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背骨のある動物で世界一の長生きは“約400歳”の深海ザメ。150歳でようやく大人、東大がゲノム解読でその長寿の秘密に迫る

2026年7月14日 ・ トレンド「ニシオンデンザメ 寿命 400歳 脊椎動物 最長寿 ゲノム 東大」より

「地球上でいちばん長生きする“背骨のある動物”は何か?」と聞かれたら、ゾウやクジラ、あるいはゾウガメあたりを思い浮かべるかもしれません。ところが正解は、北の冷たい海の深くにひっそりとすむサメ。ニシオンデンザメ。その寿命、最長で約400歳という、けた外れの生きものです。

5メートルの個体が「392歳」

ニシオンデンザメは、北大西洋や北極海の冷たく暗い深海にすむ大型のサメ。ある研究では、体長約5.02メートルの個体の年齢を調べたところ、なんと 392歳 と推定されました。測定にはプラスマイナス120歳ほどの誤差があるとされ、ものによっては500歳を超えている可能性すらあるといいます。江戸時代の初めごろに生まれた個体が、いまも海を泳いでいるかもしれない。そう考えると、めまいがするようなスケールです。

長生きなだけに、大人になるのも気が長い話です。ニシオンデンザメが性成熟を迎える、つまり“子どもを残せる大人”になるのは メスで150歳を超えてからとされます。人間ならとっくに何世代も入れ替わる年月を、ようやく思春期の入り口として過ごす。生き物の時間の流れは、種によってここまで違うのです。

タネ明かし:「冷たい深海で、ゆっくり生きる」

ではなぜ、そんなに長く生きられるのか。大きな鍵とされるのが、「低い水温」と「ゆっくりした代謝」です。ニシオンデンザメがすむのは、水温がほぼ氷点近い深海。体温が周囲と同じになる魚にとって、冷たい環境は体の化学反応がゆっくり進むことを意味します。心臓の鼓動も、成長も、老化もすべてがスローモーションで進むイメージです。

実際、ニシオンデンザメの成長は 1年でわずか1センチほどともいわれるほど。急がず、慌てず、ただ静かに歳月を重ねる。この“省エネで長い一生”こそが、脊椎動物最長寿という記録を支えている、と考えられています。

その“スローぶり”は、近縁のオンデンザメ(ニシオンデンザメと同じ仲間の深海ザメ)でも確かめられています。JAMSTEC(海洋研究開発機構)が世界で初めて遊泳速度を計測したこちらの映像では、彼らが「世界一泳ぎの遅い魚」だったことが紹介されています。深海をゆっくり漂うように進む姿から、その省エネな暮らしぶりが伝わってきます。

2026年、東大がゲノムを世界初解読

そして2026年、この謎多きサメの研究が大きく前進しました。東京大学大学院農学生命科学研究科の研究グループが、脊椎動物で最も長寿とされるニシオンデンザメの、ほぼ全ての遺伝情報(ゲノム)を世界で初めて高精度に解読することに成功したのです。研究成果は2026年5月20日、科学雑誌『PNAS(米科学アカデミー紀要)』に掲載されました。

ゲノムという“設計図”を読み解くことで、なぜ彼らが長い年月を病気知らずで生きられるのか。たとえばDNAの傷を修復する力や、がんになりにくさといった長寿の秘密に迫る、大きな手がかりが得られると期待されています(ナショナル ジオグラフィックの解説も詳しいです)。深海のご長寿ザメの体には、人類が知りたい“歳のとり方”のヒントが眠っているのかもしれません。

ゆっくりすぎる一生の、もろさ

もっとも、この「ゆっくり」は、いいことばかりではありません。大人になるまで150年、繁殖のペースも非常に遅いため、一度数を減らすと、回復するのに気の遠くなる時間がかかるという弱さと表裏一体です。だからこそ、深海の環境や彼らの生態を守ることの大切さも、あわせて語られます。

400年を生きる魚が、いまも静かに深海を漂っている。その事実だけでも十分に“へぇ”ですが、その長寿のしくみを人の手で読み解こうとしている。生きものの不思議と科学のロマンが同時に詰まった、深海からのニュースでした。

※寿命・年齢・研究内容は各研究機関および報道の発表にもとづく情報で、推定値には幅があります。