しっかり“狩り”をしている。見た目のとぼけた表情とのギャップも、この生きものの面白さです。
その“ニヒルな笑い”っぷりは、アクアマリンふくしま公式が過去にオオグチボヤを展示した際の投稿がわかりやすいです。この大きく開いた口こそ、獲物を待ち構える漁のかまえなのです。
ニヒルな笑顔に、会いに行くなら早めに
深海の生きものは、水温や水圧など、水族館で長く飼うのが難しいものが多いのが実情です。オオグチボヤも例にもれず飼育が難しいとされ、展示期間には限りがある見込み。あの“ニヒルな笑い”を浮かべた顔を生で見たいなら、早めの来館がおすすめです。
ふだんは光も届かない深海で、ただ口を開けて流れを待つ。そんな地味で、けれど理にかなった暮らしぶりを知ると、水槽の前でつい話しかけたくなる。深海の奥深さを教えてくれる、静かな人気者の登場でした。
※展示状況はアクアマリンふくしまの発表にもとづく情報です。生き物の展示は状態により終了・変更となる場合があります。最新情報は公式サイトでご確認ください。