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東大と相川七瀬が神社の「赤米」を解読、正体は温帯ジャポニカ

緑の葉の上で赤い穂先が一面に垂れている赤米の田んぼ
画像: 赤い穂先が一面に揺れる赤米の田んぼ(CC BY 2.0 / Flickr user gtknj, via Wikimedia Commons)。当サイトで縮小・切り抜きをしています

神社で神事のために守られてきた赤米は、「温帯ジャポニカ」というグループのお米だった。

東京大学と國學院大學の研究グループが、2026年9月28日に発表した。メンバーには歌手の相川七瀬さんが研究者として入っていて、論文の共同筆頭著者でもある。

神社で守られてきた赤米

赤米は、玄米の表面(果皮)が赤いお米のこと。今回調べたのは、その中でも神様に供えるために作られてきた「神饌(しんせん)赤米」だ。

対象になったのは3地域の4つの神社。

  • 長崎県対馬市豆酘(つつ)の多久頭魂(たくずだま)神社
  • 鹿児島県南種子町の宝満(ほうまん)神社
  • 岡山県総社市の本庄国司神社
  • 同じく総社市の新庄国司神社

3地域の協議会は、古来の赤米がいまも残っているのはこの三地域だけだとしている。どこも田植えから収穫までを神事として続けてきた土地だ。

1749系統と並べて分かったこと

研究グループは、長い配列を読む技術(ロングリード)と短い配列を大量に読む技術(ショートリード)を組み合わせて、赤米のゲノムを解読した。

それを世界のイネ1749系統のデータと並べて、どのグループに近いかを統計的に見た(主成分分析)。

東京大学農学部のプレスリリースの結論はこうだ。

以上の結果から、日本の神饌赤米は温帯ジャポニカであることが明らかになりました。

温帯ジャポニカは、いま日本でふつうに食べているコシヒカリやあきたこまちと同じグループになる。赤いのは見た目だけで、根っこは身近なお米の仲間ということになる。

国分寺の赤米だけ熱帯ジャポニカ

おもしろいのは比較用の赤米のほうだ。東京都国分寺市の在来種「武蔵国分寺種赤米」も一緒に読んだところ、こちらは熱帯ジャポニカに属していた。

熱帯ジャポニカは、東南アジアの島々などで作られてきた系統。同じ「赤米」と呼ばれていても、神社の赤米とは系統がまるで違ったわけだ。

赤い色を決める遺伝子のまわりにも差が出た。

同じ神饌赤米でも、南種子だけは色の遺伝子の周りが別の配列だった。種子島の赤米は、ほかの3つとは少し違う道をたどってきた可能性がある。

最初のおコメは赤かった説

もうひとつの見どころが「Rc遺伝子」の話だ。

Rc遺伝子は、お米の果皮を赤くする遺伝子。いま食べている白いお米の多くは、このRc遺伝子に14塩基対の欠け(欠失変異)があって、働かなくなっている。赤い色が出ないのはそのためだ。

研究グループはこのRc遺伝子の周りの配列を詳しく比べ、次のように書いている。

これらの結果は、栽培化直後のイネは赤米であり、その後、14bpの変異が導入され、広がっていったと考えられます。つまり、最初のおコメは赤米だったと考えられます。

言い切りではなく「考えられる」という強さの話だ。とはいえ、白いご飯のほうが後から広まった“変わり種”かもしれないと思うと、茶碗の見え方がちょっと変わる。

お米の呼び名そのものが気になった人は、「稲・米・ご飯を呼び分ける日本語」の記事もどうぞ。

相川七瀬さんと対馬の赤米

相川さんと赤米の縁は、2011年までさかのぼる。中日新聞によると、イベント出演で対馬市を訪れたとき、赤米の神田で真っ赤な稲穂を見たのが始まりだった。

地元の人に神事を続けている人を紹介してもらい、個人として関わるようになった。

2014年3月1日には、総社市・対馬市・南種子町の3市町が「赤米伝統文化交流協定」を結んでいる。赤米文化の3地域のサイトによると、きっかけは相川さんで、各市町の親善大使も務めている。

対馬で続く田植えの神事は、NBC長崎放送が伝えている。

45歳で大学へ、そして論文に

相川さんは2020年、45歳で國學院大學に入学した。2023年12月には大学院への合格をブログで報告し、「日本の神事や祭りを後世に残す意義」を研究テーマにしている。

同じ時期に一般社団法人Culture Plusも立ち上げた。今回の論文には、その法人の益子剛さんも名を連ねている。

2026年春に大学院の博士課程前期を修了し、いまは國學院大學大学院文学研究科の特別研究生。対馬で稲穂を見てから15年で、その赤米のゲノム論文を出すところまで来たことになる。

論文の中身

論文は植物学の学術誌『Plant and Cell Physiology』に載った。

  • タイトル: Unveiling The Origin of Sacred Red Rice Preserved in Japanese Shrines
  • 著者: 三村真生助教、相川七瀬さん(ここまで共同筆頭)、益子剛さん、井澤毅教授
  • DOI: 10.1093/pcp/pcag132

東大の三村助教と井澤教授は、お米の遺伝子を専門にする研究者。そこに、現場の神事を10年以上見てきた相川さんが加わった形だ。

発表当日は日経が「古代米『赤米』はジャポニカ種だった」と報じ、Yahoo!の急上昇ワードには「相川七瀬」が入った。

東大のゲノム解読の話なら、約400歳の深海ザメ、ニシオンデンザメのゲノムの記事も近い。お米の品種の話では、米粉パン用の新品種「ゆきふわり」もある。

赤米は通販やスーパーの雑穀コーナーでも手に入る。白米に少し混ぜて炊くと、ご飯がほんのり赤くなる。最初のおコメの色を想像しながら、一度試してみてほしい。

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