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Jet2ミーム「Nothing beats a Jet2 holiday」元ネタと全文、曲名

Nothing beats a Jet2 holiday(ジェットツーホリデー)(じぇっとつーほりでー) ・ 2026年9月20日 公開

砂漠でラクダに突き飛ばされる人、階段から転げ落ちる人、水没したホテルの部屋。そういう散々な映像に、やたら明るい女性の声で「Nothing beats a jet2 holiday」と乗ってくる動画をTikTokで見たことがあると思います。声も曲も同じ、映像だけが毎回ひどい。あれの正体はイギリスの旅行会社のテレビCMです。

日本語圏では「なんて言ってるのかわからないけど耳から離れない」状態で流入している段階で、検索されているのもだいたい「あの英語なに」「あの曲なに」の2つです。両方まとめて片付けます。

「Nothing beats a Jet2 holiday」とは?

Jet2(ジェットツー)はイギリスの航空会社で、パッケージ旅行のブランド Jet2holidays も持っています。「Nothing beats a Jet2 holiday」はそのテレビCMのナレーション冒頭の一節で、直訳すると「Jet2の休日に勝るものはない」。要は「うちの旅行が最高」という、どこの旅行会社でも言いそうなキャッチコピーです。

ミームとしての使い方は、そこから完全に裏返っています。旅行先での事故、身内の喧嘩、動物に襲われる瞬間、そういうカオスな映像にこの音声をかぶせて「最高の休日でしたね」とやる。褒め言葉をそのまま持ってきて真逆の状況に貼るので、声のテンションが高ければ高いほど画面がひどく見える仕掛けです。

陽気な音楽で失敗オチを飾るという型自体は棺桶ダンスと同じですし、映像に別の音を乗せて意味を反転させるやり方はニヒリストペンギンとも共通しています。Jet2が違うのは、乗せている音が誰かの作品ではなく実在の企業の広告そのものだという点でした。

元ネタ・由来

もとのCMは、いきなりミームとして生まれたわけではありません。Jet2が2022年12月23日の公式プレスリリースで発表した全国キャンペーンの刷新版です。同日からイギリスのテレビで放映が始まり、初回の枠は『The Last Leg』のクリスマス特番や『コロネーション・ストリート』でした。

撮影地はスペインのマヨルカ島。若いカップル向け、カップル向け、ファミリー向けの3バージョンが作られ、まず30秒版、翌1月から10秒版が流れています。楽曲のJess Glynne「Hold My Hand」についてリリースは「once again(今回もまた)」と書いていて、文句も曲もこのとき発明されたわけではありません。どちらもすでにJet2の看板として定着していたものを、映像だけ撮り直して出し続けていた形です。

ミームで使われている映像は、2024年1月4日に公式YouTubeへ上がったセール版です。

海と青空、水着の家族、はしゃぐ子ども。ナレーションが割引額を読み上げるだけの、ごく普通のセールCMに見えます。

火が付いたのはTikTok側でした。2024年8月1日、第三者のアカウントがこのCMの音声を転載し、「Jet2 Advert」というサウンドとして登録されます。Know Your Memeによれば、この音源はおよそ1年で12万4,000本の動画に使われました。同年11月には、ラクダが人に突進する動画にこの音を乗せたものが1,700万再生・370万いいねまで伸びています。皮肉の型として本格的に広がったのは2025年3月ごろからでした。

なお「最初に皮肉として使った人」は特定されていません。Know Your Memeも最古の例を確定できておらず、発案者は不明のままです。

ナレーション全文

聞き取れそうで聞き取れない、と言われている全文がこれです。

Nothing beats a jet2 holiday, and right now you can save £50 per person. That’s £200 off for a family of 4. We’ve got millions of free child place holidays available with 22kg of baggage included. Book now with jet2holidays. Package holidays you can trust!

内容は「Jet2の休日に勝るものはなし。今なら1人50ポンド引き、4人家族なら200ポンド引き。子ども無料の枠が何百万席もあって、22キロの手荷物込み。今すぐjet2holidaysで予約を。信頼できるパッケージ旅行です」。

つまり中身は割引の告知しか言っていません。この「言っていることは値段の話だけなのに、声だけが人生最高の瞬間みたいなテンション」というギャップが、ミームの燃料になっています。ちなみに「22kgの手荷物込み」は2022年の公式リリースにある条件(22kgの荷物と送迎込み)と一致しているので、聞き間違いではありません。

声の主はゾーイ・リスター

ナレーションを担当しているのはZoë Lister(ゾーイ・リスター)というイギリスの俳優・ナレーターです。Channel 4のドラマ『Hollyoaks』でZoe Carpenter役を2006年から2010年まで演じ、2017年4月に短期間だけ同じ役で戻ってきた人です。Jet2のCMナレーションは2019年から担当しています。

2025年7月にCNNとNBC Newsが本人を取材していて、そこで「この収録をしたのは1年半くらい前」と語っています。逆算すると2024年の頭、ちょうどYouTubeにセール版が上がった時期です。自分の仕事の音声が、知らないうちに世界中の事故動画に貼られていたことになります。同じ取材の時点で、使用された動画は100万本を超えていました。

曲はJess Glynneの「Hold My Hand」

一緒に流れている曲は、イギリスのシンガーJess Glynne(ジェス・グリン)の「Hold My Hand」です。2015年のシングルで、当時UKシングルチャート1位を獲っています。ミームで聞こえるのはサビ頭の「Darling, hold my hand」の部分です。

ミーム化で起きたことが、なかなかえげつない規模でした。2025年9月4日、TikTokがこの曲を「Song of the Summer」に認定します。NMEによれば、この時点で使用動画は450万本、再生は800億回。さらに同年12月9日にはTikTok UKの年間楽曲1位になり、使用された動画はおよそ660万本、グローバルの年間ソングでも2位に入りました。

面白いのは、ここまで鳴っていたのにUKシングルチャートには再エントリーしなかった点です(BBC Newsbeat)。SNSで死ぬほど流れていることと、人がその曲をちゃんと聴きにいくことは別だ、という見本になっています。Jess Glynne本人はこの流行を「すごく面白い」と受け止めつつ、自分はJet2の便に乗ったことがないと明かしています(NME)。

公式が自分からミームに乗った

普通ならブランドイメージの都合で嫌がりそうなところですが、Jet2は止めにいきませんでした。2025年4月21日、公式TikTokアカウントが自ら新しいサウンドを配布し、#Jet2Challenge というハッシュタグ企画を始めます。優勝者には1,000ポンドのバウチャー、という賞品付きでした。

この投稿は2か月で1,200万再生・11万9,000いいねまで伸びています。自社の広告が事故動画のBGMにされている状況に対して、「じゃあもっと良い音源用意したんで使ってください」と返した形です。

いじられた企業が怒らずに乗るほうが得をする、という判断は近年けっこう例があって、日本だとデュオ死亡の一件や、悪口の呼び名でエゴサしていると明かしたデュオリンゴ公式の対応あたりが同じ系統です。

公式YouTubeのセール版CMは、2026年9月20日時点で996万再生まで来ています。Know Your Memeが記録している最初の1年の数字が8万2,000再生だったので、ミームが120倍に押し上げた計算です。追加の広告費を一切かけずに自社CMの再生数がここまで伸びた例は、そうそうありません。

使い方・例文

英語の「Nothing beats 〇〇」は「〇〇に勝るものはない」という定型句なので、部分を入れ替えれば誰でも作れます。日本語圏では音源として貼るか、字幕に一言添える使い方がほとんどです。

  • 「旅行初日にスマホ水没させた動画、BGMがJet2で笑った」
  • 「Nothing beats a Jet2 holiday、と言いながら映像がずっと地獄なの好き」
  • 「バイト先の締め作業の動画にこの音つけたら急に海外旅行みたいになった」
  • 「この曲ずっと流れてるのに一回も通しで聴いたことない」

音源だけが独り歩きしている状態なので、元のCMを最後まで見た人のほうが少数派です。だいたいの人は「Jet2」が会社の名前だということも後から知ります。

関連する言葉

不幸な映像と陽気な音楽を組み合わせる型としては棺桶ダンスが先輩にあたり、既存の映像へ別の音を乗せて意味をひっくり返すやり方はニヒリストペンギンと同じ発想です。音源が予告なく流れ出して「またこれか」となる感覚は、リックロールに近いものがあります。

キャラクターや広告といった企業側の素材が、当人の意図と関係なく若い層に拾われて別物になる流れは日本でも起きていて、進研ゼミのマスコットが再ブレイクしたコラショが分かりやすい例です。ドラマの一場面が切り出されて定型句になった「規律 規律 規律の遵守」も、素材の出どころが違うだけで構造は似ています。

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